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ep2.私にこんな特殊能力が!?feat.第一村人

こんなに辛い思いをしてるのだ、




いい事の一つや二つあっても良いじゃないか。

それこそ水場だってその辺から降ってきたり。


さっきだって霧が晴れたんだからそのくらい───

そんな事を思うと────




ビシャーン!




突然頭に向かってバケツをひっくり返したような水が降ってきた。

雨じゃなくて水である。



しかし、私は水を被ったことなんかよりもその直前に見た光景に驚愕していた。

私は未だ駄々こねポーズを続けていたので、水の根源をハッキリと目にしたのである。




空中に白いモヤが浮かびあがり、それが一箇所に集まって水の球を作る瞬間を見たのだ。



いくら記憶喪失でも普通こんな現象が存在しないことくらいは分かる。もしかしたらあるかも知れないが。世界びっくり映像番組はあまり見てないのだ。




ふと横を見ると先程見たワラビもどきが萎れていた。

それどころか辺りの植物はみんなカピカピになっていた。



もしかして白いモヤの根源って────






「───────!!!!!!?」



声が聞こえた、自分以外の人の声が。

なんと言ったのかは分からなかったが、確実に誰か居る。




その事実が嬉しくて、その直前に見た光景なんて彼方に消え、私はすぐさま声の出処目掛けて駆けた。




人が居た!居た!嬉しい!助けて!なんとかなる!




パリパリパリッ!



薮をかき分け、折れた枝を踏むのも気にせず走った。

例に漏れず乾燥しきった薮は、面白いくらい簡単に突き抜けることが出来た。





この先に!誰かいる!



ガサッ!




薮を抜けた。


そうして声の出処らしき物を目にした。





そこにあったのは、木の板を身につけた、死体であった。





反射的に悲鳴をあげる。

死体を見たせいなのだろうか。

それともその死体が、乾ききっていたからなのだろうか。




ミイラともまた違う、老人のような肌にはまだ肌の色と油分が残っており、その事実が否応なしに先程までの思考と結びついてしまった。




さっきの水球だ、そうなんだ、周りの水分を集めたんだ。

ありとあらゆる水分を。





冗談じゃない。あれは私がやったんじゃない。そもそも私にそんな力なんて。




それでも、声が聞こえる直前の光景がフラッシュバックし、目の前の死体と、結びついてしまう。




死体に向かって私は弁明する。




ごめんなさい、私だってこんなつもりじゃ!いや!私がやったんじゃ!でも私が望んで、それでも知らずに!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!





しかし実際に口から発せられる言葉は、声は、何を言ってるか理解出来ない。





なんで!ごめんなさい!謝ってる!こんな!こんなこと言ってない!なんで言えないんだ!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!そもそもなんでこんなところに!ごめんなさい!ごめんなさい!





何を言ってるか理解出来なくても、最後の方は言葉の体を生していなかった事が分かる。



その後も何度か謝罪の言葉を呟きながら、頭が冷えて行くまでそこに蹲っていた。




これが私の、この世界での第一村人とのコンタクトである。


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