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第91歩兵師団司令部、異世界にて指揮を執る。  作者: フニャンスキー


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88/90

88 戦闘団編成

ルアブロン 中央街区

旧ザロモン子爵家屋敷

第191歩兵大隊長 アイクマイアー少佐


 師団司令部から会議のためにルアブロンへ向かう一団の一員として、将軍の丘を出発した。丘から街道までの道は快適とは言えないが、街道に出ると驚くほど平坦で快適だった。やがて見えてきた中世の城塞都市のような城壁に囲まれた街、その立派な造りの城門から街中に入った。

(やはり領都だけあってサランタンよりも人通りが多いなぁ。あれは、何かの店みたいだが・・・)

 作戦「雷」の時はルアブロン市内には入らなかったので、今回が初めてのルアブロン入城だった。

 道行く領民達の視線を浴びながら車列は市内の通りを緩いスピードで進み、城館の近くに建つ屋敷に入った。

 屋敷の門には警備と思われる現地の兵士が立哨していて、我々の車列が通過する際に見事な敬礼を送ってきた。

(あれが現地で雇用した傭兵なのか、思っていたより統制が取れていそうだな)

 傭兵と言えば、無頼漢というイメージだったが、彼等からは微塵も感じられなかった。

(あのシュラーガー中佐が独断で雇用した事を考えれば当然か、よっぽど気に入ったんだろう)

 中型兵員車から降りて屋敷に入る時、玄関扉の両側で敬礼している兵士に答礼を返しつつ思った。同じ車両に乗ってきたコールローザー警察大尉とフィルカザーム大尉達と目が合うと、同じ事を考えているのが直ぐに分かった。

 屋敷の中に入ると、シュラーガー中佐の部下といかにも執事といった風貌の男に出迎えられ、ブリンクマン大佐殿とシュラーガー中佐殿が待っている会議室へと案内された。

「久しぶりだね、アイクマイアー少佐」

 会議室に入るなりシュラーガー中佐殿が声を掛けてきた。

「全くです、中佐殿」

 そう答えた後、ブリンクマン大佐殿と敬礼を交わして、師団司令部から預かってきた鞄を渡した。

「これを預かって参りました、大佐殿」

「ありがとうございます、アイクマイアー少佐。どうぞ掛けてください」

 そう言われてシュラーガー中佐殿の隣に腰掛けた。その並びにコールローザー警察大尉とフィルカザーム大尉達が腰掛けると、ブリンクマン大佐殿が立ち上がった。

「早速ですが、辺境伯爵家側が来る前に最新の情勢について説明します。メモは必要ありません」

 コールローザー警察大尉がノートを開こうとしたが、その言葉で動きを止めた。

「それではまず、辺境伯爵家の現状についてです・・・・・・」

 ブリンクマン大佐殿は低い声で現在の情勢について話し始めた。それによると、雷作戦のよって辺境伯爵家は主権を回復し、反乱を起こした家臣である貴族の領地と軍を無血で支配下に納めることにも成功した。他の家臣達の中には未だに旗幟を明らかにしていない者もいるが、今のところ新たな反乱の予兆は確認されていない。しかし、辺境伯爵家の東征軍が孤立している状況は変わりなく、これを救出して軍主力を立て直さないと辺境伯爵家の統治は安定せず、今後の政治バランスに悪影響を及ぼす可能性が高い、と言う事だった。

(悪影響、と言う事は荒れると言う事か。中世の時代とは言っても群雄割拠と言う程ではないみたいだが、生き抜くために必要なのは力、ここでも戦争か)

 俺は心の中で溜息をついた。軍人として生きてきたが、別に戦争が好きなわけじゃない。

(どうせ騎士道もへったくれもない、ドロドロした世界なんだろうな)

 お伽話を信じる歳は、とっくの昔に通過していた。

「続いて、この情勢を踏まえた我が軍の行動予定です・・・・・・」

 ブリンクマン大佐殿の説明が続いていた。その内容は、孤立している辺境伯爵家の東征軍の救出作戦と、割譲・・ではなく統治を委任されたルアブロンの東側を正常化する作戦を同時に行うと言う事だった。ルアブロンの東側、東街区は職人と工房が集まっている地区だが、貧民街があって治安が悪いらしい。

(領都のすぐ隣で実力を行使して、俺達の力を見せつける訳か。治安回復という大義名分があるから絶好の機会だな)

 ルアブロンは大都市だから、居酒屋や色々と遊べる店もあるだろう。いずれ遊びに来た時に安心して遊べるならその方がいい。ただ、貧民と呼ばれる人たちが、どうなるのかは気に掛かる。

(この世界に福祉があるとは思えないが、できるのなら救済の手は差し伸べて欲しい)

 ブリンクマン大佐殿殿の説明は、事務的に淡々と進んでいく。

(大佐殿には頑張ってもらって、平穏な時間を過ごせるようにして欲しい。まぁ、その為には俺達が働かないといけなくなる訳だが・・・)

「・・・以上です。この後、辺境伯爵家側の代表を交えて作戦の具体的な内容について協議と調整を行います。なお、今回の作戦は私が総司令官として、全体の指揮と辺境伯爵家との調整を行います。そして救出作戦はシュラーガー中佐殿が指揮を執り、正常化作戦はコールローザー警察大尉が指揮を執ることとします」

 ブリンクマン大佐殿の説明が終わった

(今回は留守番か・・・、思ったとおりだがシュラーガー中佐殿はどういった・・・)

「アイクマイアー少佐、早速だが救出作戦について話をしたい」

「はい、中佐殿」(もう始まった)


 シュラーガー中佐殿は俺にメモを差し出しながら話し始めた。内容は戦闘団編成を通常にしてはどうか、と言う事だった。戦闘団の編成は


 戦闘団「1」

  戦闘団本部(第100装甲大隊本部)

   偵察小隊(第100装甲大隊第3中隊)

   工兵小隊(第191工兵大隊)

   軽高射砲小隊(第191高射砲大隊)

  第1中隊(第100装甲大隊第1中隊)

  第2中隊(第191歩兵大隊第2中隊)

  第3中隊(第191砲兵大隊第5中隊)*自走砲


 戦闘団「2」

  戦闘団本部(第191歩兵大隊本部)

   偵察小隊(第100装甲大隊第3中隊)

   工兵小隊(第191工兵大隊)

   軽高射砲小隊(第191高射砲大隊)

  第1中隊(第100装甲大隊第2中隊)

  第2中隊(第191歩兵大隊第1中隊)

  第3中隊(第191砲兵大隊第4中隊)*自動車化


 となっていた。

「これを通常の編成にして、必要に応じて工兵と砲兵を増強すれば良いと考えているのだが、君の意見を聞きたい」

 俺は師団の部隊を思い出しながら、メモに目を通すと

「この偵察小隊というのは、中佐殿の大隊の第3中隊を改編したのですか?」

「うむ、以前話した小口径高火力と、軽装甲機動力重視の戦闘車両の開発に時間が掛かりそうなので、代替として軽戦車と装甲車の編成に切り替えたんだ。本職の偵察部隊には及ばないが、適任が他にいないので偵察小隊として運用する。本当は偵察中隊から戦闘団に1個小隊を配属したいのだが、偵察中隊を分散するのは避けた方が良さそうだと思ったのでね」

「そうですね・・・」

(偵察中隊の正体は降下猟兵、しかもフリーデンタール連隊だ。前線で気軽に使っていい兵隊ではないし、まとめておきたいのも分かる。しかしそれだけに偵察部隊としては有能だろう、非常に惜しいが仕方ない)

 俺は自分の大隊の第3中隊を思い浮かべた。第3中隊は解散した師団司令部護衛中隊の一部で編成された重装備中隊で、第7小隊(重機関銃)、第8小隊(歩兵砲)、第9小隊(対戦車砲)と成っていた。

(この戦闘団編成が通常になるなら、戦車と自走砲があるから歩兵砲と対戦車砲の存在が微妙になるんだよなぁ・・・)

 思うところはあるが、深く考えるまでもなく俺は決心した。

「うちの第3中隊も改編しましょう。1個小隊につき、重機関銃2丁、歩兵砲1門、対戦車砲1門ずつの3個小隊にします。正直なところ、歩兵砲と対戦車砲は微妙だと思いますが」

「そうしてくれると有り難い。私も歩兵砲ではなく迫撃砲が良いと思っている。対戦車砲はトーチカ等の固定目標、ここなら城壁や塔の弓狭間に使えるのであった方が良いと思うが、出番がどれだけあるかは分からん」

「なるほど・・・。私としてはその案に異存はありません」

「ありがとう。では、重装備小隊を戦闘団本部に配属だな。では、残った部隊は予備として師団司令部で預かってもらうか・・・」

 シュラーガー中佐殿はメモの手直しを始めた。


 戦闘団「1」

  戦闘団本部(第100装甲大隊本部)

   偵察小隊(第100装甲大隊第3中隊第8小隊)

   工兵小隊(第191工兵大隊)

   軽高射砲小隊(第191高射砲大隊)

   重装備小隊(第191歩兵大隊第8小隊)

  第1中隊(第100装甲大隊第1中隊)

  第2中隊(第191歩兵大隊第2中隊)

  第3中隊(第191砲兵大隊第5中隊)*自走砲


 戦闘団「2」

  戦闘団本部(第191歩兵大隊本部)

   偵察小隊(第100装甲大隊第3中隊第9小隊)

   工兵小隊(第191工兵大隊)

   軽高射砲小隊(第191高射砲大隊)

   重装備小隊(第191歩兵大隊第9小隊)

  第1中隊(第100装甲大隊第2中隊)

  第2中隊(第191歩兵大隊第1中隊)

  第3中隊(第191砲兵大隊第4中隊)*自動車化


 予備部隊「3」

 第191偵察中隊

 第100装甲大隊第3中隊(中隊本部、第7小隊)

 第191歩兵大隊第3中隊(中隊本部、第7小隊)


 シュラーガー中佐殿は書き直したメモを俺に向かって広げた。

「偵察中隊に私と君の第3中隊の残余を合せれば、機動力と打撃力はありそうだ。それに軽歩兵中隊と砲兵大隊から1個中隊を加えれば戦力としては充分だな」

「はい、今のところはこれが最善かと思います」

「よし、ではこれでいこう。ブリンクマン大佐殿に報告して、師団長閣下の裁決に諮ることにする」

「了解致しました、中佐殿」

 そこへ辺境伯爵家側の要人達が入ってきたので、シュラーガー中佐殿との打ち合わせは終わり、会議が始まることになった。


 辺境伯爵家から連絡将校として派遣されているロイストンという武官が案内して入ってきたのは、若くて上品な顔立ちの文官らしき男性と、シュラーガー中佐殿に非常によく似たいかにも武人といった風貌の男性、もう1人は初老の男性の3人だった。

 ブリンクマン大佐殿が文官の男性と挨拶を交わした後、お互いに自己紹介を始めた。文官らしき男性は、辺境伯爵家の武官でメーティスと名乗った。続いて武人にしか見えない男性は、ルアブロンの衛士隊長を務めるアンゲリアスと名乗った。そして最後の初老の男性は、辺境伯爵家の政務顧問を務めるウェルフネウスと名乗った。

 続いて我々の自己紹介が終わると会議が始まった。

 まず、ブリンクマン大佐殿殿がお互いに向かい合っている長机の上に地図を広げた。辺境伯爵家側はすぐに地図に見入っていて、大変驚いていた。

「それでは、救出作戦についてご説明します」

 ブリンクマン大佐殿に代わって立ち上がった、シュラーガー中佐殿が口を開いた。

 救出作戦は二段階から成っていて、第一段階は先遣隊を東端と呼ばれる辺境伯爵家の領地の端まで進出させる。先遣隊の任務は東端までの補給路の確認と、途中にある街と東端そのものを掌握する事。

 第二段階として、後続する救出部隊主力と東端で合流し、東端を拠点として辺境伯爵家の東征軍の所在位置を確認のうえ、残存兵力を収容する為に必要な輸送手段と経路を確保して収容を実施する、と言う段取りだった。

 この過程において、デイルト川から東端までの地域が我が軍の統治下に入った事を領民に広報する事。在地領主がい

 る場合は指揮下に入るか、転封するかを決めさせる事。途中にある街と東端を掌握する際に、無用な諍いが起きないようにする事。以上の事項について辺境伯爵家の協力を仰ぎたい。ここまでで、シュラーガー中佐殿は一旦着席した。

 今度は辺境伯爵家のメーティス殿が持参した鞄から資料の束を取り出して話し始めた。メーティス殿によると、東側領地の地図や徴税等の全て資料を貸し出すので、活用して貰いたいと言う事。在地領主が転封を望んだ場合は、代替え領地を用意できる事。辺境伯爵家当主から当主権の委任を授けた、特命全権公使としての家臣を先遣隊に同行させるので、行政及び軍事に係わる任免は一任する事。が伝えられた。


(こちらの要求を丸呑みだな)

 辺境伯爵家の返答を聞いてそう思った。

(軍主力の救出を一刻も早く、と言う事か。自分達の現状を良く理解している訳だ)

 そう考えていると、一旦言葉を切ったメーティス殿が再び口を開いた。

「ホーフェンベルグ将軍閣下に統治委託する東方領域内に存在する、辺境伯爵家の家臣及び在地領主についてです・・・」

 メーティス殿によると、我が軍が統治する領域には辺境伯爵家の家臣である

 3人の騎士が領地を持っていて、この他に小規模な鉱山を抱えてケテリという街があり、辺境伯爵家が派遣した代官が治めていて守備隊もいる。東端には城壁が築かれていて守備隊が駐屯しており、この守備隊長が近くにあるラトナという街の代官を兼務して治めている、との事だった。

「領域内の騎士爵家は全て、忠誠を誓う旨の返書を寄越しておりますので、問題は無いと思われます。ですが・・・」

 そこで言葉が途切れた

「・・・・実は、ケテリと東端に反乱鎮圧と統治委託を知らせる使者を出したのですが、未だに戻っていません」

 その言葉にブリンクマン大佐殿以下の将校達が一斉に注目した。


リアクションと誤字報告ありがとうございました!

一応、表記揺れで確認してから投稿しているのですが、沢山あって驚きました・・。

今後もお付き合いいただければ嬉しいです、よろしくお願いします。

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