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第91歩兵師団司令部、異世界にて指揮を執る。  作者: フニャンスキー


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44 野戦昇任

「将軍の丘」

第91歩兵師団司令部 別室1

補給処長 ヨハン・テッタウ少佐


「部隊が装備する小銃はGew33で統一できるのか、テッタウ少佐?」

「ええと、それは無理です。すでにGew26と33が混在しています。義勇兵や海軍はそもそも小銃を装備していませんでしたので、配備する部隊を絞らないと足りません。それに故障や消耗した時の事を考えると、多めに予備がないと回らないことになります」

「じゃあ、後方支援部隊は共和国軍のM30にするか」

「いっそ違う銃にしようかと思ってるんですが」

「何かいいのがあるのか?」

「ちょっと古いんですが、共和国軍のM98という騎兵銃の在庫がありまして。騎兵銃だけあって全長が短いので銃が軽くて取り回しがいいのと、弾薬も口径が6.5ミリで小さくて軽いので、後方で護身用として使うにはちょうどいいと思います」

「なるほど。それで、どの部隊を変える?」

「基本的に拠点から外に出ない部隊に交付しようかと。とりあえず整備工場の技術部隊と衛生大隊は決定でいいと思っています」

「だな。他には?」

「ヴァグナー少佐の管理大隊とライネッケ少佐の補給大隊、あとは通信大隊と高射砲大隊のどれか、ですね」

「ふむ。補給大隊は前線まで出向くことになるし、高射砲と通信も前線に準ずる位置まで出る可能性はあるだろう。ウチは外に出ることはまず無いから整備工場と衛生、管理大隊をそのM98に変えよう」

「ありがとうございます、ヴァグナー少佐。そのうえで高射砲と補給、通信をM30に改変すれば、野戦警察と工兵のGew26を33に交換できるのと、東方義勇兵と南方義勇兵にも33を支給できるようになります」

「なるほど、後方部隊を二種類に分けるのか」

「工兵と野戦警察は予備兵力ですから、その方が良いでしょう」

 ライネッケ少佐の言葉にヴァグナー少佐が顔を見合わせて頷いた。

「はい。と言っても野戦警察は年を食ってる連中が多いので、軽い方が喜ぶと思ったのですが」

 俺が笑いながら言うと、ヴァグナー少佐も笑った。

「そうか、そう言う視点もあるな」

「情勢が落ち着いて、純粋な治安任務だけになったら考えましょう」

 ライネッケ少佐も笑いながら付け加えた。

「工兵と野戦警察が使っていたGew26は、予備兵器として保管するんだなよな」

 ヴァグナー少佐が表情を改めて聞いてきた。

「ええ、拠点に駐留する部隊でなら使ってもいいかと思っていますが」

「ここの整備工場で33に改造できないか?」

「あ、なるほど、話してみます」

 ヴァグナー少佐が頷いた。

「さて、今度は支援火器だな・・。あ、そうだ、海軍の地上部隊はどうするんだ、補給処の警備隊をやるんだろ?」

「ああ、はい、えーとM30を持たせようと思っています」

「M98ではなくて?」

 ライネッケ少佐が不思議そうに言うので、少し声を落として答えた。

「警備の主力ですから、整備工場や衛生と同じ武装で緊張感が無いのは困りますし、・・それと政治的配慮も必要かと」

「ああ、なるほど。その方がいいな」

「頼りにしてる、と言うのが伝わったほうがいいね」

「はい」

「じゃあ、支援火器の話、の前に少し休憩しないか」

「そうですな、そうしましょう」

 再編成に伴う装備の改変作業はまだまだ続きそうだった。

(ここできっちりやっておかないと、後に響くからなぁ。こりゃ今日中には終わらないな。しばらくは通いか・・)



「将軍の丘」

第91歩兵師団司令部 別室2

第100装甲大隊長 バルトレン・シュラーガー少佐


「降下猟兵を偵察部隊にするとはな」

「現状では最適な選択かと思います、シュラーガー少佐殿」

「確かにそうだが、君から偵察中隊の編成について意見はあるかね、エルドマン大尉?」

「中隊は機械化されると思っておりますのが、それにあたって装備、特に車両はどのくらい受領できるのでしょうか?」

「それは心配しなくていい、君が望むなら100パーセント機械化される。オートバイ、小型兵員車、中型兵員車、トラック、装甲車、軽戦車もある。装甲車両なら私の大隊からも提供できるだろう。後は、確かハーフトラックもあったが、速度が出ないので使えるかどうかだな。改造して使えるかどうかやってみる価値はあるかもしれない」

 エルドマン大尉は答えを見失ったように少し沈黙した後

「失礼しました、装備の件については承知しました。部隊の一部は乗馬にした方がいいかと思っております」

「ああ、そうだな。馬の方が目立たずに行動できる場合もあるだろう。となると、騎兵中隊から少し兵員を分けて貰うか、どうかねアイクマイアー大尉」

「問題ありません、少佐殿」

「中隊にも馬に乗れる者がおりますので、足りない分を補充して頂ければと思います」

「そうか、単位は一個小隊でいいな?」

「はい、少佐殿」

「それなら問題ないだろう」

 私がアイクマイアー大尉に視線を送ると大尉は頷いた。

「あとは、オートバイと小型兵員車をメインにして、無線を搭載した車両と火力支援ができる車両があれば編成を完結できます」

「中隊本部と三個小隊、それと一個乗馬小隊か」

「少佐殿、教育部隊として兵員を差し出すように言われておりまして、二個小隊と乗馬小隊にする予定でおります」

「ああ、そうか。降下猟兵が歩兵訓練を担当するのか。即効性がある教育になりそうだ」

「恐縮です。その関係で兵員の入れ替えを行う予定でおります」

 恐縮です、と答えるエルドマン大尉の顔は自信に満ちあふれていた。

(そういえば、フリーデンタールは降下猟兵学校から発展したと聞いたな)

 “他者を鍛え、自分もまた他者に鍛えられる”

 降下猟兵の志願兵を募るポスターに書かれていた一文を思い出した。

「わかった、それは君に任せる。では、二個小隊はオートバイや何種類かの車両を混在させて、偵察任務を遂行できる偵察小隊にするのだな?」

「はい、それぞれが独立して運用できるようにします」

「では、オートバイと小型兵員車、無線車と火力支援車の混成か」

「はい、少佐殿」

 少し考えてエルドマン大尉に向き直る。

「実は私の大隊で部隊の改変について独自で研究していたんだ。ここでは戦車のような戦車砲と厚い装甲よりも、機動力と大火力、口径ではなく投射量が多い方が有効ではないかと思ってね」

 エルドマン大尉が黙ったまま頷く。

「まだ完成していないが、そのレポートを渡すので火力支援車の選定に使ってくれ。もし希望通りのものが無ければ、その仕様を分りやすく文章にしておいて欲しい。後で私の部下のクレーライン中尉をこちら呼ぶ、なにか質問があれば中尉と相談してくれ」

「承知致しました、少佐殿」カツン!

 私は直立不動を執るエルドマン大尉を見て満足すると、アイクマイアー大尉に向き直った。

「さて、君が指揮を執る歩兵大隊についてだが・・」



「将軍の丘」

第91歩兵師団司令部 別室3

第91歩兵師団長 カール・オストフューア・フォン・ホーフェンベルグ中将


「だいぶ慌ただしくなったな、ブリンクマン中佐」

「はい、師団長閣下。しかし、部隊の再編成は絶対必要です」

「私も同意見だ。君の再編成計画は的確だったよ」

「ありがとうございます、閣下」

 この部屋には私とブリンクマン中佐、通信大隊長リュック少佐、衛生大隊長ホフマン軍医少佐がいた。

「管理大隊と補給大隊、補給処を兵站本部の下にまとめるのは良い考えだ。他の戦闘部隊も計画通り進めるのだな」

「はい、再編成が完結した後は、各小隊単位での訓練を開始して、中隊、大隊単位まで実施できればと考えています」

「うむ。その後は部隊の練度を見ながら中隊単位で諸兵連合を組んで、大隊戦闘団として運用する、だったな」

「はい、閣下。しかし大隊でも大きいかもしれません」

 ブリンクマン中佐が若干眉間に皺を寄せるのをみて、思わず口元が緩んでしまった。

「ブリンクマン中佐、こればかりはやってみるしかないよ。やってみて、それから調整しよう」

「はい、閣下」

 ブリンクマン中佐が苦笑いしながら答えた。

「分隊規模から火力を増強しているのだな」

「はい、分隊に軽機関銃を1丁入れる計画です」

「それなら君の言うとおり、大隊ではなく中隊でもいいかもしれない。しかし銃弾でなぎ倒すのではなく、数で威圧する事が必要な場面があるかもしれない。以前とは違う兵力の使い方も気にとめておいてくれ」

「はっ、師団長閣下」カツン!


(位攻めと言ったか、戦力の優位を見せつけて撤退なり講和なりに持ち込むやり方だったな)

 実家で若い頃読んだ歴史の本の内容を思い出していた。

 以前は、言ってしまえば力で敵を殲滅なり降伏なり撤退なりさせれば目的は達せられていたが、ここではそればかりではない。

 今は敵でもいずれ味方にしたい敵や、敵だが利用するべき敵もいる。周囲が敵だけにならないように、政治的なバランスも加味しながら力を使わねばならない情勢なのだ。

(指揮だけでなく、経営もしなくてはいかんからな。そしてそれを彼にも覚えてもらわんといかん。苦労をかけるが仕方あるまい)

 生真面目そうなブリンクマン中佐を見て、黙ったまま頷くしかなかった。


 私は視線をブリンクマン中佐からリュック少佐とホフマン軍医少佐へと向けた。

 二人の部隊は今回の再編成計画からは外れていた。

「君達は変わらず師団司令部直轄でいて貰う」

「はい、師団長閣下」カツン!!

 二人が同時に答えた。

「ただ、危急の場合は戦闘任務もあり得る事は指揮下部隊に徹底して、訓練は怠りなく実施して貰いたい、それと補給処にある資機材で希望があれば遠慮無く申告してくれ給え」

「はい、閣下。ひとつお願いがあります」

 再び二人同時に答えた後、リュック少佐が半歩前に出た。

「何かね、リュック少佐」

「危急の場合も含めて、必要があれば最低限の要員を除いた兵員で警戒部隊を大隊内で編成しておこうかと思うのですが」

「それは・・。どうかねブリンクマン中佐?」

「いいと思います。状況が切迫したら召集して運用する、という事でよろしいでしょうか」

「はい、中佐殿。警戒部隊は集中的に訓練を施して頂いて、大隊内で訓練指導に当たらせたいと言う事と、師団司令部護衛部隊の予備兵力として、それと兵の士気を維持する目的もあります」

「師団長閣下、実施すべきだと考えます」

「では、リュック少佐、君の意見具申を受け入れよう。規模はどうする、中佐?」

「歩兵大隊と同一編成の1個小隊でよろしいかと」

「ありがとうございます、師団長閣下」カツン!

 笑顔のリュック少佐を見てホフマン軍医少佐が姿勢を正した。

「師団長閣下、小官の大隊でも編成したいと思いますが」

 私はその意見を受け入れなかった。

「ホフマン少佐、危急の時は君の部隊が忙しくなる時だよ、本業を忘れないでくれ給えよ」

 私が笑いながら言うと、少佐はバツが悪そうに苦笑しながら 了解しました と答えた。

「ただ、自衛の為の射撃訓練は必要になりますので、その訓練を通信大隊と合同で行う事にすれば、警戒部隊の意義も広がると思います」

 ブリンクマン中佐が付け加えると、二人は頷いて了解した。


 話が一段落したところで、私はブリンクマン中佐に向き直った。

「補給関係は兵站本部、戦闘部隊は戦闘団、それ以外は師団司令部、三つに分かれた訳だが」

 私がそこで話を区切ると、ブリンクマン中佐が小さく頷いた。

「それぞれの中で階級が被っているだろう。少佐と大尉だらけでやりずらいだろう」

「は、はい、それはそのとおりであります」

 ブリンクマン中佐が少し怯んだ口調で答えた。

(まぁ、本来ならここで決められる話ではないが、そうも言っておれんしな。決心したことだ、やるしかない)

「ブリンクマン中佐、君は大佐に昇任して主任参謀と師団長代理を兼務で引き受けて貰う」

 私がそう言うと、ブリンクマン中佐は大変驚いていた。

「よろしいのですか、師団長閣下」

「私は決心したのでね、必要な措置を私自身の責任で実施していくだけだよ。そう言うわけで、残念だが君に拒否権はない。野戦昇任だ、ブリンクマン大佐」

「承知いたしました! 謹んで拝命致します、師団長閣下!」カツン!

 とびきり元気よく答えてくれたブリンクマン大佐を見て、私は安堵した。

「では早速、師団長代理として一仕事して貰おうか。ここに書いてあるとおりに、該当する将校に下命して貰いたいのだ」

 私はそう言いながら、胸ポケットに用意しておいた新設された部署と部隊の指揮官に関する命令を書いたメモを大佐に渡した。


 ・師団管理大隊長ヴァグナー少佐を中佐に昇任せしめ、兼務兵站本部長

  を命ずる。

 ・第100装甲大隊長シュラーガー少佐を中佐に昇任せしめ、兼務戦闘

  団長を命ずる。

 ・騎兵中隊長アイクマイアー大尉を少佐に昇任せしめ、歩兵大隊長を命

  ずる。

 ・工兵中隊長マールマン中尉を大尉に昇任せしめ、工兵大隊長を命ずる。

 ・建設中隊長ツドラレク義勇少尉を義勇中尉に昇任せしめ、師団司令部

  護衛中隊長を命ずる。


「すべて野戦昇任だが、後ほど正式な命令書を発行する。ただし、階級及び指揮権は本日只今を持ってこれを有するものとする。指揮下部隊内の人事については指揮官に一任する。・・・これで再編成は捗ると思うが、どうかね大佐?」

 私がそう言うと、ブリンクマン大佐は踵を打ち付けて同意した。


時系列ずれちゃった、思ってたより直すの大変っぽい・・・。

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