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第91歩兵師団司令部、異世界にて指揮を執る。  作者: フニャンスキー


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18/83

18 襲撃

18


補給処「蜂の巣箱」

補給処長 テッタウ少佐


 陽がだいぶ傾いて、樹林に隠れはじめた。

 作業や訓練を終えた兵達が食堂に向かって移動し始め、補給処内の雰囲気が一番のんびりする時間になっていた。


「本日の訓練は終了しました」

 俺は事務所で降下猟兵中隊第3小隊長のゼーレン少尉と向かい合っていた。

「ご苦労様。仕上がりはどうかな?」

「東方義勇兵の練度については問題ありません、銃の扱いに慣れている者が多いようです」

「彼等は生業でなくても猟をやっているからな」

「はい。しかし、動揺している気配が見えます」

「そうか・・・。無理も無いが」

「はい。ここにいるのが最良であることは理解していますが、帝国も共和国もない場所で戦う意味が無い、若しくは分からないというところだと思います」

 ゼーレン少尉があきらめ顔で言う。

「今のところは自衛の為だがな」

「はい、それも理解しているので訓練で手を抜く者や、反抗的な態度を取る者はおりません」

 俺は背もたれに背中を預けて少尉を見上げた。

「なるべく早く追加の現状と、今後の方針を示して貰えるように師団司令部に具申するよ」

「はい。この状況ではそれが一番だと思います。へたな誤魔化しは信頼を失います」

「わかった。南方義勇兵はどうだ?」

「彼等も兵士としては優れていますが、意思の疎通が手間です。あと、小銃に触ったことが無い者が多いようです」

「そうなんだよなぁ。彼等も狩猟はやるが弓なんだよなぁ」

 彼等南方義勇兵をここで受け入れてから今まで、少しでも彼等の事を理解しようと世間話などしながら交流を重ねていたが、その結果分かったことは、共和国は南方人を単純な労働力としてしか認識していないということだった。

 彼等は小隊単位で作業する事だけを訓練されていた。

(まぁ、人足として考えれば小隊に1人か2人共和国語が分かる奴がいれば、後の連中は言われたとおりに動くだけだから、手間をかけずに大量に動員できるから、上手いやり方ではある)

「私としては、弓でいいかと思います。音も無く忍び寄って敵を倒すというのは魅力的な能力です」

 ゼーレン少尉は笑みを浮かべていた。

「魅力的ねぇ・・」

(嬉しそうだなぁ。こっちは特別優秀で無くても普通の歩兵がいればそれでいいんだが)

「全員を武装させるのではく、志願兵を募って訓練を施した方が良いのではありませんか?」

「ここの防衛兵力にしたいんだ。歩兵が足りないからな」

「ここは広すぎます。要塞化するよりも周囲を定期的に巡回して、近づけなくするほうが効果的だと思います」

「そうか、治安維持的なやり方のほうがいいか」

「共和国軍はいないものとして、ですが」

 その時、外が騒がしいことに気がついた。

「ん?」

 俺が席から立ち上がると、ドアを突き破る勢いで兵が駆け込んできた。

「少佐殿、敵襲であります! 西側で銃撃を受け負傷者1名、警備隊が応戦中であります!」

「なんだと!」

 俺は思わず叫んでしまった。確かに開け放たれたドアの外から銃声が聞こえている。

「少佐殿、見てきます!」

ゼーレン少尉が飛び出していった。

「全処戦闘配置! 照明を消せ、発電機を止めろ、的になるぞ。師団司令部に報告しろ」

 俺は事務室内にいる者に命じると、腰のホルスターから拳銃を抜いて外へ出た。

 遅まきながら手回しのサイレンが鳴らされて非常事態を告げていて、下士官が怒鳴り、兵達が配置に就くため走り回っていた。

(装甲大隊は・・)

 そう思った時、エンジン音が響き始めた。

(動いた、これで下がるか)

複数のエンジン音が西に向かって離れていく。

「西側を見てくる、ゼップ少尉はここを頼む」

 俺は例の古参少尉に任せて状況を見てくることにした。

「いけません、少佐殿。自分が行きます、貴方がここに居なくては指揮系統が混乱します」

 威圧的とも取れる口調で少尉が返してきた。そしてそれは正しい。

「分かった。伝令として2人連れて行け、それと俺の車を使え」

「了解しました。お前とお前、着いてこい」

 ゼップ少尉は壁際の銃掛から短機関銃を取ると、軍曹と伍長を連れて出て行った。

(シュラーガー少佐がいたら活き活きとして殲滅するんだろうが、いない時にくるとは運の良い奴らだよ。)


 俺はドアの外に立って耳を澄ませていたが、銃声はまばらにしか聞こえず、やがて止んだ。

(レジスタンス、な訳はないな。銃を使っていると言うことは、共和国軍しかあり得ない。もしかすると、俺たちと一緒に飛ばされてきた連中がいるってことか?)

 全く予想していなかった状況だが、現状を鑑みると考えられる選択肢は少ない。

(追跡して正体をはっきりさせないといかんな)

 そこへゼップ少尉が乗って行った小型兵員車がゼーレン少尉を乗せて戻ってきて、事務所前で止まると少尉が急いで降りてきた。

「少佐殿、敵は後退した模様です。損害は軽微ですが負傷者1名、重傷です」

「くそ。すぐに収容して師団司令部の軍医のところに運ぶ、所属はどこの兵だ?」

「警備隊の南方義勇兵です、警戒任務中に何者かを発見して誰何したところを撃たれたようです。少佐殿、追跡して捕捉撃滅する許可を」

「しかし、すぐに日が暮れるぞ、危険じゃないか」

 陽光が残っているのは西の空だけで森の中はすでに暗くなっている。そしてそれは間を置かず暗闇になる。

「警備隊の南方義勇兵から志願兵がありました。彼等は夜目が利くそうです、お任せ頂けませんか」

「仇討ちか、何人連れて行くんだ?」

「志願兵3名を入れて私以下11名。追跡捕捉して、監視します。夜が明けたら応援を要請しますので、その時に」

「分かった。連絡はどうする?」

「中隊から預かっている小型無線機があります」

「それなら許可する。準備ができ次第、出発してくれ。今、西側は誰が指揮を執っている?」

「装甲大隊第1中隊のバルクマン大尉です。私は小隊に戻ります」

 ゼーレン少尉は駆け足で去って行った。

 俺は小型兵員車に残った伍長に向かって命令を下した。

「伍長、バルクマン大尉宛に伝令だ、別命あるまで西側防衛の指揮を執れ。以上」

「了解しました!」

 伍長はギアを入れるとアクセルをふかして走り去ったのを見送ると、事務室の自席に戻り電文を作成して従兵を呼んだ。

「これを師団司令部に送れ」

「はっ」

 従兵は素早く去った。

 俺は事務室に残っている連中に向けて命じた。

「別命有るまで戦闘配置は維持する。交代で見張りと待機だ、各指揮官に通達しておけ。それと食事は配置場所に配食する、トーマ准尉にその旨連絡だ」

「はっ、少佐殿!」

 下士官の一人が応じて、野戦電話の受話器を取り上げた。




第91歩兵師団司令部

師団長 ホーフェンベルグ中将


 司令部に入ると無線機の前に下士官達が集まっていた。

「何か続報は入っているかね」

 私が近付きながら尋ねると、下士官達が一斉に直立不動を取った。

 通信兵の脇に寄り添っていた司令部通信班の曹長が

「続報は入っておりません。ですが、攻撃自体は小規模だったようです」

「そうか」

 ふと下士官達の視線が私の後ろに向いていることに気がついた、彼等だけで無く司令部にいる全員がそうだった。

 私は咳払いをひとつして、フィーラを紹介した。

「彼女は本日、軍属として採用したフィーラ君だ。この世界の住人でダークエルフという種族であり、特殊な能力を持っている。待遇は未定ではあるが、将校待遇とする予定なので失礼のないように接してもらいたい」

 するとフィーラは凜とした視線で司令部に居る者達を見渡しながら

「皆様、ヴィクゼル・ヤスウェル・フィーラと申します。本日より2人の姉と共にこちらでお世話になることになりました。不慣れなことばかりですが、伯爵様の御為に身を粉にして励む所存でおりますので、どうぞよろしくお願い致します」

 可愛らしい声で流れるような挨拶を述べた後に、右手を胸に当てて浅く一礼した。

 その姿を見て皆あっけに取られていたが、通信班の曹長が踵を打ち合わせて直立不動を取ると全員がそれに倣った。

「こちらこそよろしくお願い致します、フィーラ軍属殿!」

 曹長の返答にフィーラは極上の笑顔を返した。

 私はフィーラの笑顔を見て思うところがあったが、彼女の魔法を懸念して無心であることに努めた。


 その後ブリンクマン中佐とシュラーガー少佐が司令部に入ってきた。

「まだ、補給処からの続報は無い。攻撃は小規模だったらしい」

 私が2人に向かってそう言うと、2人は小さな声で「了解」とだけ答えた。

 やがて無線に補給処からの無線が入り、無線手が書き取ったメモを曹長が確認して私に手渡してきた。

私が内容を確認した後、その要旨を2人に向かって告げた。

「攻撃は撃退、小競り合い程度だったらしい。警戒任務中だった義勇兵1名が重傷、こちらの衛生大隊に収容を依頼している、あちらには軍医はいないのかね」

「は、衛生兵しかおりません」

 シュラーガー少佐が答えた。

「直ちに衛生大隊に手配してくれ給え」

「はっ、師団長閣下」

 ブリンクマン中佐が応え、伝令を呼ぶ。

「自分は直ちに補給処に戻ります」

「まぁ待ち給え、少し話そう。これをどう思う?」

 私がシュラーガー少佐に問いかけると、少佐は思案顔になり、そこへブリンクマン中佐も加わった。

「この世界で銃を使用しているのは、おそらく我々だけのはずだ」

「はい。共和国軍が居ないと仮定してですが」

「それが仮定ではないということだな」

「我々と同じく飛ばされてきたのでしょうか?」

「その可能性は極めて高いだろう。確か共和国軍の航空機が墜落したことが原因の可能性があるのだったな?」

「はい、あくまで可能性ですが」

「するとその搭乗員かもしれんな」

 私とブリンクマン中佐のやり取りを黙って聞いていたシュラーガー少佐が

「師団長閣下、捜索して可能な限り捕虜にします」

「うむ、すでに降下猟兵第3小隊の一部が隠密に追跡を開始しているそうだ。諸君、命令だ。師団は補給処を襲撃した敵を捕捉、撃滅し、この地域の安全を確保する為、掃討作戦を実施する。

 ブリンクマン中佐は、作戦全般の指揮を執れ。

 シュラーガー少佐は、部隊を指揮して敵兵力を捜索、捕捉して撃滅せよ。なお可能な限り捕虜を取ること。

 テッタウ少佐については、負傷者その他損害の把握と復旧について指揮すること。

以上だ。質問は?」

「ありません、師団長閣下!」カツン!!

「よろしい、行動を開始し給え」

 ブリンクマン中佐とシュラーガー少佐が動き出した、その時

「伯爵様、私もお供してもよろしいでしょうか。お役に立てると思います」

 後ろに控えていたフィーラが志願すると言いだし、それを聞いた司令部要員達が一様に驚いていた。

「いや、君は・・・」

 私も振り返ってフィーラに答えようとしたが、先程の情景と彼女の言動を思い出すと、否定的になる理由は外見と性別以外に無く、ブリンクマン中佐とシュラーガー少佐も一瞬驚いたように見えたが、すぐにまんざらでもない表情に変わっていた。

(試験運用、ということか。ならば)

「許可する。ブリンクマン中佐の指揮下で行動し給え」

「かしこまりました。必ずやご期待に応えます」

 フィーラは私に向かって一礼すると2人に続いて出て行った。彼女の能力を知らない司令部要員達は、私とフィーラのやり取りを見て驚愕していた。

1話から17話までの1話平均文字数が約7500でありました。これを5000から最大でも6000ほどにしようと思います。あとは話の流れ次第で短くも長くもなることもあり得ます。

一応お知らせしておきます。カツン!

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― 新着の感想 ―
[一言] 現地の敵対勢力がついに! 作中でもありましたが、銃創であるというのが気にかかりますね。あるいは、現地の一部ではすでに銃が用いられている? 今後も楽しみになる展開です!
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