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第91歩兵師団司令部、異世界にて指揮を執る。  作者: フニャンスキー


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13/83

13 魔法具

 私は師団長閣下から、接触したダークエルフと呼ばれる種族についてと、現在まで得られた情報、そして師団長閣下が下した決断を聞かされた。

これまでのように戦闘の指揮を執るだけではなく、ひとつの勢力としてこれを経営しなくてはならないと言うこと。戦術ではなく戦略の指揮を執る、つまり政治、経済、軍事、内政、言うなれば国家を運営するということだ。

師団長閣下としては

「まずは、オーレンベアク辺境伯爵の臣下として、できれば対等な同盟者として、領地を貰いそこを策源地とする。場合によっては国王に臣下の礼をとり、貴族として辺境伯爵から独立する。いずれにせよ、周囲に揉み消されるか、使い潰されることが無い程度の勢力を形成する。」

というのが、まずは目標だった。

「誠意をもって、とは言ったが我々の価値観や倫理がどれほど通用するかは分からんからな。武力だけでなく、謀略も必要になることもあるだろう。」

その辺りも決断に含まれているようだった。武力を極力用いないと言うのであれば、それに変わる盾と矛は謀略しかないのだ。とはいえ、まずその前に解決すべき難題があった。

「いずれにせよ、言葉の問題を解決しないことには進めないな。」

そう、意思の疎通ができないのだ。ダークエルフ達と接触した時には彼女達が魔法を使うことによって会話ができたという。

(我々が魔法を使えるようになる魔法はないのか。)

などと思ってしまう。しかし

「報告によると、一番最初に接触した際に指輪の様な物を使って話せるようになったらしい。言語を理解できる魔法の道具があるようだ。」

師団長閣下が言うとおりに魔法の道具が存在するのであれば、どこかで作っているという事ではないか。あのダークエルフ達は商人だというなら、なんらかの伝手があるかもしれない。

「会話ができる魔法の道具があるなら、ダークエルフ達に依頼して作成若しくは購入するのはどうでしょうか。」

「うん、それは良い考えだ。しかし、支払いはどうする。我々は現地の通貨を持っていないぞ。交換できそうな物も無いが。」

師団長閣下は表情を曇らせた。ダークエルフ達の利益になる部分も必要だろう。

「森に落ちている鉱石と、剣や槍はどうでしょうか。」

「ふむ。あの鉱石は価値がありそうだが、あの戦斧以外は期待できそうにないな。」

「精査すれば使える物があるかもしれません。それと、あの戦斧と材質や造りが似ている大剣が補給処にありましたので持ってきています。同じく森で拾ったということですが、もしかしたら対になっているのかと思いまして。」

「戦斧と対の大剣・・。似ているだけではないのかね、ブリンクマン中佐?」

「別物とも思えない造りです。少なくとも同じ職人が造ったものだと思います。」

「そうか、それなら彼女達に見せたら何か分かるかもしれんな。戦斧と大剣、鉱石と骨も一緒に見せてみよう。彼女達はハイン大尉が案内して駐留地を見て回っている、昼食後に会うことにしよう。」

「了解しました。そろえておきます。」

「うむ。」


そこで師団長閣下と2人で一息ついた。

「これは、捌ききれんな。」

師団長閣下がぽつりと言った。

「師団長閣下、中隊長以上の将校を集めて部隊編成の改変について検討した方がよろしいのではないでしょうか。私としては司令部の機能を強化すべきかと考えます。特に主計班を拡大して、経済部門として機能させる必要があるかと。」

「確かにそうだが、事務として使える予備は野戦郵便局しかないぞ。それもすでに地図小隊に人員を差し出している状態だ。」

今まで地図小隊と並んで仕事が無かった師団付きの野戦郵便局の下士官兵達は、仕事が出来て俄然忙しくなった地図小隊の応援として、ダークエルフから借り受けた地図の複製に駆り出されていた。残った将校も師団司令部の仕事を手伝っている。

「はい、ですので補給処主計班の人員を師団司令部に編入するしかありません。」

「そうだな。これからやることは増える一方だろうから、増員は必要だな。東方義勇兵のこともあるし、一度参集して編成について検討しよう。まず、連絡道路と通信が開通してからでもいいな、ブリンクマン中佐?」

「はい、師団長閣下。」

「では、我々も少し休憩しよう。私は自室に戻る。」

師団長閣下が席を立ったので、直立不動を取って師団長閣下が退室するのを見送った。

私は師団長閣下が退室すると、隣室の司令部要員を呼び、ダークエルフ達との会合の準備を始めた。師団長閣下の言葉からすると知的であり、友好的であるそうだが。

(どの程度なのか直接確かめなければ。できることなら魔法の道具の調達を依頼したい。言語の問題はなんとしても速やかに解決しなければ。)

テーブルと椅子の配置、目利きを依頼する品物の搬入を指図しながら対面の事を考えていた。



「将軍の丘」

第91歩兵師団司令部情報参謀 ハイン大尉


野戦病院で療養しているセトラさんを見舞った後、私はタトラ女史達を引率して駐留地内を案内して回っていた。

「むさ苦しい男ばかりでしたが、いかがでしたか、タトラさん?」

「ハイン大尉、この世界でも軍勢は男だけで編成されておりますので。しかし、決定的に違うところがあります。」

「それは?」

「見たことも無い道具の数々もそうですが、なんと言っても規律です。これほど規律を保っている軍勢と言えば、国王や皇帝直属の騎士団ぐらいでしょう。しかし、そういった騎士団は全員が貴族かその子弟です。爵位を持たない平民で編成された軍で、こんなに規律正しい軍勢はこの世界には存在しないでしょう。」

そう言われると意図せずとも笑顔になってしまう。

「ありがとうございます。我々がいた世界では教育が整っていて隅々まで行き届いていたからです。まぁ、それにはまず衣食住が満たされていることが条件になりますが。」

「そうですね、食うにも困る生活では教育など贅沢になってしまいますから。」

「そのとおりです。」

私はタトラ女史達3人を案内して駐留地内を回っていた。

(気がついたら、3人とも我々の言葉でべらべら喋っているんだが、どうなっているんだ?)

控えめに驚きを表してみたが、タトラ女史達3人は気にする風でも無くあれこれと質問し、私の説明に耳を傾けていた。

「そろそろ昼食の時間ですので、戻りましょう。」

ひととおり巡って、宿舎に足を向けたところでタトラ女史から声を掛けてきた。

「ハイン大尉、貴方から私達に質問はないのですか?」

私が驚いてタトラ女史を見ると、どこか悪戯っぽい笑みを浮かべて私を見ていて、他の2人も同じだった。気恥ずかしさを覚えたが、

「そうですね、では。皆さん、昨日は魔法を使って話されていましたが、今日は私達の言葉で話していらっしゃいますが、やはり魔法ですか?」

私が質問すると、予想どおりですね、という顔をして話し始めた。

「そうです。私は魔法スキル[会話]と[言語]を習得しているので、[会話]で話した言葉を[言語]で身につけることができるのです。」

「魔法スキル、ですか。会話という魔法を使って誰かと話をすると、その言語を魔法無しで話せるようになる、ということですか。」

(話しているうちに発音が上手くなったり、使う単語が増えていたのは、そういうことか。)

「正確には、[会話]は話すことができるだけです。[言語]は[会話]の上位魔法で、[会話]で話した言葉を知識として身に付けることができるのです。私はさらに上位の[語学]も習得しているので、文字に触れる機会があれば読み書きもできるようになります。」

タトラさんの説明に、あっけにとられてしまう。そんな私の様子がおかしいのか、タトラさんは微笑みながら

「そして、私が習得した知識は妹達と共有できるのです。」

「共有・・。タトラさんが習得した言語をテトラさんとヤトラさんへ伝えることできる、と言うことですか。」

「そのとおりです。」

「はぁ、それは素晴らしく便利ですね。その共有は誰とでもできるのですか?」

「いえ、私達は姉妹の契りを結んでいます。その上で[共有]と言う魔法スキルを持っているからできるのです。」

「なるほど。では、我々がこの世界の言葉を話せるようになる方法は、なにかありますか?」

「ええ、魔法具を使えば話せます。」

「魔法具?」

「はい、[会話]の魔法を宿した魔法具があるのです。指輪やペンダントに加工されている物が多いですが、それを身に付けて魔法を発現させると使えます。ただ、わずかでも魔法の適性が無いと使えません。源人族ですと、全く適性が無い人が多くいますので。」

「そうですか・・。」

さりげない会話のようだが、我々が一番最初に解決しなくてはならない問題を解決する手段があったのだ。あとは、その入手方法だが

「その会話が使える魔法具というのは、どこかで手に入るのでしょうか。」

「ええ、昨日お話ししたルアブロンに魔法具の店があります。魔法具を作れるのは魔法のレベルが高く、必要なスキルを持つ魔法使いだけなのです。」

「魔法使い、ですか・・。値段はどのくらいする物なのでしょうか。」

「最低でも金貨5枚、25,000ノアルぐらいです。物によっては金貨10枚を越える物も珍しくありません。ルアブロンでは大人1人が一月食べていくのに最低でも400ノアルぐらい必要ですので、魔法具は貴族や大商人でなければ手に入れることは難しいのです。」

「なるほど・・。」

ノアルと言うのは通貨の単位らしい。ここの暦は分からないが、こちらの感覚で大人の年収分が最低額に足りないぐらいとなると、かなりの高級品とういうことになる。そして品質によっては倍以上もする。それに魔法使いが作ると言うことは、手作りということで生産数も多くはないはずだ。

(まず、資金を確保しなければ駄目だ。資金・・、異世界の現金、そんなものどうやって調達したらいいんだ・・?)

「ハイン大尉?」

呼ばれて我に返ると、いつも間にか立ち止まって思考にふけっていた。タトラ女史達3人が怪訝そうな顔で私を見ていた。

「これは失礼しました。」

慌てて歩き出そうとすると

「ハイン大尉、よろしければ会話の魔法具を1つお貸しできますよ。」

タトラ女史の申し出に飛びついてしまった。

「本当ですか!」

タトラ女史が驚いた表情で

「え、ええ、セトラがお世話になっていますし、恩返しができれば私達としても嬉しいのですが。」

「是非!是非ともお借りしたいのです、タトラさん!」

「わ、分かりました、では後ほどお持ちしましょう。」

「はっ、ありがとうございます! このお礼は必ずや致しますので。」

「そんな、妹のことがありますから、お気になさらず。」

「いえ、師団長閣下が部隊の方針として、誠意を持って臨み、誠意には誠意で応えよ と仰ったそうなので、我々は実践しなくてはなりません。」

「・・・そうなのですか・・。」

タトラ女史達は一瞬表情を変えたがそれには気付かないまま、私は足取り軽く、宿舎に向かって歩き始めた。


タトラ女史達を宿舎に送り届けると急いで司令部へと向かった。中に入ると従兵に女史達への配膳準備を確認した後、司令部のドアを開けた。司令部には巨大な斧と剣、その他大小の剣や槍、例の鉱石と骨がいくつか並べられ、その前には主席参謀のブリンクマン中佐が立っていた。

「中佐殿、お帰りでしたか。」

「ハイン大尉、こっちは上首尾だったが、そちらはどうだ?」

「こちらも大戦果です。」

笑いが堪えきれずに顔に出てしまうと、ブリンクマン中佐も同じく

「期待してよさそうだな、大尉?」

「はい、中佐殿。実は・・・。」

つい先程タトラ女史から達聞き出した情報をブリンクマン中佐に伝えると

「よしっ!よくやったぞ大尉!!」

今までに見たことがないほどの喜びようでブリンクマン中佐に肩を叩かれた。

「しかし、購入するにはかなりの資金が必要です。」

「うむ、そこでこれを出してきたんだ。昼食後にダークエルフ達と会合するんだが、その時にこれが換金できるかどうか確認する。」

ブリンクマン中佐の喜びに水を差してしまったようだが、中佐はあくまでも冷静だった。しかし、ひとつ注意しておかなくてはならない。

「中佐殿、彼女達には名前があります。」

「あ、ああ、そうだったな。まだ名前を聞いていないんだ。」

「そうでしたか、タトラさん、テトラさん、ヤトラさんです。お会いしたときに私が紹介します。」

「ああ、頼む。」

ばつの悪そうな顔をした後、ブリンクマン中佐は大きな斧と剣を見て

「まずはこの二つについて聞きたいんだ。」

「明らかに他の武器とは違いますね。」

「大きさも材質も造りも違うが、何か模様か文字が刻まれているんだ。ただの武器ではないと思う。」

私は黙ったまま頷いた。

「我々も昼食にしよう。」

ブリンクマン中佐がそう言ったが

「師団長閣下への報告は、いかがしますか。」

「師団長閣下はお休みになりたいそうだ。昼食後、彼女達が来る前に報告すればいいだろう。」

「了解しました。」

ブリンクマン中佐と私は司令部を出て、将校用の控え室へと向かった。


「将軍の丘」

第91歩兵師団司令部主席参謀 ブリンクマン中佐


昼食後、司令部で待っていると師団長閣下が入ってきた。直立不動を取って迎えると、早速ハイン大尉が得た情報を報告させた。師団長閣下は驚くと同時にハイン大尉を賞賛した。

「良い仕事をするじゃないか、ハイン大尉。」

「はっ。ありがとうございます、師団長閣下!」

師団長閣下は私に向き直ると

「これで言語の問題は見通しがついたな。」

「はい、後は魔法具の購入資金が調達できれば解決します。」

「うむ、これらが換金できればいいのだが、駄目なら他に何か提示しないといかんな。」

「はい。護身用の拳銃を考えたのですが・・。」

「それは私も考えた。・・保留しておこう。」

「はい。」

師団長閣下と顔を見合わせて、苦笑いを交わした。

それから少し待つと、ドアがノックされてタトラ女史を先頭に3人のダークエルフ達が入ってきた。

(これがダークエルフか・・。美しいが、耳が長い。)

「伯爵閣下、参りました。」

タトラ女史が浅く一礼しながら挨拶すると、2人も倣って一礼する。

「皆さん、紹介しましょう。彼はブリンクマン中佐、この司令部を仕切る主席参謀で私の右腕たる存在です。」

師団長閣下が右手で私を示しながら3人に紹介した。私が一礼して挨拶すると、続いて3人が1人ずつ名乗った。

「どうぞ、お掛けください。」

自己紹介が終わると師団長閣下が椅子を勧め、全員が座ると私に視線を送ってきたので本題に入った。

我々が当分の間ここで自活しなくてはならないこと、その為にこの世界の言葉、言語の問題を解決しなくてはならないこと、この点について彼女達から援助の申し出があり、非常に感謝していること、を話した。

「皆さんの援助に対して、せめて幾ばくかの謝礼をしたいと思っております。また、魔法具を幾つか調達したいとも考えております。ですが、我々はこの世界の通貨を持っておりません。そこで、我々がここに来てから得た物品を、換金できないかと考えておりまして、その為に来ていただいたのです。」

私が話を切ると、タトラと言う名のダークエルフが答えた。

「ブリンクマン中佐のお話は分かりました。謝礼につきましては、すでに私達の妹がお世話になっておりますのでお気になさらずに頂ければと思います。魔法具購入の為の換金については承知しました。私達の所持金は少ないので、私達が品物を見定めてから近隣の街へ持っていき、売ることは出来ますのでお手伝い致します。」

ほぼ完璧な帝国語に面食らいつつ礼を言うと、部屋の隅で布を掛けられた鉱石や骨等を指し示した。

「物品につきましては、そちらに並べてありますので、ご覧ください。物としましては森の中に落ちていた剣や槍、由来不明の鉱石になります。他に正体不明の骨がありまして、それについてご存じであればご教示いただきたいと思い、並べてあります。」

そう言いながら側に立っていた従兵に合図して、被せてあった布を取らせた。すると

「・・・・えっ。」

「これは!!」

「お姉様?!」

三者三様の反応で、思わず席から立ち上がっていた。

「???・・どうかなさいましたか?」

3人の反応に驚いて、私達も揃って動けなくなってしまった。

やがて3人ともふらふらと席から離れ、戦斧と大剣に近付いて行った。長すぎるため床に寝かせてある戦斧と大剣を手に取り、じっくり見た後、静かに動いて鉱石を手に取った。続いて骨を見てからゆっくり席に戻ってきた。私達は席に座ってからも一言も喋らない3人を見ているしかなかった。

「何か、不愉快にさせるような物がありましたか?」

師団長閣下が気遣って口を開いた。

「・・いえ・・。」

辛うじてタトラ女史がか細い声で答え、そのまま黙ってしまった。

「何か魂が抜けてしまったような感じですが・・。」

ハイン大尉が小声で耳打ちしてきた。私は黙ったまま頷いて、視線を師団長閣下に向けると、師団長閣下も首を小刻みに左右に振るのみだった。

「あの、タトラさん・・?」

私が意を決して声を掛けると、両腕をテーブルに乗せて手を組んで俯いていたタトラ女史が顔を上げた。そして

「・・失礼しました、ちょっと予期していなかったことが起こってしまい混乱していました、申し訳ありません。あの、これらの品物をどこで手に入れられたのですか?」

「この丘の北側の森の中です。かなり広い範囲に骨と鉱石と剣や槍が落ちているのです。」

私が答えるとタトラ女史は頷いて、幾分落ち着きを取り戻した口調で物品について説明を始めた。

まず、鉱石は魔石という物で、中に魔法を発現させるのに必要な魔力が入っている物だそうだ。ただ普通は色が付いていて、さほど高い物ではないのだが、ここにある魔石は無色透明であり、タトラ女史が知っているかぎりでは高額で取引されるだろうと言うことだった。次に骨については、魔物の骨であり魔法具を作る際の素材として需要があるので、魔物の種類によっては高く売れる、との事だった。そして剣や槍は良い物ではないので、溶かして金属塊としてなら売れるだろうが、溶かす手間を考えると採算が取れるか怪しい、との事だった。私達としては鉱石と骨が売れると聞いて、内心喜んだ。どうやら鉱石は貴重品らしい、値崩れしないように注意しておけば資金調達は心配ないように思われた。

(森の中一面に落ちているのだからな、それを拾ってくるだけだ。故郷の森で団栗を拾うのと同じじゃないか。)

私は高揚する心を抑えつつ、次の説明を待った。だが、待っていてもあの戦斧と大剣についての話は始まらなかった。

「・・・???・・・。」

私達は黙ったままタトラ女史達3人を見ていたが、3人とも俯いたままだった。

「あの、タトラさん・・?」

再び私が意を決して声を掛けると、両手をテーブルの端に乗せて俯いていたタトラ女史が顔を上げた。そして大きく息を吸い込んでゆっくり吐くと意を決した様子で口を開いた。

「ホーフェンベルグ伯爵閣下、ブリンクマン中佐殿、ハイン大尉殿、あの戦斧と大剣についてお話しするにあたり、まず私達の素性と商人として大陸を放浪している理由もお話しなければなりません。」

タトラ女史はそこで言葉を切った。そのタイミングで師団長閣下が従兵に向かって頷くと、従兵は静かに部屋から出て行った。

「お気遣いに感謝します、伯爵閣下。」

タトラ女史が師団長閣下に向かってそう言うと、師団長閣下は黙ったまま頷いて、話を続けるように促した。



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