12 始動
「将軍の丘」
第91歩兵師団司令部主席参謀 ブリンクマン中佐
私以下の車列は滞りなく「将軍の丘」に到着した。野戦憲兵が待ち構えていて、私が乗る「猪1」と「狐」、「鹿」は丘を登って司令部に向かい、車列は丘の東側へと誘導されて行った。ただ、病身のフレンツェル少佐を乗せた救急車だけは野戦憲兵が1名乗り込んで、衛生大隊の駐留場所へ別れて行った。
配置についている警戒部隊の下士官兵達は、列を成して進んで行く戦車や輸送車両に笑顔で手を振っていた。
「猪1」を進ませて司令部前に止めさせると、
「カウフマン曹長、偵察隊の兵達を楽に休ませておけ。それから、連れてきた各指揮官に全員揃ったら司令部に来るように伝えて貰いたいのと、あとこいつを司令部に運んでおいてくれ。」
そう言いながら後部座席に積んでおいた大剣を親指で指した。
「了解です、中佐殿。」
まだ助手席に居たカウフマン曹長に命じると、鞄を掴んで司令部に向かった。司令部が入っている民家のドアを開けると通信参謀のギュールス大尉が待っていた。
「お疲れ様でした中佐殿、師団長がお待ちです。」
「ありがとう。ベーレン大尉はいるか?」
「はい、今呼んできます。」
「頼む。」
脱いだコートを壁のフックに掛けて身なりを整えていると、ギュールス大尉が将校を1人連れて戻ってきた。
「ご無事でしたか、中佐殿。」
補給参謀のベーレン大尉。私の帰りを待ち焦がれていたに違いない。
「お待ちかねの補給だぞ。輸送段列の指揮官はフルトナー中尉、長身で眼鏡を掛けている。行って搬入の段取りを組んでくれ。」
「了解しました中佐殿!」カツン!
よほど気になっていたようで、ベーレン大尉は急いで出て行った。その後ろ姿を見送った後、襟元を正して司令部に入ると、中には司令部要員と上機嫌の師団長が待っていた。
「師団長閣下、只今戻りました。」カツン!
「ご苦労だったな、ブリンクマン中佐。」
師団長が差し出した手を握った。
「ありがとうございます。」
「色々あったようだな。早速聞かせてくれ。」
「はっ。」
私はテッタウ少佐から渡された補給処に備蓄されている各種軍需物資の一覧や、指揮下に入った部隊の編成表を鞄から取り出して手渡した。
「これは、凄い量だな。」
一覧をめくっていた師団長が呻くように言った。
「は。1個師団程度なら3年は維持できるかと。弾薬燃料については部隊の運用に左右されますが、大規模な戦闘が無ければ当分の間は心配ないと思われます。」
「ふむ、糧食はいいとして、装備は共和国の物が多いのか。」
「はい、元が共和国軍の補給処ですので。ただ、反攻作戦に向けて燃料弾薬が集積中でありましたので、そちらは我が軍の物も大量にあります。」
そう言いながら、一覧表の別紙を示す。
「これは我々の生命線だな。各大隊長を交えて管理について規定を定めた方がいいだろう。」
「はっ。師団長閣下。」
「それと、守備隊を連れてきているのだったな。」
「は。一覧はこちらです。各指揮官がそろい次第ここに来るように指示してあります。」
「そうか。各大隊長とグレープナー大尉も呼んでいるから顔合わせと防衛体制を決めてしまおう。それにしても装甲中隊、騎兵中隊、高射砲中隊と降下猟兵中隊、豪勢なものだな、大隊規模の戦闘団が編成できるじゃないか。」
「はい。装甲中隊は念の為に打撃力を保有しておくべきと言うことと、半分は装甲車ですので、機動力も期待できます。騎兵中隊は馬の飲み水の確保が難しいため連れてきましたが、歩兵としての運用と、騎馬による偵察も有効かと考えています。高射砲中隊は対空防御と地上支援火力を確保する為です。降下猟兵中隊は歩兵戦力としてですが、中隊長が志願したので急遽、野戦警察中隊に変えて連れてきました。」
「ほう、志願かね。確かに頼もしい限りだが、将官の膝の上に来たいとは、変わった中隊長だな。」
師団長が皮肉交じりに言うと、居合わせた司令部要員達が苦笑いを浮かべた。
(言われてみるとそうだな。お偉いさんの近くに来たい兵隊なんかいないだろう。やけに食いついてきていたし、なにかあるのかも知れないな。)
私も笑みを浮かべながらエルドマン大尉の顔を思い出していた。
それからしばらくして4人の大隊長と5人の中隊長が司令部に集まり、司令部要員は書記2人を残して退出した。まず師団長が口を開いた
「私は第91歩兵師団長のホーフェンベルグ中将だ。諸君が指揮下に入ったことを嬉しく思う。現在まで周囲に共和国軍の存在は認められないが、危険生物の存在は確認されており、また今後の行動によって新たな敵対勢力が生まれる可能性は極めて高いと考えている。これまでどおり軍規を維持し、任務に精励することを期待している。」
師団長の言葉が終わると、新たに加わった4人の中隊長は一斉に直立不動を取り、踵を打ち合わせた。
「はっ、師団長閣下!」カツン!!!
師団長閣下に促されて用意された椅子に座りながら、私は師団長閣下の言葉に気になる表現があることに気がついた。
(今後の行動によって新たな敵対勢力が生まれる可能性・・とは、どういうことだ・・・?)
師団長閣下の表情を覗っていると、ふと目が合った。穏やかな微笑みを見せたその目は、いつもとは違う力に満ちているように感じられた。
(なにか決断を下された、とういうことか。)
あとで話があるだろう。
続いて各大隊長とグレープナー大尉、そして4人の自己紹介と続いた。ひととおり終わると師団長閣下が私をみて話を振ってきた
「では、さっそく仕事の話をしようじゃないか。ブリンクマン中佐、案はあるかね。」
「はっ、師団長閣下。」
私は立案していた配置計画を次のとおり口頭で提示した。
1 丘の東側に駐留地を拡大し、新たに加わった部隊の駐留場所とする。
2 北側の防衛は第7降下猟兵中隊、東側は騎兵中隊「アイクマイアー」が担当する。
3 4個あった警戒部隊を2個に再編成し、南と西側を担当する。
4 装甲中隊「ピルツ」は東側に駐留し、予備兵力とする。
5 軽高射砲中隊の機関砲は北、東、西に1門づつ配備し、残り1門は中央に配置。
6 各警戒部隊に配属した重装備小隊の機関銃については、新たな配置部隊に継続して配属する。
7 重装備小隊の迫撃砲と軽歩兵砲小隊の運用と配置は変更なし。
8 対戦車砲小隊、軽高射砲小隊、野戦憲兵小隊の運用は変更なし。
9 北と東については各中隊長が指揮を執り、南と西の警戒部隊については改めて部隊長を任命し、護
衛中隊長グレープナー大尉が引続き統括指揮を執る。
「以上が防衛体制の仮の案になります。なお配置につきましては警戒任務とし、配置に付く部隊と休養と訓練を兼ねた予備部隊に分けて、交代で運用するのが現実的であると考えます。」
私の話を頷きながら聞いていた師団長閣下が口を開いた。
「私はこの案で良いと思うが、意見がある者がいたら発言し給え。」
皆、黙ったままで何も言わなかった。
「ブリンクマン中佐、他に補足したいところがあれば言ってくれ。」
師団長閣下に促されたので、細かいところを話すことにした。
「はっ。新たな駐留場所を東側としたのは西側には水源があり、周囲の衛生を確保する必要があるためです。人員と馬匹が増えたので、今後は水源の警備が必要と考えております。今回配置となった、アイクマイアー大尉の騎兵中隊が保有する馬匹輸送小隊については当分の間、補給大隊の指揮下に編入するのが妥当であると考えていますが、アイクマイアー大尉、いかがですか。」
「問題ありません、有効にお使いください。」
「ありがとうございます。ライネッケ少佐もよろしいですか?」
「無論です。燃料を必要としない輸送手段は大歓迎です。」
ライネッケ少佐が笑いながら答えると、他の将校達も苦笑いを浮かべた。
「それから、騎兵中隊の馬の管理については、中隊で行うのを基本としますが、支援が必要かと思いますので、補給大隊と調整をお願いしたい。」
そう言うと、アイクマイアー大尉が右手を上げた。
「どうぞ。」
私が促すと
「馬の世話についてなのですが、飲み水と飼葉の確保と供給はかなりの労力が必要になります。特に飼葉は草を刈って乾燥させて、その後は濡らさないように保管する必要もあります。これら全てをこなすには私の中隊だけでは手が足りません。」
ライネッケ少佐が頷いている。私が少佐に視線を送ると
「私の大隊でも緊急の課題になっています。手持ちの飼葉が尽きるのは時間の問題ですので、可能限りの人員を割いて飼葉作りに当たらせています。すぐ側の草原に生えている草は飼葉として使えるようのなので、作業の効率が良いのがせめてもの救いです。」
他の大隊から手空きの人員を出して貰おうかと考えていると、アイクマイアー大尉が
「中佐殿、補給処にいた東方義勇兵を増員して頂けないでしょうか。彼らは馬の扱いに慣れていると思うのですが。」
と言うと、師団長閣下が反応した。
「東方義勇兵? 補給処に義勇兵がいるのかね、ブリンクマン中佐?」
「はい・・。申し訳ありません、報告するのを失念しておりました。」
そう言えば、師団長閣下は東方辺境伯爵の一族だった
「それはかまわんよ。そうか、彼らがいたのか。」
師団長閣下は顎に手を当てて考え込んでいる。
「東方辺境伯殿の領民がいらっしゃるのでしょうか?」
ライネッケ少佐が尋ねると
「ああ、おそらくいるだろう。実家に帰る度に部下にしてくれと頼まれていたんだ。彼らは皇帝陛下への忠誠を示す機会を求めていたからね。」
皆が黙ったまま師団長閣下を見つめていた。それに気がつくと
「分かった、この件については私が彼らと話そう。それまでは各大隊、中隊から空いている人員を差し出して支援に当たって貰いたい。ライネッケ少佐、君が計画を立てて指導してくれ。」
「は、了解いたしました。ありがとうございます、師団長閣下。」
その後は補給処との連絡道路と野戦電話の敷設、補給処から将軍の丘への補給体制、東西南北の陣地構築、廃棄物やトイレなどの衛生管理について話合いが進んだ。
「さて、補給処とここの拠点としての体制はこんなところかな?」
ひととおり話合い、意見が途絶えたところで師団長閣下がそう言うと、全員が黙ったまま注目し、同意を示した。
「では、次に当面の行動方針と計画について話したい。」
将軍の丘と補給処が繋がり、充分な兵力も確保できた。我々が置かれた状況から策源地を確保するためには外へ進出して現地勢力と接触するしかない。
(その決心をされたと言うことか。)
先程の言葉とあの目の理由が理解できた。
「だが、その前に一息入れようじゃないか。15分間休憩しよう、コーヒーと煙草を許可する。」
師団長閣下が笑顔でそう言うと、一同も笑顔を見せて、ポケットを探り煙草とライターを取り出し、書記が従兵を呼びに部屋から出て行った。
15分後。一同が揃うと師団長閣下が口を開いた。
「現在の情勢についてはすでに共有されているとおり、我々がいるこの世界は、我がリュティヒス帝国とヴェスタール共和国が開戦して2年半が経った、大陸歴941年のミッテルラント大陸ではなく、何もかもが異なる世界だ。」
そのことについては誰も何も反応しなかった。
「当然、本国からの補給は無く、今ある手持ちの物資を消費すればそれまでだ。生きていくだけで精一杯になれば軍規など絵空事に過ぎない。部隊は散り散りになり我々はこの世界で溶けて消えてゆくことになるだろう。だが、元の世界に戻れる可能性が皆無である確証がない以上、戻れるその日まで軍規を維持し、戦線に復帰できる状態でなくてはならん。私のその為に掌握した部隊の指揮を執ることを決断した。」
師団長閣下が一旦言葉を切る。元から居る将校はすでに聞かされていることなので、今日やって来た4人に向けた言葉だが、どこか前回とは違う気がした。
「その為にはまず、根拠地を確保したうえで、永続的な補給を可能にする策源地を得ることだが、それには現地勢力を無視することはできん。既存の政治体系に組み込まれるか、あるいは独立勢力となるか。しかし現地の情報が何もなく、再び探検隊のような偵察隊を出すしか方法はないと考えていた。」
師団長閣下はそう言いながら、私を見た。全員が私を見て、にやりとしたが私は片方の眉を上げるだけで応えた。
「だが昨日、我々は現地民と接触し、この世界と現在地周辺の情報を得ることができた。」
これには私も驚いた。しかしよく見ると各大隊長だけでなく、グレープナー大尉も頷いていたので、おそらく南の道路で接触したのだと予想できた。師団長閣下が書記に合図すると、1人が席を立ち我々の前のテーブル上に1枚の地図を広げた。師団長閣下が指示棒を取り出して一点を指示した。
「これはその現地民から借りた地図だ。当初の予想通り、この世界の文明水準は我々の中世の頃に近い。従ってこの地図もその水準であるが、我々の現在地はこの辺りであり、ここはノルダードと呼ばれる大陸のおよそ南東に位置する地方で、クーアルド王国という国家のオーレンベアク辺境伯爵の領地であることが分かった。」
「辺境伯爵・・・。」
誰かが呟いた。
「そうだ、間違っても私とは繋がりはないがね。」
師団長閣下がそう言うと、皆が忍び笑いを漏らした。その結果に満足したように笑みを浮かべた師団長閣下が地図の上で指示棒の先を滑らせ、我々の現在位置から南南西、湾になった場所の奥に書かれた赤い四角を指した。
「ここがその辺境伯爵の領都、ルアブロン。この地方では一番大きな街で、この海の南側にある別の大陸との交易で栄えているらしい。見てのとおり周辺には大小の街や村があり、農業や畜産を営んでいるということだ。私はこの辺境伯爵領において策源地を得ることを目標にする。まずは現地民からこの世界の政治、経済、軍事などの情報を収集し、次に辺境伯爵の情報を収集する。その上で策源地が得られる策を講じる予定だ。しかし、武力は極力使わない。占領地政策が難しいのは諸君も知ってのとおりだ。」
皆が黙って頷く。抵抗組織との治安戦は血みどろと相場が決まっているのだ。師団長閣下の考えは、辺境伯爵の内情を探り、伯爵かその敵対勢力に手を貸して恩を売り、領地という形で策源地を得る、ということだろう。我々には武力の他に技術的な優位もある、勝ちを得る可能性は高い。
「それと、この言葉を覚えておいてもらいたい “誠意を持って臨み、誠意には誠意で応えよ” 私の祖先と一族はこれを実践して信頼を得て、その結果として富も得た。この世界でどこまで通用するかは分からんが、私はこれを信念として事を成す。よろしいな、諸君?」
「「「はい、師団長閣下。」」」
一呼吸置いて全員が応えた。
(動き出した。なんとしてもやり遂げねば。)
私は心が高揚し、早くも思考が先走りし始める感覚を覚えていた。
その後は質疑応答の時間としたが参加者からの発言はなかったので、師団長閣下から会議の終了が告げられた。それぞれが席を立ち始めたとき、エルドマン大尉がしきりに私に視線を送っているのに気がついた。
(きた。)
「エルドマン大尉、ちょっと残って貰いたい。」
そう言いながら師団長閣下に視線を送ると、師団長閣下は浅く頷いて席を立たなかった。
「はっ、中佐殿。」
どこかほっとしたような顔をしてエルドマン大尉が答えた。
他の将校達と書記は退出し、室内には師団長閣下と私、そしてエルドマン大尉が残った。大尉は師団長閣下に近づくと直立不動となって
「師団長閣下、先日ブリンクマン中佐殿に対して申告しました、空軍第6降下猟兵連隊第7中隊は任務のために与えられた欺瞞名称であります。自分と中隊の正規の所属は、帝国軍総司令部作戦局 第800特別教導連隊第9中隊であります。」
エルドマン大尉の声は低かったがはっきりと聞こえた。
「・・フリーデンタール連隊かね。反攻作戦に参加予定だったのか、知らなかったな。」
「は。帝国軍参謀総長から第7軍司令官まで通知の特殊作戦です。敵戦線後方へ夜間降下で侵入し、交通要所の確保と後方攪乱を実施予定でありました。」
「夜間に落下傘降下か。聞きしに勝る働きをするのだな。」
「は、ありがとうございます。あともう一つお伝えしたいことがあります。」
「なんだね?」
「中隊の第4小隊、フィルカザーム少尉以下16名は、軍務省情報部の所属であります。作戦の実施に合わせて共和国内部に潜入する予定でありました。」
「・・つまり、スパイかね。」
「はい、師団長閣下。本来ならフィルカザーム少尉も同道するべきでしたが、秘匿を優先致しました。所属と任務の通知についてはフィルカザーム少尉の同意は得ております。」
師団長閣下は何も言わずに頷いた。
近々実施される予定だった反攻作戦は、第7軍のみならず陸軍総司令部の肝いりで準備が進められていると聞いていた。当然、帝国軍総司令部も無関係では無い。
(戦力の集中は基本中の基本だ。後方攪乱はタイミングさえ間違わなければ大きな効果がある。それによって我が軍が戦線突破に成功したら、敵は大混乱に陥るだろう。しかし、その混乱に紛れてさらに後方へ潜入するというのは、大胆というか無謀というか・・。)
第800特別教導連隊は、噂で聞こえてくるだけの存在だった。軍内部でも全容を知っているのは上層部のごく少数で、部隊名称以外は軍機に指定されていて、欺瞞のための書類のみの存在だと言う話もある。師団長閣下が言ったフリーデンタール連隊というのは、帝都近郊にあってほとんど使われていない演習場の名前で、そこで密かに訓練をしている、と言う噂から付いた通称だった。
そしてその中に、軍務省の組織図でその名前を見たことしかない、軍務省情報部の要員もいると言う。
(帝国軍随一の精鋭と、こんなところでお目に掛かるとは・・。)
と思う一方で、どちらも戦果や活動は一切公表されず、また知る術もないので、こうして直に係わることになっても、得体の知れない珍しい人、と言う率直な感想が過半を超えていた。
「エルドマン大尉、なぜその事を話すことにしたのですか?」
私がそう言うと、大尉は私を見た後で師団長閣下に視線を戻し
「我々の所属について、総指揮官たる師団長閣下に申告しておくべきであると考えたという事と、先程の行動方針を聞き、我々がお役に立てると思ったからであります。」
その答えを聞いた師団長閣下は視線だけをエルドマン大尉に向け
「そのとおりだ、大尉。近いうちに働いて貰うことになるだろう。それまでは先程の決定に従って勤務し給え。」
「はっ、師団長閣下!」カツン!
エルドマン大尉が退出した後、師団長閣下が私に話しかけてきた
「驚いたな。」
「はい。俄には信じられません。できることなら帝国軍総司令部に照会したいくらいです。」
「はは、君らしいな。」
師団長閣下が私の言葉に笑みを見せた後、表情を改めて
「ブリンクマン中佐、私は決心したよ。」
そう言って、昨日将軍の丘の南で発生した出来事と、ダークエルフ達との会合から得た情報、そして決心に至った理由を。
「我々は行動しなければ自滅を待つだけだ、それは許容できん。私自身が理解しているだけで、覚悟が足りなかったようだ。」
私は黙ったまま頷いた。
「我々が行動することによって、この世界にどのような影響を及ぼすか分からんが、我々がここに現れた事こそが必然と考えるしか無い。」
「はい、師団長閣下。私は師団長閣下のお供をすると申し上げました、今もその考えに変わりはありません。」
「ありがとう、ブリンクマン中佐。」
師団長閣下は穏やかな笑みを浮かべ、私を見た。
「では、始めるとしよう。」




