11 決心
第91歩兵師団司令部
第91歩兵師団長 ホーフェンベルグ中将
私は自室に戻ると、持っていた軍帽をテーブルに置き、ベッドに腰掛けた。第二ボタンまで外して胸元をくつろげると、そのままベッドの上に横になった。制服の皺を考えないでもなかったが、
(人間ではない生き物、妖精のような生き物と会話していたんだな。)
先ほどのタトラ女史とのやり取りを思い出すが、認識するのに努力が必要だった。異世界に居る、とは言いながらどこか信じきれていないところがあった、しかし、もはや疑う余地はなくなったのだ。
(なぜ、こんなことになったんだ。)
いくら考えても答えが見つかることはない、それが分かっている疑問を頭の中で何度も反芻していた。
(くそっ。)
軍人として、今まで幾多の場面で私は考え、決断し、命令を下してきた。しかし、それは結局のところ、誰かの命令に従って行動していたに過ぎなかったことを思い知らされていた。
(ここでは、これからは、全て私が考えて、決断して、命令しなくてはならない。継続的な補給も補充もない、そもそも本国がない。今ある物資を使い切ったらそれっきりなんだぞ。こんな状況を想定したことがある者がいるのか?)
考えれば考えるほど、言いようのない不安ややり場のない怒りが体の中に充満していくのを覚えていた。
(いかんな・・。落ち着こう・・・。)
呼吸を深くゆっくりと繰り返して思考を落ち着かせる。
(部隊を指揮するという考え方を改めよう。指揮だけでなく経営という考え方を持たなくてはだめだ。領地、いや国家を考えたほうがいいかもしれない。根拠地を確保して、永続的な補給を確保できる土地を得る。それには、現地の政治体型に組み込まれるか、独立勢力となるか、だが…。)
ベッドの上に起き上がり、考えを巡らせる。
(軍事に加えて政治と行政と経済か。父上や兄上、叔父上の苦労をこんな形で思い知ることになるとはな。)
5代前の先祖が皇帝陛下から帝国東方に領地を賜り、辺境伯爵に封じられた。そこに住まう領民は異民族だったが、父祖達は彼らに慈愛の心を持って接し、新しい農具や農作業のやり方を広め、新しい産業を興し、まず領民を豊かにした。おかげで領民達から絶大な信頼を得て、実家も裕福になった。いつしか領民達は我が辺境伯爵家を「東方の星」と呼ぶようになった。夜空に瞬き、東方の民を導く道標、ということだそうだ。
兄が当主を継いだ今も変わらない。次男だった私は実家を出て軍人となったが、実家に帰省する度に、領民の若者が屋敷にやってきて部下にしてくれと頼まれたものだ。
領地のことにはほとんど関わらなかったが、夜遅くまで家宰と話し書類をさばいている父や兄、叔父の姿を何度か見ていたので、同じ一族として誇らしく思っていた。
(私に家宰はいないが部下がいる。何もかも1人でやる訳じゃない、事に当たり、助言を求め、任務を与えて、任せれば良い。いかに上手く使うか、そこは今までどおりでいいのだ。)
彼らは、全てを決定しなくてはならない孤独から、いくらかは私を救ってくれるだろう。
(それに、悪いことばかりじゃない。あの・・・ダ、ダークエルフの3人からは信頼を得ていると考えてよさそうだ。高い教育を受けているようだし、是非とも味方にしたい。現地の者を指揮下に入れることも考えておかなくてはな。)
この地に存在する兵力を掌握し、指揮権を確立する、これは現在進行中で成果は出ている。その次は情報収集だ。タトラ女史が見せてくれた地図と彼女の説明によると、ここから南南西の所にオーレンベアク辺境伯の領都、ルアブロンの街がある。ルアブロンは港町で、クーアルド王国でも有数の貿易都市としてこの地方で最も栄えている街だそうだ。
(兵力をもってオーレンベアク辺境伯を降伏させたところで、民衆と意思の疎通ができない我々には統治など無理な話だ。)
占領した共和国内の軍政のことを思い出す。南部は静かだが、北部では抵抗運動が激しいらしい。戦線後方の治安維持に手を焼いていると聞いていた。ここでも同じように兵力で占領すれば、抵抗組織は必ず現れるだろう。事を察知した王国政府の対応も考慮しなければならない。隣接する貴族を含めて軍を動員するはずだ。そうなれば周りは全て敵になる。いくら技術的な格差があるとはいえ、今ある弾薬その他が尽きたときが最後になる。
(・・・駄目だ、先が見える。力でねじ伏せるのは下の下だな。我が一族の教えのとおりやるのが一番いい。 “誠意を持って臨み、誠意には誠意で応えよ。” これで一族は繁栄を得てきたのだ、これを基本でいこう。力は最後の手札だ。)
私たちの道徳や価値観がこの世界で通用するのかどうかは分からないが、私にはお手本がある。
(よし、やってみよう。)
私は全てを決定する身になって、一番最初の決定を私自身に対して下したのだった。
第91歩兵師団司令部
賓客居室 ダークエルフ族 タトラ
ホーフェンベルグ帝国伯爵と一緒に居たハインたいいと言う軍人に案内されたのは、彼らと会合した建物の隣に建っている建物の二階だった。質素な造りの部屋は綺麗に掃除され、窓側にはテーブルと椅子が三つ、反対の壁際には清潔なシーツと枕、掛布が整えられたベッドが三つ並んでいた。テーブルの上には水差しと白い陶器のコップが三つ置かれている。
部屋のドアを開けて私達を中へ通すと、案内してくれたハインたいいは一歩だけ中に入り説明を始めた。
「こちらのお部屋をお使いください。皆さんの私物は只今こちらへお持ちします。トイレは一階にあります、皆さん以外の者は使わないようにしてありますのでご安心ください。」
そこへ荷物を抱えた軍人、下位の兵士と思われる者達が私達の荷物持ってやって来た。私達がそれぞれ荷物を受け取ると、最後に入ってきた者が私達の剣を持って入ってきた。
「師団長閣下から、お返しするように言われておりますので、お受け取りください。」
『ありがとうございます、ハインたいい。』
そう言いながら私達は剣を受け取った。
「それから、この二階には皆さん以外の者の立ち入りは禁止してありますが、階段の下には見張りが1人つきますのでご了承ください。」
ハイン大いは申し訳なさそうに続ける。
「ここに女性は皆さんしかおりません。あとは全部男なのです、万が一ご無礼があってはと師団長閣下が憂慮されまして、見張りを付けることになりました。決して皆さんを監視する目的ではありません。」
『じょせい・・。あ、なるほど源人族の女のことですね。承知いたしました。伯爵閣下のお気遣いに感謝致します、とお伝えください。』
「はっ。ありがとうございます。なにかご用がありましたら、見張りの者に声をお掛けください、従兵が参ります。」
『分かりました。』
「では、しばらくしましたら夕食をお持ちしますので。これで失礼します。」
ハインたい尉は静かにドアを閉めて立ち去った。
私達が窓のカーテン越しに外を見ると、ハイン大尉が先ほどの建物に入っていくのが見えた。私が椅子のひとつに腰掛けると、妹分のテトラが隣に腰掛けた。
【サレーラお姉様。】
【サリエ、まだ早いわ。タトラと呼びなさい。】
【念話なら大丈夫ではありませんか?】
【彼らは魔法が使えないみたいだけど、本当かどうか分からないわ。】
【でも、ここに来てから私達以外の魔力を感じませんでしたが。】
【そうだけど、魔力を絞るのを忘れないで。】
【はい、お姉様。】
テトラことサリエが頷き、ヤトラがもう1つの椅子に腰掛ける。
【お姉様、これからどうするんです?】
【まずはラウリの傷が治るのを待つしかないわね。】
【まさか、追手を向けてくるとは思いませんでしたね。】
サリエが呆れた様子で言う。
【ええ、油断したわ。】
【キルネスの奴、お姉様をよほど気に入ったのよ。】
ヤトラが意地悪く笑いながら言う。
【フィーラ、やめてちょうだい、寒気がするわ。】
ヤトラことフィーラを軽く睨みながら
【でも、ここに居る限り安心できそうね。】
そう言うと2人は同意した。
【ほんとに異世界の軍勢なのでしょうか。】
【それしかないじゃない、私達が知っている帝国と言えば、遙か北にあるナルヴァイク帝国だけよ? こんなところに軍勢がいる訳ないわ。それに、あの兵士達の規律正しい振る舞いをみたでしょう? 私達を見て口笛ひとつ吹かずに離れた所から見ているだけ。こんな軍勢どこを探してもいないわよ。私達が知っている軍勢なら、今頃こんなもてなしを受けている代わりに、鎖に繋がれて慰みものされてるかも。】
フィーラが一気に言うと、サリエは少し引き気味になりながら頷いていて、私も同意見だった。
盗賊に襲われた時、魔法を発現させる時間が無くて剣を取ったが、妹たちはあまり使えない。ダメかと思った時、今まで聞いたことがない、何かが弾けるような音が遠くから聞こえたかと思うと、盗賊が次々に倒れ、私達は救われた。その後現れた見たことも無い格好をした兵士達に囲まれたが、救ってくれたのが彼らだということは分かったし、捕らえるのではなく話がしたいと言われたので、大人しく従ってここまで来た。もっとも、手に持っていた槍の様な物と何か分からない工具の様な物が武器だと察しがついたので、従うより他になかったが。
【安全になったのはいいけど、捜し物は見つからないし、商売は大損だし、先行き暗いわ。】
フィーラが両手を頭の後ろで組んで呑気な様子で嘆いた。
【そうね、捜し物はともかく、仕入れた商品を売ることができなかったのは困ったわね。】
私がそう言うと、サリエが眉をひそめて
【私達が村を出たのは、捜し物を見つけるためですが・・。】
【それはそうなのだけど、文字どおり雲を掴むようなものだから。私としては私達の生活の方が優先になってしまうわ。】
【それでもようやく手掛かりを掴んだと思ったら、お姉様が強欲な商人に見初められてしまったせいでご破算になってしまって。】
【フィーラ、私のせいではないわよ。】
【お姉様の美しさのせいですわ。】
【それはそうかもしれないわね。】
【ふたりとも真面目に考えてください。】
ひとり取り残されたサリエが割って入ってきた。
【サリエ、冗談よ。ラウリの怪我が治るまでしばらく時間がかかるみたいだから、その間はここでお世話になりましょう。ルアブロンのことも気になるし。】
【ルアブロンでなにかありました?】
サリエが不審げな顔で聞いていた。
【まずはキルネスの態度ね。あんなに大きな顔をできる立場じゃなかったはずよ。4人も追手を差し向けたり、何かおかしいわ。】
サリエがなるほど、と頷き、フィーラは私が話す続きを待っていた。
【それと、街の広場にオーレンベアク辺境伯家の旗と、ザロモン子爵家の旗が並んで掲揚されていたことね。】
【・・ああ、なるほど。言われてみればそうでしたね。】
サリエは理解したがフィーラは不思議そうな顔をしたままだ。
【ザロモン子爵はオーレンベアク辺境伯の家臣よ。主君と家臣の旗を並べて掲揚するなんて普通しないわ、家臣の旗は一段下よ。】
【ザロモン子爵は辺境伯様の縁戚ですが、それでもおかしいですね。】
サリエがすらすらと答えているが、フィーラはようやく理解したらしい、うんうん頷いて話に合わせていた。
【でしょ。あの伯爵様は食料を手に入れたがってるから、必ず辺境伯様と接触しようとするはずよ。その時に私達が必要になるでしょう。それに】
サリエとフィーラが私に注目する。
【私は彼らのことをもっと知りたいの。とても興味があるわ、異世界の軍勢に。】
私がそう言うと、2人はまんざらでもない顔をして頷いた。
【貴女方も同じ考えなら、「答え合わせ」をしましょう。】
私がそう言うとサリエが
【もうすぐ食事が運ばれてくるのではありませんか?】
【そうね、今回は量が多くて時間がかかりそうだから、食事の後にしましょうか。】
【多いと疲れるから賛成。】
フィーラの一言で「答え合わせ」は食後に決まった。
その後、少ししてドアがノックされハイン大尉が入ってきた。大尉が言うには、明日ラウリ、ではなくセトラを見舞った後、軍勢の宿営地を案内するという。もちろん快諾して礼を言うと、ハイン大尉は退室し、入れ替わりに夕食が運ばれてきた。テーブルに並べられた食事は、白パンと肉の煮込み料理に赤色のワインが1杯付いていた。家庭料理のような食事とほどよい強さのワインは、私達の心と体を満足感で満たしてくれた。その後3人で「答え合わせ」を済ませると、さすがに疲労を感じたので早めに床に就くことになった。
補給処「蜂の巣箱」
第91歩兵師団司令部主席参謀 ブリンクマン中佐。
日付が変わった翌日の午前9時15分。補給処の事務所前に「将軍の丘」へ移動する準備を終えた部隊と補給物資を積載した輸送段列の車列が整列した。車列の先頭は「猪1」、その後に装甲中隊「ピルツ」の2個装甲小隊、高射砲中隊、輸送段列、殿に装甲中隊「ピルツ」の2個装甲車小隊。騎兵中隊「アイクマイアー」は輸送段列の左右に1個小隊ずつ側衛として平行して進み、降下猟兵中隊は後続で徒歩移動することになっていた。
事務所でテッタウ少佐と最後の確認を済ませ、淹れて貰ったコーヒーを口に運んでいると、シュラーガー少佐が入ってきた。
「ブリンクマン中佐殿。」カツン!
「シュラーガー少佐。」
コーヒーカップを下ろして向き直る。
「お願いがあります。捜索を継続させて欲しいのです。」
「周囲の部隊捜索をですか?」
「はい、もしかしたらという考えが捨てきれません。規模は縮小し、装甲車2台のみで、あと10キロ拡大して行いたいのです。」
「分かりました、許可します。」
「ありがとうございます。」
厳つい顔に安堵の表情が浮かぶ。
「私も気になっていましたので。」
そう言うと、シュラーガー少佐が微笑んだ。
「やはり、水源が無いというのが気になってしまいまして。」
「確かに。ただ、これで最後です。追加の10キロ圏内の捜索をもって終了してください。何かありましたら報告をお願いします。」
「了解しました、中佐殿。」カツン!
「では、そろそろ出発します。」
そう言うと、残りのコーヒーを流し込んで、軍帽を被る。
「そう言えば、連絡道路の方はどうですか?」
「それが、その、予定より早く終わるらしいです。」
テッタウ少佐の答えは歯切れが悪かった。
「早く?」
「ええ、実はつい先ほど報告を受けたのですが、その、現場で奇妙なことが起きているそうで・・。」
「奇妙なこと・・とは?」
「それが、伐採する予定の木に印を付けておいたら、今朝になって移動している、と言っているんです・・。」
「・・・・・・・。」
「昨日、作業工程として、伐採する予定の木に印を付けたそうなんです。その後夕暮れまで作業をして、今朝現場に戻ったら印を付けておいた木が移動していて、整地だけで済むようになっていると・・。」
「なにか、他に変わったことは?」
「何も聞いていません。兵達は気味が悪がっているようですが、とにかく開通を優先しろと言っておきました。見張りも増やすように。」
「それで結構です。しかし・・・。」
私が黙り込むと、シュラーガー少佐がぽつりと
「森の妖精でも居るんですかな。」
と全く似合わないことを呟いた。その事に驚いて見やると
「・・森を、木を守るために移動させた、というのはどうです?」
「ええ、そうですね・・。」
いたずらしているような顔をしながら続けるシュラーガー少佐に、テッタウ少佐がかろうじて答えた。
「それなら、我々は歓迎されているということでしょうか。」
私がそう言うと
「少なくとも敵意は無さそうですな。」
シュラーガー少佐はさらりと答えた。
(この適応力は古強者のなせる技なのか?)
そんな事を考えているとシュラーガー少佐が続けて
「とにかく、印を付けるだけで伐採作業が省けるなら、まずは予定地に生えている木に印を付けさせ、一晩経ってから整地させるようにしましょう。」
「そうですね、テッタウ少佐、そのように命じてください。」
「了解しました。」
シュラーガー少佐は深く考えることをやめたようだった。
(考えたところで分かるはずがないしな。)
私はシュラーガー少佐に倣うことにした。
「テッタウ少佐、工兵の運用について司令部から別命があるかもしれません。あちらは防衛施設がほぼありませんので。」
「了解しました。逐次連絡を頂ければ対処します。」
「願います。」
軍帽の鍔に右手の指先を当てると、テッタウ少佐とシュラーガー少佐が踵を打ち合わせた。カツン!!
「道中お気を付けて。」
「30分もかかりませんが、では。」
笑いながら挨拶を交わして事務所から出ると、2人も続いて出た。事務所の前で待っていた「猪1」がエンジンをかけると、後続の戦車がエンジンを始動させ、それは車列の後方へと連鎖していった。補給処がエンジンの轟音に包まれた中、乗り込んだ「猪1」から2人を見ると、改めて敬礼を送ってきたので答礼を返した。立ったまま右腕を上に伸ばして大きく上下に2回動かすと、それを合図に「猪1」がゆっくり発進し、続いて車列が動き始めた。「城館」へのルートは連絡道路の工事現場を併走することになっている。
(物資を満載したトラックがスタックしなければいいが。)
補給処の門を出ながら森の路面を心配した。工兵中隊のラスナー中尉は大丈夫だろうと言っていたが、念の為、先に戦車を走らせて路面を確認しながら進み、軟弱な箇所があれば避けて通るよう助言を得ていたので、そのとおりに実行していた。
(来たときと違って最短距離を進むし、大丈夫だろうとは思うが。)
度々後ろを振り返りながら森の中をゆっくりと進んで行く。もちろん先ほどの報告の事も考えていた。心なしか森の中が明るいように感じられる。
(敵意がない、その言葉だけで明るくなっていると感じるんだな。)
そう思っていると、助手席のカウフマン曹長が空を見上げて見回している。
「どうかしたか、曹長?」
「いえ、来たときよりも森の中が明るくなっている気がしたので、なにか変わったのかと思いまして。」
「そうか、俺もそう思っていたよ。」
私の心中を知ってか知らずか、カウフマン曹長は振り返って微笑んでいた。
そのまま進んで行くと、右へ約100メートル離れた所に作業中の工兵部隊が見えてきた。ブルドーザーが土をならしているようで、排気煙を上げながら動いている。その先では20人ほどの兵達が白い紐を持って進み、1本ずつ木に巻き付けていて、周囲には小銃を肩に掛けた兵士が何人か警戒していた。
(テッタウ少佐からの指示が届いたか。)
作業している中にラスナー中尉を見つけると立ち上がって視線を送る。向こうも気がついて、立ち止まって敬礼してきたので答礼を返す。右手を下ろした後で、大きく頷くとラスナー中尉も頷いた。工兵達の横を通り過ぎる時カウフマン曹長が
「工兵の連中仕事が早いですな。これなら明日明後日には開通でしょう。」
と私を振り返って言ってきた。
「ああ、援護があったらしい。」
「援護、ですか?」
カウフマン曹長は不思議そうな顔をしていたが、微笑むだけで済ませた。
この後、全ての作業が終わって一息ついたときに、カウフマン曹長がやって来て援護について聞かれたので、ありのままを話してやると
「ここはそういう所なんですな。」
とそれだけだった。やはり古強者はこういうものなのだ、と理解した。
誤字報告ありがとうございました。




