2-23 権田原の協力
翌日俺はマンションの事件を調べるために早速現場へと向かった。俺はこの事件について何も知らないしまずは情報を集める事から始めなければならないだろう。
「うーん、まあ……そりゃこんな感じだよな」
けれど事件現場の周辺は警察によって封鎖、ブルーシートで覆われて近付く事も遠目で見る事も出来なかった。わかってはいたが当然これ以上近付く事は出来ない。
平和な、というか人口が少ない鳥取では強盗殺人は滅多にないのだろう、報道関係者や野次馬も結構集まっている。この場で俺に出来る事はこうして好奇心旺盛なモブ役としてニュースの背景として出演する事だけだった。
だがどうしよう。これではとてもではないが調べる事も出来ない。ここは大人しく別の場所を捜索してみるか?
「おう、早速来たみたいだな」
「ん? って権田原さん」
「よう」
「どうもですー」
しかし途方に暮れていると昨日俺を取り調べた権田原さんがお供のガリデブコンビを連れて現れる。そいつは俺を捕まえたあの警官たちだった。
「ああ、チャラくて細いほうが茶町巡査部長、デカいほうが西品治警部補だ。どっちも県警本部の所属だぞ。君の無実を証明してくれたんだから感謝してやりな」
「はあ、どうも」
権田原さんはそう促したのでどうにも納得がいかない点はあったが俺は取りあえず二人に感謝する。けど結果的にアリバイを証明してくれただけでそもそも俺は犯人候補として疑われてたんだよなあ。
「おう、お礼の品はこっそり渡してくれよ。メシでもギフトカードでもいいけど」
「はは、規則違反だって」
二人は親しいのか茶町の問題発言を西品治は笑いながら注意する。同期とかそういう関係なのだろうか?
「つーかあなた警務部長ですよね。こんなどこにでもある強盗殺人なんて下っ端に任せたほうがいいですよ。わざわざ現場に来るなんて暇なんですか?」
「暇じゃあない。ただお前も知っての通り今回の犯人はあの連続幼女殺人事件の荻野弘を起訴した検察官の今在家だ。そりゃ気にはなるさ」
「なるほど」
今回の事件が仮に冤罪だとしてもそうでないとしても連続幼女殺人事件とは関連性はないとは思うが権田原さんはあの事件を調べているのでトップ自ら来たというわけらしい。わざわざご苦労な事で。
「しかしちょっとここで話すのもなんだな。場所を移そう。こっちだ」
そして彼は人目を避けるために規制線の内側に入っていった。それはつまり俺もそっちに行っていいという意味なのだろうか。
「え? いいんですか」
「ああ。ほらとっとと来い」
「わ、わかりました!」
その真意はわからないがこれは願ってもないチャンスだ。上手い具合に交渉してマンションの殺人事件についていろいろと聞けるといいんだけど。