おはよう。
土曜日の朝。
綾の部屋で、セミダブルのベッドに眠る2人。
平凡な朝の、何でもない日常の会話です。
無機質な目覚ましの音。
ぼんやりとした意識がだんだんと冴えてくる。
目の前のカーテンの隙間からか漏れた光に、綾は思わず目を細めた。
腕をぐんと伸ばして頭の上に置いてある目覚まし時計に手をかける。
デジタル時計には「4月6日(土)AM7時」の文字。
「んん……。」
不意に背後から漏れた声が綾の鼓膜をくすぐる。
「あや……?」
もう起きるの?、と寝ぼけ声でまいが尋ねながら、寒そうにもぞもぞと体を丸めた。
「ん。ほら、まいも、起きるよ。」
綾はそう言いながら、ベッドから体を起こそうと、腕に力を込めた。
「あや、まって……。」
まいはそう言いながら、綾の身体に背後から手を回した。
起き上がろうとしていた綾はあっけなくベッドの中に戻された。
「ちょっと、何してるの。」
綾は、まいの手から解放されようと、じたばたと体を動かした。
「せっかく初めて綾のお部屋でお泊りしたんだから、もうちょっと一緒にいようよ。」
まいは、回した手にぎゅっと力を込めた。
「綾の髪、私と同じ香りだよ。」
そう言いながら、まいは、綾の背中にこつんと頭をくっつけた。
同じシャンプー使ったからそりゃそうでしょ。
「ねぇまい、今日一緒に出掛けるんじゃなかったの?」
そう言いながら、綾は再度脱出を試みて、まいの腕をつかんだ。
「ねぇ、あや。こうするともっとあったかいよ。」
スルッとあやのパジャマの隙間に手を入れる。
「ちょ、なにして……。」
慌ててまいをつかむ手に力を込める。
しかし、まいの手はびくともしない。
綾は諦めたように、つかんでいた手を緩めた。
――ピピピピッ。
不意に鳴り響いた目覚ましの音に二人はびくっと体を縮めた。
「びっくりしたぁ……。綾目覚まし止めてなかったっけ。」
目を真ん丸にして尋ねるまいに、今度こそ起ベッドから脱出した綾は、一回だけじゃ起きれないと思って……といたずらっぽく微笑んだ。
「まい、明日お休みでしょ。今日も泊まっていいから、早く起きてお出かけしよ。」
綾はそう言うと、体をかがめて、まだベッドに横になっているまいの前髪を手でかき分け、その額に唇を落とした。