そがれていく意識
こんばんは、
変わらず好きで書いている長編小説です、
かつては小説家になりたいと思っていた。でも大人になって小説書かなくても生きていけるようになった、
(なってしまった)
でも描きたいことを書かせてくれる場所っていいですね、
この調子で小学生の頃から描きたかったことを書いていきます、わ。
わ、とか書くと、悪役令嬢的な何かも、いつか描きたいし、推しごとのことも書きたいです、
※
サナレスに、貴方は恋愛音痴だと指摘してきた師匠であるリトウの方こそが、サナレスは恋愛音痴だと思っていた。リトウは研究ばかりしていて、浮いた噂一つないから、きっと自分がリンフィーナに対して湧いた感情の機微になんて注目されないと思っていた。
ーー師匠であるリトウを、侮っていた。
「冥府は、魔力量が強いものでなければ統治できないんじゃないですか?」
リトウはさらに、アルス大陸における歴史を熟知していた。
「僕は昔からおかしいと思っていたんですよ。どうしてこの世界で魔女裁判なんてものが、行われていたのか、ずっと疑問だった」
リトウは続けた。
「僕達がいた世界でも、実は魔女裁判ってものがあったんですよねぇ。ヨーロッパーーつまりそういう地域の歴史をみると、いわゆる「魔女裁判」にかけられ魔女として処刑された人々が実在しています。中でも魔女裁判が激しく行われたのはドイツって国。約2万5千人くらい魔女として処刑された。」
「リトウ先生、地名を言い換えずともかまわない。私は異世界転移した時に、二人がいた国の歴史を全て頭の中に入れている。それに、あなた方の国の歴史も図書館で学んだ。神聖ローマ帝国のカロリーナ刑事法典(1532年)をはじめ、魔女裁判が行われた時代の法令には、魔女の処罰に関する規定が置かれていたと思う。魔女というのは、窃盗や殺人などの場合と同様に、刑法上の犯罪を行った者として処罰された。犯罪者ではなかったか?」
リトウはうなづく。
「その犯罪は、この大陸の神を作った歴史に通じていると、僕は思いました。実際にあった事例にみられる魔女の典型的な「犯罪」は、たとえば農作物や家畜に被害を与える、人を病気にする、時には殺害する、異性を誘惑するといった害悪を魔術によってもたらすことが挙げられたんですよ。でもこの世界でそれは、「犯罪」ではなく「神業」として伝わり、神々の氏族が誕生しているんですよね。ーーそれなのにこっちの世界で魔女裁判が起こったなんて、僕は常々おかしいと思っていました」
「それは私にも引っかかった点だが、歴史書には魔女ソフィアの力が桁外れだったから、畏怖の念から生じたと記述されている」
「こっちの世界ではね、不可思議な現象を魔女と認定された被告人との因果関係は、元々関係の無い自然現象であったり、一方的な言いがかりであったりするにすぎず、ましてや魔術によって引き起こされたはずがあるはずもないことで、断罪したんです。ーーでもこっちの世界では、逆に神として崇め奉った。それにーー、こちらの世界で魔女裁判と称して火刑に処されたのは、ソフィアさんだけではないでしょう?」
サナレスは記憶の中のアルス大陸における歴史書に記されたことを引き出すように思い出した。
「随分過去の記録だ。ーーリトウ先生が言うように、二人いるか」
「そうなんですよね。サナレスが過去の記録というだけあって、一千年に一人くらいの割合です。大陸歴を数える前を入れれば、三人いらっしゃいます。皆さん女性で、銀色の髪でした」
サナレスは歴史を頼りに政策を行うが、リトウのような歴史オタクではなく、彼の口から伝えられるその事実は、知っていても大した情報ではない。
「僕の世界で魔女裁判は、ほとんどいじめに近かった。何か理不尽な出来事が起こると、押し付ける相手が欲しかった。でもこっちの世界では、魔力は神格化されて奉られたのに、銀髪だけを虐げたのですよね?」
「ーーそうだ」
「その意味性を考えてみたんです」
リトウからの誘導で、想像もしなかった最適解が、サナレスの中で一瞬で構築された。
「こっちの世界は、冥府の安寧を維持するために、魔力を焚べる人間を、定期的に生贄に差し出す役割を担ってきたということか?」
「ーーおそらく、そうだと思います」
リトウが回答し、ヨースケがポンと手を打つ。
「焚べる呪力が弱まってきたら、異世界転生というか、こっちとあっち、あっちとそっちみたいな異世界を行き来する人間、この世界でいうところの渡り人が増えてくるわけだ」
「僕は一千年毎に呪力の強い銀髪の女性を魔女としてひとり焚べるとして、その呪力の高い低いもあり、前後三百年程度に異世界転生ーー、つまり渡り人が増えると仮説を立てています。そしておそらくはーー、男性では激しく逆らい、力で押さえつけることができなくて、呪力量の高い銀髪の女性をターゲットにしてきたんでしょうね」
とてもリンフィーナに、そしてソフィアにも聞かせられない内容だった。この場に二人が居なくて、サナレスは心底良かったと思う。
「そういった歴史から銀髪は不吉、そして呪力を素養している黒髪の血筋とも、ラーディア一族は決別していった。元は同じ氏族であったというのに」
リトウはそう付け加えた。
そしてさらに、彼はサナレスに向き合ってくる。
「この際、呪力を焚べなければならない冥府という課題をクリアする。その上で、古い風習をなんとか出来る方法を模索しませんか? いや、一番簡単なのは、魔女ソフィアの呪力が高いから、それを焚べるのが一番ですけれど、ーー僕もなんだか釈然とはしないし、そこにあなた達リンフィーナやアセスが巻き込まれていくのも違うでしょ? ジウス総帥は、それを思って、冥府に出向かれたのだと推察されます」
過去にサナレスは、父であるジウスを嫌っていた。
しかし月日が経ち、ジウスならそうするだろうと、自身の父の行動に胸が痛む。
「そうかもしれないな」
あるいは、それだけではないかもしれない。
「大神ジウスがそう決めて、ラーディア一族からお隠れあそばしたのであれば、それも神の気まぐれという歴史になる」
サナレスは海の底で開いた冥府に、ジウスの姿を見て、それを目に焼き付けた過去を噛み締めた。
「大神の決断に、私たちはいつも遅れをとって逆らえない」
従う他ないと思っていた。
そこにリトウは一石を投じてきた。
「そうですね。でもサナレス殿下、あなたはいかがいたしますか? 千年にひとり呪力の高い者を焚べないといけないのであれば、誰を焚べます? ジウス様は、所詮時間稼ぎに過ぎない。あなたには、相応の呪力はないでしょう? あなたがその席に座っても、ジウス様と同様、数十年の時間稼ぎになります。ジウス様も、サナレス殿下も、あなた方二人が冥府で犠牲になっても、せいぜい数十年の時間稼ぎになるだけだと予測できます」
いや、ソフィアの力を借りないサナレスであれば、数十年どころか、数日かもしれない。金髪で呪力ゼロのサナレスは自覚した。
「そんなあなたを、冥府まで慕って追いかけてくるリンフィーナ様とアセス様に、どう説明いたしますか?」
「時間が必要でしょうね」
ボソッとヨースケが合いの手を入れてきた。
「まずこの歴史上の不具合について理解してもらうにも時間が必要ですし、そこから感情論を説き伏せる説得する時間も必要ですよ。僕も時間がかかると思うのです」
「幸い、今なら二人を終える薬剤はある」
「ですね」
持って回った言い方をされるのが苦手なサナレスは、二人が言いたいことは結論から理解していた。その理由、エビデンスについても言わなくともわかっていた。
このまま彼らの策に乗らず、冥府に鎮座するのもいいと思った。だがリトウが言うようにサナレスの呪力は冥府を安定させるには十分ではなく、いっときの数十年を凌いだとしても、万全ではない。
「わかった。その余った薬剤で、私を二人が落ちた世界へ送ってくれないか?」
観念したサナレスは言っていた。
ただ思う。
神の子としての寿命で考えれば、数十年であれば一瞬だ。しかし人として生きるのであれば数十年は一生になる。
異世界転生した時に、サナレスは人の女子である塔子に出会った。
数十年でも、彼女はとても魅力的な時間を生きていた。
だからもう一度、違う世界を見て判断しよう。そう思ったのだ。
「はいはーい。じゃあもう一回死んできてねぇ。薬草とか面倒だから、死なない程度にどっか壊すのが早いんじゃない?」
ヨースケは観念したサナレスに、アセスとリンフィーナを異世界に送り出した場所に横たわれと案内した。
乱暴だ。
「時間的な差異はない方がいいから、急いで欲しいです」
リトウも急かせてくるので、サナレスは幾分迷いながら二人に従っていた。
本来であれば、この世界を完全放置することなんてサナレスにはできなかった。
油断というのはこのような慌ただしさから生まれてしまう。けれどその時のサナレスは気づけなかった。
リンフィーナとアセス、もう一度二人に会えるとしたら、何を話せばいいのだろうか。
そんな他愛ないことに意識の大半を奪われていた。歴史上魔女ソフィアに匹敵する呪力を焚べてきたということから、逼迫する現状についても意識を奪われていた。
「ではサナレス、お二人の後を追ってください」
背中を押されるまま、薬効を嗅がされ、サナレスは意識を失った。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




