あの、誰が、何が一番なのか
こんばんわ。
ちょっと専門外の、苦手な文章を書く仕事をしているにおで。
テキトーな、、というかキャラ一番で小説を書くのが楽しいです。
年齢的に、いつまで生きているかは微妙ですが、長編でも死ぬまでには完結を迎えうることを志します。
※
鋭い。
ラーディア一族の王立学院で教授職を長らく勤めているリトウは、サナレスの一挙主一動に逐一理由を想像し、突っ込んできた。
はなからリトウは、隠すことなどできない相手。そう認識するサナレスは、なんでも正直に話そうと観念する。
「私が何を見たのかなんて、冥府を超えてきたあなたは、ご覧になっていないのですか?」
そのように聞いてみた。
リトウは全然わからない、と至極真面目に首を横に振った。
「ーー僕は冥府を見ていないんです。和木君や、アセス殿は違うかもしれないけれど。でもあなたが一瞬冥府をのぞいて、何かに驚いてしまって、視線を逸さなかったということぐらい、なんだか容易に想像はつきます。ーーいったい何をご覧になったんです?」
「リンフィーナとその横にアセスが居たーー気がする。錯覚だったのかもしれないが」
サナレスはリトウにはかなり正直だった。
「あれは冥府のヨアズが座る玉座だと認識した。それなのに、そこにーーアセスが座って、その横にはリンフィーナが居た」
「なるほど、それであなたは、今回二人が冥府に行くことをお止めになったのですね?」
「そうだ」
サナレスはリトウと目を合わせることもできずに、自分が見たことについて能弁した。
「戻ってこられない未来を見たと思われているということですか?」
「そうだ」
しかしリトウには自分の感情で、僅かばかり隠している部分も看破されてしまう。
「それは、おかしな話です」
リトウは笑っていた。
「だって、そんな未来を本当に冥府の中に見たのなら、サナレス、あなたなら絶対になんとしても、もっと二人を引き留めたのでは?」
やはり隠せそうにない。
「いったい、貴方は本当に何を見たのです? 冷静なあなたが、自らの視力を失うまで、見届けたかった冥府、それは冥府の未来に何かしらの変化があった。あなたはそれを見届けてしまったんですよね?」
サナレスは画策するが、観念する他ないと想像する。
リトウが予測を口にする前に、告白した方がいいと思った。
「冥府の王であるヨアズの、次の後継者になっていたのは、わたしだ」
「は?」
「私は次の冥府の王になるらしい」
「なりたいんですか!?」
「そんなわけない!」
リトウは肝心なところで空気を読まない。相変わらずだ。
薄々、父であり大神であるジウスの寿命を感じ取っていた。例え老けることを知らなくとも、ジウスの力が弱まっていくことを、サナレスは知っている。
それはつまり、双子のヨアズの力も同様に弱まり、異世界と異世界をつなぐ接続部分に異変が生じているということだ。
次の統治者が決まるまで。
おそらく冥府の維持には魔女ソフィアの魔力が必要だったといったところだろう。1000年、彼女を冥府に閉じ込めていた。
「冥府を媒介する世界は無数にあって、そこで色々な天災や人災が起こる。それは冥府の統治者の力が弱るからだと考えられる。だから、異世界転生、異世界転移、そんな不可思議な現象が立て続けに起こっている。今の統治者、ヨアズはもう長くないんだろう。私は、そう推測している」
神妙にリトウは聞いていたけれど、また、サナレスがついた小さな嘘を見破ってくる。
「それでサナレス、今回リンフィーナとアセスに対して、異世界を越えることを許したことと、あなたのお考えにおいて、どう繋がるんです?」
「別に。私が冥府を背負うのであれば、冥府では視力なんて回復するだろ? だから、二人がどこに行こうと、仲良くなればいいと思っただけだ」
半分は本心だった。
サナレスが冥府に行くといえば、あの二人は二人とも合意して、一緒に冥府に押しかけて来そうだ。
「私は。この世ではもう、相当のものを失った。100年も生きてみろ。あなただって、相当のことに耐性がありますよね?」
「いえ。僕は冥府に耐性なんてないです」
間髪あけずに、リトウは言った。
「あなただってサナレス、私が知る限り、冥府に耐性なんてないでしょう? 無理しないで欲しいです」
サナレスは、発言するリトウに対して、視線を向けることはやめていた。
音は拾えるので、目が見えている所作をすることは不可能ではなかったが、リンフィーナが居ない今、必要ないと思っていた。
「えっと。サナレス、ーー僕はやっぱり、あなたの今の決断って、間違っていると思います」
そう言われて、サナレスはかつての師匠の言葉に耳を傾けているうちに、少しそちらを向いてしまった。
「人の生命って、もっと単純なものだと、僕は思います。誰かが誰かの犠牲になるなんて奉仕精神、よくないんですよ。ーー僕は死にたくないし、だから飢えたくないし。ーーでも僕だって大切な人はいますので、その人たちの命と、僕のくだらない命を比べた時、やっぱり正直僕は自分の命を犠牲にする方が正しいとか、思ってしまっていたんだけどね。堂々巡りみたいに。ーーそれでも、よくないんです。誰かが誰かの犠牲になるなんて、だめです。例えば僕みたいな命ですら、大切に思ってくれる人がいるんなら、ないがしろにしてはいけない。だから最後までちゃんと生きようって思っているんです」




