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冥府で見たもの

こんばんは。

仕事と勉強の板挟みで、爆死寸前。


それにストレスを覚える自分ではないのですが、

組織内で辞めたい人や、精神こじらせる人が続出しています。

管理職、どうしたものか。

        ※


「行ったのか?」

 陽が落ちた部屋で、サナレスは報告に来たリトウに背を向けたままの姿勢で問いかけた。


「よかったのですか? あんなふうにお二人を行かせて」

 良いか悪いかで問われても、サナレスの中で答えは出なかった。

 今のサナレスには、光すら感じられていないのだ。

 光を感じない自分にとって、理想の未来なんて見えるはずもなかった。


「結果なんてわからない。未来というのは、未来というだけあって、未確定な要素が満載なんだ」

「あのーー。おっしゃるように、未来というのはその言葉通りなんですけれど。ーーサナレス、あなたは少々、先を読みすぎていて、今のご自分の感情を殺しているような気がしてならない。もう少し、今のあなたの感情に目を向けるべきでは?」

 お節介なリトウは、この世に一人取り残されたような気分になっているサナレスに対して、苦言を述べてくる。


 しかしサナレスはもう、とうの昔に一人になっていた。

 今更また、一人になったところで、と思う。

「ーー人は、どれほど人脈に恵まれていたところで、死ぬ時は等しく、誰でも一人だ。財力や才能、功績だって、墓場ーーつまり冥府までは持っていけないだろう?」


 サナレスは過去に、最愛の女性ムーブルージェを失い、親友ルカを失った。彼らとの記憶を共有し、しっかり者の幼馴染であったレイトリージェは自害してしまい、サナレスだけが生きており、取り残されている。


「100年も生きた。老化しないのが王族であって、この世に生まれ落ちる。肉体だけが若い頃そのままに存在しても、精神は磨耗する。私は大神ジウスのように、1000年という時間を、生きることは出来なさそうだ」

 かつての友人達を見送ったのと同じように、今サナレスの大切な存在がこの世界から消失してしまった。リンフィーナとアセスの気配がなくなることは、サナレスの視界をさらに暗い闇に落としていた。


「あーー。弱気になっているなんて、あの時以来ですね」

 リトウに指摘され、サナレスは息を詰まらせた。


「大丈夫だ。私はーーあれ以来、ずっと生きることに対しての意味合いを平坦に保っている」

 感情の起伏など、コントロールできている。

 そう思っていた。


「いえ、サナレス。たぶんそう簡単ではないのかもしれないですよ」

 リトウはお湯を沸かしていた。


「あの時のようにスープなんて作れないので、今はカップ麺みたいなものなら、ご用意できますけど、食べません? 僕は食べます」

 あまりにも自然に、リトウから声をかけられ、サナレスは自身の感情が泡立つ。今、そこに生きているいる感覚を、もう一度自然に受け入れようとした。


「平気だろ? ーー平気だと思う。私は今も取り乱すことなく、生きている」

「はぁ」

 サナレスとリトウが初めて出会ったのは、サナレスが15、6の頃であり、その時からリトウは王立学園の先生で、サナレスにとってはずっと師匠という立場にいる。


「平気なように見せかけるのが、あなたはとても得意なようですけれど。私はあなたが動揺している様を、過去にも一度見ていますからねぇ」

「大丈夫だ。動揺していない」

「そうですね。あの頃よりは、確かにあなたは自暴自棄になっていない。水面深くに溺れて、大騒ぎはしなくなった。ーーでも、溺れて息ができない状態は、今も同じでしょう?」

 リトウは鋭かった。


 ムーブルージェを失った時の精神的なダメージ、その次にルカを失ったと知り、サナレスは過去に生きることを放棄した。そんなサナレスに希望を与えたのは、幼馴染のレイトリージェにルカの子供がいたと知った時だ。


 どうしても、彼女とルカ、二人の子を護りたくなった。

 そうしてずっと、過去の関係に固執して、生きてきた。


 ルカとムーブルージェ、その妹のレイトリージェの関係性を、サナレスはとても大切なものだと思って生きてきた。


 それなのに、100年経った時代において、レイトリージェが自害した。

 自分たちの関係を知っているレイトリージュエが亡くなった時、サナレスは自分が生きてきた時代に終止符を打った。


 新たに出会った、リンフィーナとアセスの存在を大切に思いながらも、また同じ過去が繰り返されるくらいなのであれば、せめて取り残されるのは自分以外であって欲しい。

 ーーそんな、浅ましいことを考えてしまった。


 リンフィーナに対して、異性として心惹かれながらも、彼女が幸せであるのであれば、ただそれでいいと思ってしまうのは、年齢ゆえの諦めというか、疲労感からくるものかもしれない。


 リトウはそれを完全否定してくる。

「僕ってね。あなたのようにモテたいのに、モテなかった人生なんですよ。それでも、人類は言葉という知恵を得たのです。求愛行動だって、本気ならば、本気の時に伝えないといけないって、僕は思いますよ」

 リトウが真剣な時は、必ずと言っていいほど、サナレスの前に何か科学的なものを突き出してくる。


 煙がモクモクと上がる、形が三角形のフラスコの底には紫色の液体がある。

 サナレスは視覚を失っていたが、リトウがサナレスに対して近づけてきたガラス瓶の細まった口から、毒素を感じた。

 反射的に口元を衣服で覆って、サナレスは咳をして、むせ返った。


「これは、何だ!?」


 少しだけ狼狽えるサナレスに、リトウは真剣に答えてきた。

「いえ、万が一の話ですけれど、リンフィーナとアセス殿が、我々のどちらかをも同行せずに異世界に行かれた場合、魔術具のエネルギーなり、魔法薬が余ります。ですから、お二人を如何様にも跡を追えるように手配したのですけれど。ーーですがそれ以上にサナレスは過去にお亡くなりになった方々に、遺恨を残したままなのですね」


 サナレスは言葉を詰まらせる。

「お前はーー。私は……何も」


「ええ。私たちは何も知らない。想像したまでのことです。核爆弾という性質を知って、それを冥府に投じたというあなたは、すぐさま冥府から遠ざかるべきだとわかっていた。ーーそれなのに、ご自身の目をつぶすほど、冥府で何かを目撃したのではないか? そんなふうに我々は想像しました」

 リトウがヨースケとあらかじめ打ち合わせした内容を、サナレスに伝えてきた。

「それで、サナレス。あなたは冥府で何を見て、何が理由で、自らを窮地に追い込んだんです?」

 

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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