来ない未来の夢を見ている
こんばんは。
明日大学院の審査論文の提出日でして、今晩、書きたい小説を書くのは、非常にイニシアティブを感じているんですよね。論文は何万字とか要求されるんですけれど、何万字でも何十万字でも、私は書くことに対して、言葉を喋るようなもんだと思っています。
言葉を喋ることが苦手なので、書く方が未だ良いぐらいです。
最近はAIに私の50音を登録し、AIに発言させることも可能になってきているので、しゃべりたくない私は誰よりも早く実行したい考えです。
あ、考えですとか。
論文に毒されている!
※
ソフィアはサナレスをその場に眠らせようとした。
魔女と言われた、魔術において天道士として頭一つ抜けたソフィアであれば、確実に遂行できるはずで、ソフィアはリンフィーナの片腕を持ち上げようとした。
それなのに、腕一本、上がらない。
『まだ、よ』
身体の支配権を、小娘リンフィーナに奪われており、ソフィアは瞬きひとつするのがやっとだ。
霞む視界に、金色の髪、エメラルドグリーンの瞳のサナレスが見えていた。
『あなたには、譲らない』
冥府を通り、サナレスを助けることに同意した途端、ソフィアはリンフィーナに身体の占有権を奪われた。
こいつ、まだこんなにも力を残していたなんてーー。
まんまとしてやられてしまった。
あり得ない。
ソフィアは地団駄踏みたい気分で、現実を疑う。そうした時、リンフィーナの右手に座るサナレスにばかり気を取られていたソフィアは、リンフィーナの左手にいるアセスという男の存在に気がついた。
リンフィーナはアセスに向かって左手を差し出し、その手を握られることで正気を保っているようだった。
ラーディオヌ一族の総帥であるアセスの呪力は侮れない。左手から自分の存在が、どんどん消されそうになるのをソフィアは痛感する。最初から二人は、ソフィアが冥府に行くことを表明するように算段していたのだ。
私だって、サナレスを助けると言っているのにーー。
「そうですね。あなたには十分役に立っていただきますが、私がリンフィーナ、彼女の身体を自由にあなたに譲るとでも?」
大きな声ではない。アセスは吐息のようにボソッと呟くだけだ。それなのに頭の中に地響きを鳴らすような存在感があり、アセスという術師の転生の才に、ソフィアは少したじろいだ。
「さぁ、サナレス。ソフィアという魔女を使えば、あなたの心配は杞憂に過ぎないと思うのですが」
「お前、ソフィアまで説得材料にするのか。それで、ーーおまえまた、冥府へ行くとーー?」
サナレスは大仰に両手を天に向かって広げ、ため息をついた。
これはサナレスが観念した時の合図であることを、リンフィーナは見逃さない。
「サナレス兄様、絶対大丈夫!」
サナレスは相変わらず表情を曇らせている。
「すまないがリンフィーナ、ーーおまえの絶対にはいつも根拠と合理性を感じないんだ……」
兄サナレスから常日頃思われていることに多少の想像はついていたリンフィーナだが、はっきり伝えられて打ちのめされ、下を向く。悔しさにグッと唇を歪める彼女の様子が面白く感じ、サナレスはクスと笑った、
「私は反対している。ーーだが正直、お前達を止める力なんて今の私にはないよ」
サナレスは見えていないはずの目で、リンフィーナとアセスが手を繋いでいることを見ているように錯覚する。
これはアセスの力を借りているだけだから、とリンフィーナは言い訳したくなりモゾモゾする。リンフィーナの感情が少し揺らいだ。
そうしてリンフィーナはサナレスの顔に右手を伸ばした。
表情が何一つ変わらないから、見えていないということを改めて認識した。それはとても悲しいことで、リンフィーナは口の端を引き結んだ。
「ごめんなさい、サナレス兄様。私はーー、まだ諦めきれない。サナレス兄様と気ままに一緒に旅に出て、いろんなところに行くの。兄様が病気になったら、私が薬師としてサナレスを治療する。一緒ならどこでもいい。それが私の夢だったから、兄様の目を治したい」
涙が滲む顔になっても、サナレスに悟られないように、嗚咽を漏らすことは堪えた。
反対するサナレスを眠らせるという行動に出ようとした魔女ソフィアとは違い、リンフィーナはちゃんとサナレスを説得したかった。説得できなかったとしても、せめて自分の気持ちを伝えてから行きたかった。
「決してーー。今日を最後にはしないから。まだ全然、私はサナレス兄様に恩返しもできてない。それにまだ、女としても見てもらってないんだから。今後もきっと、私はしつこく、サナレスに求愛するよ」
サナレスはじっとリンフィーナの言葉を聞き取っていた。
そして徐に、頭の上にポンと手を置いてきた。
「私が過去に、いついかなる時も、お前の行動を止められたことなんてあったことはなかっただろ? お前はいつも自由だ」
そうしてそのまま、サナレスはリンフィーナの頭を自分の胸に引き寄せていた。
アセスと繋いだ左手から力が抜ける。アセスはリンフィーナの指の端を離さないでいたが、倒れ込む形でリンフィーナはサナレスの胸に頭を預けた。
サナレスは何故かリンフィーナの頭の匂いを、すんと嗅いでいるようだった。
匂うのかな?
臭い?
恥ずかしかった。
サナレスに会えると思い、ちゃんと身支度をしてきたつもりだが、不安である。
「私のためを思ってくれているお前達二人には感謝している。だが、そうでなくとも未来という道は行く通りもあるのだよ。私たち生命体にとっては、受け入れられない未来というのは、死ぬことなのかもしれないな。だから私は、視力なんてものがなくとも生きていく覚悟があることを、私のために行動するというお前達に伝えておく」
サナレスはリンフィーナを左腕に抱えながら、アセスに向かって右手を差し出していた。
アセスはリンフィーナと繋いでいない方の手をサナレスの右手に伸ばした。
「そうですね。きっと私たちのこの行動は、エゴです」
アセスが俯き、リンフィーナの肩に額を乗せた。
サナレスとリンフィーナ、そしてアセスの三人が、物理的にこれまでにないくらい密着する。互いの体温を感じ取っていた。本来であれば三角関係である三人だ。それなのに表現できないほど満ち足りた気持ちになるのは、生命体というのが、所詮祖先を動物としていたからかもしれなかった。
ただ好きな人と一緒にいる。
温もりと会話、それが心地よくて安心した。
両方が揃う時など、もう三人の間には未来永劫訪れないかもしれないというのに、三人は今幸せだった。
ねぇ。
ーー恋愛とか、嫉妬とか、そんな感情がなければ、私たち三人は未来永劫一緒にいたい。
運命のような偶然で出会った。
そして魂の結びつきは強くて、願ってしまった。
どのような歪な関係でも、一緒にいたい。
ねぇ。
そんな気持ちに性別や王族の立場なんてあるのだろうか。
王族は一夫多妻制という括りが、当てはまるのだろうか。
ただ目の前にいる人を幸せにしたいだけなのだ。
ねぇーー。
三人が三人とも、束の間黙ったまま互いの存在を体温で確認していた。
ずっとこのまま居られるのであれば、恋愛という括りにすればいい。トライアングルのままでいい。
一緒にいたい。
自分たちは、来ない未来の夢ばかり見ている。
その時間は一瞬だった。
「行きます」
「兄様、絶対に兄様の目を元に戻すから」
サナレスは見えない目を細め、二人を送り出した。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
「戻った場所は、異世界か故郷」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




