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その場は弱肉強食

KYっていますけど。

人間社会において、空気は弱肉強食かもしれないですね。


私が所属する大学院で、場の研究をするくらいなんですねぇ。

(えらいわね)


でも場を制するって、

はぁあぁ???

って思うんです。


そんなのより、人間性かなぁと、私は思います。

人間性は、出会う人によって豊かにもなるし、自分自身の中で貧しくもなるし。


 魔女ソフィアは、晩餐の最中、得も言われない気持ちになっていた。

 それが嫉妬だという感情だと、誰も魔女ソフィアに教えてくれる人はいなかった。


 歴史上ジウスとヨアズ、かつて神の子の双子である権力者を、嫉妬心から狂わせたという歴史上の事実があっても、恋愛の経験がない魔女には、過去に罪悪感なんて皆目なかった。

 いくら二人がソフィアを妻にしようと争っても、ソフィアはどちらの異性にも興味を持てなかったのだ。


 ソフィアは幼少期から特殊な環境で育っていた。

 つまり人がいない銀の森で一匹の龍に育てられたソフィアは、そもそも人の感情を理解しなかった。


 ジウスから、ラーディア一族という神の一族に来ないかと誘われても、それを皇子からの求愛とは受け止めなかった。ソフィアは、人の暮らしには寒くて凍えることのない寝床があり、決して飢えない美味しい食事があると聞いた。ソフィアにはそれだけが魅力的だったにすぎない。

 困ったことに、性行為ですら、本能のままに行う肉体としての運動としか思っていない有様だった。だから1,000年前、誤解が誤解を呼び、魔女だと処刑されてしまった。


 そんなソフィアは今、初めて人らしい感覚を持ち始めていた。育て親である龍に対して見せた執着とは、また違う感情だ。


『リンフィーナ、おまえ死ね』

 その感情は彼女本人が驚くほど、どす黒く渦巻いている。

 リンフィーナと入れ替わりたくて、ソフィアは心の中で何度も地団駄を踏んでしまう。


 サナレスが視力を失う。

 こっちの世界において、それは一大事らしかった。


 冥府で1000年眠ったソフィアからすれば、人の肉体なんて、一瞬で吹き飛ぶ肉片でしかない。


 ソフィアが冥府で1000年ぶりに目覚めた時、サナレスと目が合った。サナレスの目玉は宝玉のように美しい。だからその貴重性を、人とは違う意味にはなるけれど、ソフィアは知っていた。


 ソフィアは眠っていた。

 そうして彼に、髪の毛を踏まれて起こされたのだ。


 あの時は単に起こされたことを迷惑に思った。そう思っていたのだけれど、今ではなぜかあの出会いには特別な何かがあったのかもしれない、という不本意な意味づけを自分の中で始めていた。


 ソフィアは、冥府においてまだ人の肉体を引きずっている、ーー端的にいうと死にかけているサナレスの生命力に起こされた。そうしてサナレスにくっついて現世に引き寄せられ、目覚めたのだ。


 1000年も眠っていたのに、よく起きたものだ。

 なんの気まぐれか、ソフィアはサナレスを気に入ってしまった。


 ただ目覚めた時、同時に悟った。

 こっちの世界で暮らす限り、ソフィアの魂が拠り所にする肉へんはなかった。

 魔女だと言われたソフィアの肉体は、1000年も前にあっけらかんと処刑台で燃え尽きていたからだ。


 生命体として活動するには、彼の血のつながらない妹(自分からすれば過去の自分が残した根っこ部分みたいな存在)に、こちらでの生活安定を求めるのが最善だった。


 サナレスは冥府に迷い込んだ。そうしてソフィアをこちら側の世界に目覚めさせた張本人なのだけれど、そのサナレスが失明だとかで、大変らしい。


 周囲は大騒ぎだ。ソフィアが肉体として依代よりしろにしているリンフィーナに至って、はメソメソと泣いている。


 目って、それほど大事だったかな?

 ソフィアは首を傾げた。


 目の負傷だけでは到底死なない。

 でも目を失ったら、食べ物を捕食するには不便そうだ。だがこの時代は飽食だし、そういった不安はあるのだろうか?

 ソフィアは考えていた。


 目というのは、単に人の体の一部だ。


 長く冥府に眠ったソフィアは、目を閉じる状態で眠っていても、常に冥府の情報を収集していた。目がなくとも、感情を揺さぶられることは幾度かあった。


 サナレスが冥府に迷い込んだ時もそんな感じだった。髪の毛を踏みつけられたと思いきや、急に愛しそうに見つめられる気配を感じた。愛しさを向けられる視線はくすぐったく、久しぶりに少し嬉しかった。だから目を開いてその存在を確認したのに、目が会った途端サナレスはあきらかにげんなりして人違いだと落胆し、舌打ちした。


 感覚でサナレスを捉えていた。1000年振りに目を開き、眩しさを感じた。目を凝らすと、自分を起こしたサナレスはソフィアに因縁がある双子にそっくりな容姿だった。


 あれ?

 ジウスとヨアズ、彼らではないようだけれど、似ているな。

 彼らも自分のことを、よく愛おしそうに眺めてくれた。


 ただ二人と出会い、魔女裁判にかけられた因縁を思い出した。

 湧いてくる感情は抑えきれない。


 この男は何者なんだろう?

 そうしてソフィアは眠れなくなった。


 ただ覚醒したのが、良いのか悪いのか。

 目覚めてからのソフィアは、退屈だけはしていない。


『私は冥府を通るから。サナレス兄様の目を、絶対に見えるようにするから』

 ソフィアのラバースの分身であるリンフィーナは、生意気にも名前まで付けられ、自己主張が激しい。そして無茶を言っている。


 うーむ。

 ソフィアはリンフィーナという生命体の中で考えていた。

 冥府などに戻りたくはない。だから今は静観しているのがいい。


 そう思っていたというのに、ソフィアにとって、感情よりも常に上回るのは生存本能だった。


 晩餐の席だった。

 ご馳走が並べられると知っては、黙っていられない。

「パスタが食べたい」

 前菜やスープなんて、なんの腹の足しにもならず、思わずソフィアは大好物を所望した。


「じゃぁ、パスタを」

 自分の左脇に座っているサナレスは難無く許可してくれる。

「で、何味がいい? 今日の食事はまだまだくるが」


 この後の食事について、量が多いことを情報として伝えられたので、ソフィアはほくそ笑んだ。サナレスは目を失っても、飢えることなんてなさそうではないか。


「じゃあパスタは、ニンニク多めのシンプルなので我慢する。野菜とチーズ、それから卵は添えてね」

 こっちの世界に目覚めてから、よく食べた卵いりのニンニクパスタを要望した。サナレスが首肯するので、安心して待つことができる。これを食べると、入れ替わった後にリンフィーナが嫌がるが、彼女も彼女で冥府に行くなどとソフィアが嫌がることを言っているのだから、お互い様である。


「サナレス、おまえは目が見えていなくとも問題ないようだが」

 そう口にすると、サナレス以外の者達が急に気づまりになって、口調がもごもごし始めた。


「リンフィーナ!?」

 最初に椅子から身を乗り出したのは、アセスという人だ。

 サナレスの恋敵らしい。


「心配ございません。ソフィアと入れ替わったのでしょう」

 動揺するアセスを椅子に座らせようとしたのは、リトウである。

 サナレスの親しい人だ。


 ふん、とふんぞり帰っているソフィアは、左横に食事を並べているヨースケと目があった。


「あーあ。この魔女、こっちの世界を随分舐め腐っている」

 ヨースケという男は、ソフィアを一瞥するなりリンフィーナが着座する椅子を、一瞬で引き倒していた。

 突如額から右目にかけて床に擦り付けられる形で、リンフィーナの体は傾いている。


 ちょっと。

 押さえつけられて、今にも人如きに制圧されそうになった。


「おまえちょっと前からリンフィーナじゃないだろ? おまえの扱いなんて、そんなもんなんだ」

 ソフィアは床に右頬を押し付けられ、みじろぎもできない。

 戦闘体制に入いろうにも、まだ満足に身体が動かない。


 その状態で、右のこめかみに冷たいモノが突きつけられる感覚があった。

 カチャという無機質な、それでいて重たい機械音を聞いた。自分のこめかみに何をあてられたのか、感覚的にソフィアは知っていた。これは、秒で命を奪われるやつだ。


「はるか昔の伝説の魔女なんて、なんの役にも立たない老女だろ? 年寄りってのはな、程良い時期に引退するもんだ」

 ヨースケの強さは瞬発力だと思った。

 ソフィアはリンフィーナと入れ替わる瞬間には空白があって、難無く彼にやられてしまう。


 それを静止したのはサナレスだった。

「ーー食事時に物騒なことはやめてくれないか?」


 目が見えないというのに、サナレスは誰よりも俊敏に、ソフィアの額に当てられた鉄の塊をヨースケから奪っていた。

 思わず、おまえ見えているんじゃ、と全員がツッコミたくなる。


 サナレスは奪った発砲する鉄の塊の一部を、人差し指でくるくると回して遊んでいた。


 サナレスの行動から一瞬遅れたアセスは、ソフィアとヨースケの前に割って入り、ヨースケの行動を制御していた。

「いえ、サナレスは見えていません。感覚で行動されているので、彼はーー、余計に危険ですよ、ヨースケ」

 アセスはそう言ってソフィアの身体であるリンフィーナに手を貸して、再び食卓に着座するように誘導した。


「サナレスは先ほど、私とリンフィーナが理論的に、冥府を形ばかりではあっても、超えることを承諾した。ーー今はそれだけで、私は満足しています。これ以上、何人なりとも場を荒らすようであれば、次は私がお相手することになりますね」

 淡々と言ったアセスに対し、ヨースケもリトウも、それ以上何も言わなかった。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

「戻った場所は、異世界か故郷」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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