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落ちそうになりながら

こんばんは。

本日出張帰りの乗り物の中、すきあらば書くスタイルを貫いています。

やっぱり好きだから続けられるんですね。


お付き合いいただいているかた、誠に感謝申し上げます。

        ※


「あいつが迎えに来た」

 サナレスが静止する腕を軽く払い、リンフィーナは舟の横手すりに身体を預けた。他人の身体のように戦慄が走り、それでもうごめく海に引き寄せら、背を折って海を覗き込む。


 急に波立って船が大きく傾き始めるので、危うく海に落ちそうになったが、その手をサナレスが握っていた。

「何をやっている。危ない!」

 サナレスを見つめ返すリンフィーナの瞳が、青紫にゆらめいている。


 眼球に熱を持つ感覚は、初めてではなかった。

 一つの身体に二つの魂。魔女ソフィアと入れ替わろうとしているのを感じていた。


「あれは、冥府からのお迎え。冥府の王ヨアズが来てる」

 ソフィアがこんなにも緊張しているのを感じるのは初めてだった。


 荒れ狂う海に、ラン・シールド一族の民が水面を跳ねる。

 人の上半身と魚の尾を持つ民が、ダイナミックに動きながら、船の周囲に集まってくる。

 ラン・シールド一族の王であるウィンジンに、救いを求めているようだ。


「これはーー」

 ウィンジンが彼の一族の半人半魚の声なき声を聞き取って、眉根を寄せた。


「このまま波に飲まれたら、転覆しますね」

 アセスの吐息まじりの声が聞こえた。

 そうなったら、また海中に逆戻りなわけだが、リンフィーナは自らの意思ではない言葉を発していた。


「海に潜るぐらいならどうってことはないが、あれに飲み込まれたら冥府行きだ」

 それって死ぬってことじゃないの!?

 リンフィーナは突っ込みを入れたくなったが、すぐ近くにいるサナレスもアセスもチラと顔を見合わるだけだった。


「またか……」

 同じている様子はなく、リンフィーナだけが心臓の鼓動をうるさく鳴らしていた。

 死ぬってことなのに、この二人はーー!


「今度は成人したあたりから始めたいな」

「ほう。私は赤子からでもいいが、非力な女体は遠慮したい……」

 サナレスもアセスも、おかしな経験値が高くなっているようで、リンフィーナは頭を抱えた。


「お前は男だったんならマシだな」

「え、あなたは女性に?」

 呑気なことに、一回死んで転生した後の語り場を形成しつつある、二人に恫喝する。


「私は、冥府に戻るなんて二度とごめんだ!」

 ソフィアが断固とした強い口調でそういった。

 私だって死ぬなんてごめんだと、とリンフィーナはソフィアに同調していた。


「衝突、避けられそうか?」

「すみません、ここは私の属性外におり、ほとんど力を発揮できませんよ」

 そうだった。アセスは地の属性の魔導士だった。器用なので大抵なんでもできてしまうが、対峙しているモノが冥府だなんて、部が悪すぎる。


「じゃあ、ウィンジン殿の方は?」

「海流を使って、あれを押し戻すことは不可能ですね。できることと言えば、海に潜って逃げることぐらいでしょうか。とはいえどこまで追いかけてくるのかーー」


 属性が水であるウィンジンですらお手上げのようだ。

 それにウィンジンは逃げられたとしても、自分達は海に潜ったとしてもあのスピードに追いつかれる。魚人化しているわけでもなく、水属性も使うことができない。おそらくは逃げ切れないだろう。


「どうする?」

 そんなことを言っている間にも、黒い波は迫ってきていた。


 焦る気持ちとは裏腹に、さらに背後に呑気な声が聞こえてくる。


「わーひどい揺れですね。気分が悪い」

 長身のシルエットの男は甲板から体を乗り出して、海に吐瀉物を吐いている。

 リトウ・モリだ。


「吐くんなら、外で吐けって部屋を追い出されちゃいましてね」

 涙まじりの顔は真っ青になっている。

 メガネを外しているらしく、彼は状況を把握できていないようだった。


「この愚かもの! 誰か早くなんとかっ……」

 ソフィアはリトウを罵倒する。

「あっと、ソフィアーーさん?」

 リトウはこちらを見て様子から今意識がある方をソフィアと理解したようだった。

「どうしたっていうの?」


 リトウの体はふわふわと揺れており、掴んでいなければ海に落ちそうなので、サナレスは右手でリンフィーナ(ソフィア)を抱え、左手でリトウの衣服の首を掴み上げていた。

「先生、危ないですって。でも良いところに出てきてくれましたね。私一人では判断に迷うので、ご意見を聞かせてもらえます?」

 口の端を少し上げ、サナレスは小さく吐息をついた。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

「戻った場所は、異世界か故郷」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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