最終手段って何だろう?
こんばんは。
本日も続きを書いております。
ちょっと仕事がキャパオーバー気味なのですが、
管理職、残業するなら、明日しろ、と自らに言い聞かせています。
語呂いいな。
※
サナレスは怒っているようだった。それはウインジンに対してではない。それにアセスに対してでもない。サナレスが本気で怒っている時は、おそらく彼自身に対してだと、リンフィーナにはわかってしまった。
幼い頃からリンフィーナは、サナレスが怒ると泣きたくなった。それは自分が責められていると勘違いしていた時期もあったし、サナレスから嫌われてしまうかもしれないと恐れていたこともあった。
でも最近になって、絶対的な兄であるサナレスにも、自分と同じ感覚があるということを感じるようになっていた。
人は、悲しいと怒る。
そして悲しいのは、自分と向かい合うからだ。
リンフィーナは立ち上がって、サナレスの左手に立って、彼の腕をギュッと掴んでいた。この船に爆薬を積むなんて策は、全くサナレスらしくはない。そんな奇策を実行しなければならないほど、サナレスにも覚悟があったということだ。
「くだらない」
サナレスは舌打ちしそうなほど、冷たくいう。
「ーーこの世界がどうなるかもわからない状態で、我々が争ってどうなります? 和平の象徴である協定に、今なんの意味があるかも、私にはわからない。形ばかりの握手なんてのも、どうでもいいことです」
深い吐息をついてから、サナレスはアセスを見つめ悲しげに苦笑する。
「お前のように、そもそも命を蔑ろにしている者には付ける薬なんてないんだ。ーーでも、自分の命を粗末にして、その後悲しんだり、それによって身を滅ぼしたりする人の気持ちを考えるぐらい、いい歳になったんだろ。考えろ」
アセスは黙って聞いていた。
アセスからぽつっとつぶやかれたのは彼の本心だ。
「現実は、ーー現実味を帯びない」
虚な瞳は、アセスの闇色の髪に影を落としていた。しばしアセスからは、このような闇を感じている。
リンフィーナは辛くなってサナレスにしがみつくが、アセスは変わらず無表情だった。サナレスは破顔して、情けない顔になった。
「そう、だろうな。それはお前が置かれてきた境遇が、お前をそうさせているのだけれど。その人の、人生における記憶はーー」
「その人にしか宿らない」
ウィンジンはサナレスの言葉の先を語った。
「1000年以上も生きながらえたから、私は私の記憶に執着する。サナレス、お前の言っていることは理解している。お前の感情にもーー」
「ありがとうございます!」
サナレスはわざとらしく、明るい表情でポンと手を打った。
「ということで、少なくとも我々は、一族の長として、命を粗末にしないということを約束しませんか?」
「魔女ソフィアが、我が同胞に牙を向かない限りは。ーー精霊に誓って約束しよう」
ウィンジンがサナレスにそう伝える。
サナレスは握手すらしない古い一族の総帥に対して、恭しく頭を下げた。
「アセスは?」
「私は、このラーディアのサナレスとリンフィーナに害をなさないのであれば、何も致しません。精霊に約束しても、私はきっとその約束を守りませんから、皇女であるリンフィーナに宣言しますよ」
かくしてこの木の葉のような小さな船が爆発するという事態は免れた。
ただリンフィーナは、自らの自制心の核を破ってまで、策を講じていたサナレスに問いたくなる。
「ねぇ兄様。この船にどれだけの爆薬を積み込んだの?」
「いや。アルス大陸には何の影響もないように風向きは考えた。でもさ、アルス大陸におそらくは足枷になる一族の方向に、後世にも残るような核の爆撃を考えていたから、実行されなくて良かったと思う。海から汚染されるしね」
「核って、何?」
「知らなくてもいいと思うけど、間違いなく人を大量に汚染するものだよ」
リンフィーナはよくわからないままだったけれど、サナレスがそれほど思い詰めて、核ってものを使わなくて済んで良かったのだと実感した。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
「戻った場所は、異世界か故郷」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




