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本音でいる意味

こんばんは。

すっかり書くペースが落ちていますが、楽しんで続けていますj。


そんな小説です。

でもここから、前書きでちょっとネタバレ。


この小説をさ、人工知能に続きを書いてと言ったら、それどういうふうになるかな。


AIに欠かせたいわけではなく、一応生命体である私が、続きをAIに託したらどうなるのかなって発想で、

別シリーズの塔子にバトンタッチする方向性は、そろそろ確率中です。



 目が覚めたときには、地上にいた。

 そして懐かしい二人の顔が瞳に映った。


 あれ、私、夢を見ていた?

 サナレス兄様がいて、アセスがいた。心地よい時間を感じたのは、二人があまりにリラックスしていて、サナレスは気に入った紅茶を飲んでおり、アセスは嗜好品のコーヒーを楽しんでいる。


 ここは……水月の宮なのかなーー?

 故郷である水月の宮は、リンフィーナの居場所の原点だった。そこで二人が一緒にいるような穏やかな気配があり、リンフィーナは目を覚ました。


 でも私の中には、ソフィアがーー。

 厄介な魔女ソフィアがどうなったのか?

 水月の宮であるはずがない!

 リンフィーナは寝ぼけている自分を叱咤した。


 夢の中で平和であると錯覚してはいけないことを再認識した。

 現状を把握しなければならないと思う。

 夢ならば、早く醒めろ。

 本当はずっと幸せな夢の中に浸っていたかったけれど、現実を受け止めなければならないと思う。


「サナレス兄様!」

 リンフィーナはそばにいて一番気安く手を伸ばせる存在の腕をギュッと掴んだ。


 記憶を遡る。

 自分がウインジンに直談判をしに行った場所に、サナレスは存在した。この状況を作り出しているのもサナレスだと、直感的にリンフィーナは思った。


「で、ウィンジン総帥は紅茶にする? 珈琲にする?」

 リンフィーナに掴まれた腕で、サナレスはリンフィーナを押し戻す。「落ち着きなさい」と制される。頭を撫でられ、リンフィーナは目を擦って視界を凝らした。


「そのように、ーー私は悠長にお茶をしにきたわけではない」

「いやいやぁ。この悠長さが大事なんです。リンフィーナには」

 サナレスはリンフィーナの額を指先で軽く弾いた。そして、あたかも水月の宮にいた時の環境を再現している。アセスがいて、ウィンジンは来客といった扱いだ。


「私の愛しい妹、リンフィーナだよな?」

 リンフィーナは寝ぼけた頭のまま、首を縦に振っていた。妹と言われ少しだけ心が痛むが、その痛みは今はおとなしい。


 徐々に感覚が鋭敏になってくると、リンフィーナは自分が揺れていることを実感した。海の上にいる。そこはそれほど大きくはない船だ、と悟ることになった。


 水月の宮のはずがない。

 それなのに。

 サナレスはここを水月の宮の空間に遜色ないほど安心させてくれている。


「サナレス」

 兄様とは言わなかった。そんなふうに呼びたいようで、呼びたくなかった。少しだけ心が痛かったからだ。


「私は、ーーリンフィーナだよ、妹の」

 けれど自分の出生というか、アイデンティティを明らかにするには、サナレスの妹だと伝える他なくて、リンフィーナは迷いながらサナレスの質問に答えていた。


「な? 彼女はソフィアではない」

「そうですね。ーーリンフィーナです」

 サナレスの言葉をすかさず肯定したのは、アセスだった。音楽のように声色が美しい。懐かしい声だ。アセスの方を見ると、また心がギュッと痛む。アセスは過去に婚約までした相手なのだ。


「だからラン・シールドの総帥、ウィンジン。あなたがご心配することもなく、アルス大陸の重士族の王族は、リンフィーナが変異していないことを共に確認しております。ここは引いていただきたい」


 サナレスは優雅な様子で紅茶を口元に引き寄せていた。

 そうか。

 リンフィーナはこの状況を演出し、リンフィーナの意識を確実にこの場に呼ぶため、サナレスが整えたものだと察知した。


 ウィンジンはとても納得している様子ではない。だから穏やかさの中にいても、リンフィーナはソフィアの存在を感じずにはいられなかった。ソフィアは彼女を廃する人に容赦なく、ウィンジンを常に警戒していた。殺気を殺しきれていない。かろうじて彼女が大人しいのは、サナレスの意図を汲んでいるからだ。


 もう……。サナレスは人(女)たらしだから、とリンフィーナの思考がモヤモヤして冷えていく。

「ウィンジン、引いても大丈夫だと思う」

 ぽろっと本音が口に出ていた。

 ほとんどため息と一緒に出た言葉だったけれど、ウィンジンはこちらに真紅の瞳の焦点を当ててきた。


「リンフィーナ、あなたがなぜそれを言えるのですか?」

 端的な質問にリンフィーナも考え込んだ。サナレスがソフィアをたらし込んでいるから、って言っていいんだろうか。悩む。

 どうやらソフィアはサナレスにだけは嫌われたくないらしい。それは不遇なことに一心同体になっているリンフィーナには手に取るようにわかっている。


「んーー。一つだけ言えるのは、もしウィンジンがサナレス兄様と揉めて、もしサナレスが傷ついたりしたら、ソフィアが理性的になれずに、何が起こるのかって、私にはわからない」

「ーー」

 ウィンジンは黙っていた。しかし、チラとアセスを見た。

「リンフィーナ、あなたの婚約者はアセス殿だと思っていたんですが」


 別の切り口で切り込まれた。

 ずっと黙って、珈琲をすすっているアセスのことはとても直視できない。

 内心穏やかではなかった。ぐさっと心臓がひと突きされたような痛みがある。


「ラーディオヌ一族の総帥であるアセス様は、私の‘元‘婚約者です。ですけれど今私がソフィアでないことと、なんの関係がありますか?」

 開き直って聞くことが、リンフィーナの精一杯だ。


 そこに、ずっと黙っていたアセスがリンフィーナを直視してきた。


 どくん。

 やはり心臓がうるさくなる。

 未練がないと言ったら嘘になるのだ。


 アセスはあくまでチラとこちらに視線を送ってきただけなのだけれど、リンフィーナにとっては全身見透かされたかのような衝撃があり、心臓が騒がしい。

 アセスは元婚約者。それ以上ではなく、それ以下でもないのだ。


「そう」と、アセスは吐息をついた。

 何もかもが艶めいて見える美しい存在が、リンフィーナの反応で苦笑した。


「あなたにそのように認識されているのであれば、私はもう一度、あなたに告白しなければなりませんね」

 アセスは微笑んでいた。


 もう。

 頭が真っ白になる。


「リンフィーナ、私はあなたを追ってここにいます。それはサナレスと同じ気持ちで。ーーそれに、ここにいるもうひと方だって、どういった個人的な思いがあるのか、私には、はかりかねます」

ご意見やコメント、ほんと受け付けていますので、どうぞ忌憚なく。

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