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いい時間

最近、ストレスが多い。


ストレスが多いとどうなるのかって言うと、小説を書くのが私の日課。

うえは無害なのですが、本屋に寄って、大量の本を買う。

それから推しではなくとも大量の一番くじを引く、という、オタクの王道に走ってしまう。


聖闘士星矢にSPY×FAMILY、4月は一番くじも飛ばしています。

後、4月5日にして買った本の冊数今日は28冊買ってきたけど、100冊は超えた。


やばい。

4月が早く終わらないと、部屋が本でいっぱいになってしまうのです。



        ※


 カメラから隠れる位置で、ヨースケとリンフィーナ、二人の間で極力俯いたままの姿勢を保った。ボソボソと会話するのは、リンフィーナなりにそうしなければならないと感じたからだ。

 この数日間で、どの音量であれば落札者である監視者に注目されないのか、二人で試してきた。


 大声で呼びかける。それは勿論反応があった。

 けれど二人の間に届く距離の会話であれば、監視者は反応してこなかった。


「昼食は来ないってことは確認した」

「やはりそれが目的なんですね」

 本当にお腹が空いたのかと思った。


「いや、別に本当に昼食が運ばれたってよかったんだ、もうじきリトウが目を覚ますからな」

「リトウ先生が目を覚ましたら、さすがに監視者に気づかれるんじゃ?」

「そうでもない」

 ヨースケはカメラから視覚になる手元で、何かを触っていた。リンフィーナにはそれが何かはわからない。けれど見たこともないものだ。


「こいつが起きるまで、準備が間に合わないんじゃないかと思ったが、何とか間に合った」

 ヨースケは突然立ち上がった。そして目にも止まらない早業で身体をひねらせながら飛び上がり、部屋の隅に取り付けられているカメラに、足蹴りを喰らわす。


 わっ!!

 絶対これ、バレるやつだ。

 リンフィーナは咄嗟に手で顔をおおったけれど、ヨースケは笑顔だ。


「ちょっと、絶対騒動になるって」

「しっ! 声はそのまま上げるな。カメラの角度は完璧だ」

 そう言ったヨースケは、勝ち誇ったようにリンフィーナに騒ぐなと指示をした。


「音声はそのまま向こうに伝わるけどな、カメラの画角を変えて、ちゃっちい作りだが一枚の画像を写すように仕向けている」

「画像ってなに? 絵みたいなもの?」

「いや、絵より性格だ。こっちのカメラの解像度は悪いみたいだし、音声認識も旧式だ。写真一枚で誤魔化せるだろ。数時間、ーーあるいは数十分なら」


 ヨースケは今まで大人しくしていたのが嘘のように、のびのびと長身痩躯の身体を左右順番にほぐしている。首を左右に曲げるのはわかる。それに肩を回すのもわかる。けれど右腕を前伸ばした時に左腕を交差して固定したり、その逆をしたりという動きは見たことがない。


「変な動き」

「ほっとけ。この時代じゃ運動前の効果的なストレッチなんてなかったからなぁ」

 リンフィーナの感想に、ヨースケは軽く笑った。


 そして。

「起きろ、リトウ」

 ぼそっとそう言うと、ヨースケは再びリトウが眠る卵を蹴り上げた。


「あのっ! 乱暴にしたら、一生目覚めなくなるとか、確かそんなこと言われてたよね。リトウ先生、大丈夫!?」

「リトウが眠ってから、レム睡眠、ノンレム睡眠、そのたの睡眠の周波を計算した。そろそろ起きれる時間だから大丈夫だ。殺すぞこら! 起きろ」

 そう言ってまた、ぷよぷよした半透明の卵のようなものを蹴り上げる。


 何度かそうしてヨースケが暴れていると、リトウの卵に絡みついていた透明のチューブと言ったか、それがリトウの身体から離れ始めた。


 同時にリトウの目が徐々に開いたのを二人で確認する。

 眠そうな眼差しだ。


「母さん?」

 開口一番リトウはそう言って、ずり落ちかけたメガネを鼻に戻す。

 リトウは随分童顔だった。長身で、背筋が曲がっているし、彼の知性から落ち着いた印象を受けていたが、リンフィーナはこの時初めて、リトウの目がとても大きいことを知った。


 卵の蓋が開いて、相変わらず半分だけメガネがずり落ちたまま、リトウはぼうっとしている。そして彼の大きな瞳からは涙が溢れ、素っ頓狂な顔をしてこちらを見ている。


「しっかりしろ。どんないい夢を見ていたのかは知らないが、お前を産んだ覚えはねぇよ」

 ばちっ!

 ヨースケはリトウの頬を両手で挟む。


 音からして、かなり痛そう。

 リンフィーナは思わず目をつむった。

 

「こっち、見えてるだろ? ちょっとやばいんだから、さっさと起きろ」

「ああ、合宿か? わかった起きるってば」

「ーー違う」


 リンフィーナの目には、二人は親しい友人同士としてうつっていた。

 ヨースケがリトウの髪の毛を引っ張って、卵の中から引き摺り出している所作ですら、どこか慣れ親しんだ愛情のように感じてしまう。


「時間がないんだ。音量は最小。早く起きろ、天才!」

「君が僕を褒めるなんて、ずいぶん珍しいよね」

 リトウは眠そうな目をこすりながら、腰に手を当ててゆっくりと起き上がった。そうして自分たちが閉じ込められている部屋の中をざっと観察すると、にっこり笑った。


「確かに、いい時間になったね」

 リトウはそう言った。


 

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

「戻った場所は、異世界か故郷」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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