ずらかる
こんばんは。
本日もほろ酔いで書いている小説です。
だからちょっと、次の日や、またその次の日に読み直し、言い回しや誤字脱字を訂正しています。
これ、プロじゃないから許される醍醐味だと、ほくそ笑みます。
好き勝手に書いています。でも読んでくださる方に誠意を見せたくて、後日振り返りをして書いております。
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滞在して、七日目の朝を迎えようとしていた。
「退屈って、拷問だよな」
まだ陽は登りきっていない。いつもなら会話すら交わさないヨースケが、ぼそっと言った。
え?
一瞬自分に話しかけられたのだと思えなかったリンフィーナは、ただ少しだけ顔を上げた。
もしかして今、私に話した?
ここ数日、ヨースケに対して、リンフィーナはかなり心を砕いてきたつもりだった。だがその大半は、彼の合理性によって片付けられるか、あるいは無視されるかという顛末になっていた。
だから七日目の朝に彼が発した言葉は、到底自分に対してのものではないと認識したのだ。
「おいっ! 死んだのか!? ーーそれとも無視か、こら!?」
無反応でいたリンフィーナに対し、ヨースケは珍しく声を大きくする。聞き間違いだろうか、とさえ思った。思い返せば3、4日、彼と言葉すら交わしていない。
「ーーえっと! 生きています!」
とりあえず自分にかけられた言葉であると感じたので、リンフィーナは答えた。
「今日で7日経ちました」
「言われなくともわかってる」
ヨースケの言葉の抑揚には感情がないというのに、なぜか不機嫌であると、リンフィーナは受け取っていた。
病気の進行具合も気になって、リンフィーナはかなり憔悴しきっていた。
うとうとしては、リトウ先生の無事を確認し、食べては寝るだけ。そこに何の生産性も、社会活動もない。会いたいと思う人にも会えない。
そして、リンフィーナは自分が何らかの病にかかっているのだと思うと、憂鬱でしかなかったのだ。
「今日が期限だな」
イライラしているヨースケは言った。
「期限って、何の?」
7日も何の進展もないまま、狭い場所に閉じ込められた。だからリンフィーナには、にわかにはヨースケが言っていることが理解できない。
「7日なんだよ、だいたいこの馬鹿が目を覚ます頃合いだ。それからーー」
ヨースケが言い終えないうちに、いつもの日常が始まった。
「朝の朝食でございます」
ホログラムの落札者が、ぼこぼこの、給食という名の貧しい食事を運んできた。
ヨースケはふん、と置かれた食事を眺めていた。
暴れる気はなさそうだった。けれど彼は、座り込んだままの姿勢で、長い足を銀のトレイに軽く当てる。
「落札者のあんた、この量じゃ、足りないんだけど」
ヨースケが言った、
朝食なんて、ずっと食べていなかったというのに、ヨースケはいったい何を言っているのだろう。思考を逡巡させるリンフィーナと、落札者のホログラムの気持ちが一致した。
「朝食は、あなた様はいつも残されておりましたが? データをとっております」
「データだ!? 足りないと言ったら、足りない。私の身長体重に、この食事量は足りているか? そっちのデータはとっていないのか?」
ホログダムは考えている。
「いえ。ここ7日間と6時間ばかりの間に提供し、食べていただいた栄養を考えると、貴方様が拒否されたので、足りていません」
「だろ? 不足しているんだ。だから今から、もう少し摂取したい」
ホログラムは、納得した。ぞんざいな言い方だったけれど、ホログラムには感情はないようだった。
「承知いたしました。それでは不足分の栄養を、今日から配給できるようにいたします」
「そうしてくれ」
ヨースケは応答した。
「夕食から対応いたします」
「栄養が足りない。昼食から対応してくれ」
「ーー承知いたしました。ですが本日は対応しかねます。本日のプログラムはもう変更できませんので、夕食で対応し、明日から昼食でのカロリー調整を実施いたします」
「あっ、そう!」
ヨースケは悪態をついて、その日珍しく朝食をがっついて食べていた。
それを見ていたリンフィーナは、落札者のホログラムが消えた後、真面目にヨースケに声をかけたのだ。
「あの、お腹が空くのはいいことです。私の分も、今朝の朝食は食べていただいたらいいかとーー。でも今朝は毒味すら、していないのです。すみません!」
「はぁ?」
ヨースケの左頬が、ひくっと動いた気がした。
やっぱり、ちょっと怖い。リンフィーナは自分の食糧を差し出すのが失礼だったのか、それとも毒味役をしなかったことに怒られているのか、全くわからずに身を縮めた。
「あんた、サナレスと違って頭悪いよな」
ぼそっと言われた言葉に一刀両断され、傷ついてしまう。
わかりきっている。
兄と妹とは言っても、サナレスとは血がつながらず、細胞の一片でも似たところなんてなさそうだった。
「うん。私どうせ馬鹿だし」
「へぇ。自分で卑下するんだ」
リンフィーナがへり下っても、ヨースケには受け入れられなかった。「さなレス兄様に比べてってことだからね」と後づけると、ヨースケはどうでもいいと嘲笑した。
「だが今日は足を引っ張るなよ」
「先生、ーーリトウ先生が起きてくる?」
流石に部屋に設置されたカメラとかいう記録媒体から隠れた角度で会話した。
ヨースケはリンフィーナを馬鹿にした笑いをカメラに向けている。
それとは別に、リンフィーナに対してぼそっと、悟られないように呟いている。
「リトウが起きてきた今日が好機だ。ずらかる。夕刻までの時間が正念場だ」
リンフィーナは、心の中でこくこくとうなづいた。
でも、ずらかるという言葉は理解できない方言だった。
ずらかるって、何をするのかな?
気を張っていろと言われたことは空気感で察した。夕食が配膳されるまでにヨースケには何か考えがあるようだった。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
「戻った場所は、異世界か故郷」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー