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朝になって

描くことが好きです。

この取り留めもない小説が、いつかAIで立派なものになるといいな。

とか思って、書きたいことを書いています。

         ※


 ヨースケと二人で不味い食事を完食し、うとうとしていると夜が明けていた。リンフィーナは寝た感覚もないまま、わずかな明かりを頼りに目を擦った。

 ヨースケはもう目覚めており、身じろぎもせず、言葉も発しない。地べたに座った状態で、複雑に足と足を組み合わせている。太ももの上に手を置いて、彼はゆっくりと呼吸しているだけだ。


 術師がとるポーズに似ているけれど、ヨースケのそれは見たことがない。ただ精神統一していると言うことだけはわかった。だからリンフィーナもカサガサせずじっと黙った。


「朝の食事でございます」

 狭くて薄暗い部屋に、また食事が運ばれた。

 この頃には二人とも完全に覚醒していて、ここが海底深い、日の光が場所であること。時間感覚を失わせる場所であることを自覚している。


「えっと、リトウ先生は?」

「起きてこないな。ずいぶんとふぬけた寝顔だ」

 この日最初に交わした会話は、リトウを案じるものだった。


「そうですよね。幸せそうですよね。時々笑顔になっている気がします」

 疲れていたが、リンフィーナもヨースケもゆっくり休むことはできなかった。だから夜通し、定期的にリトウが無事かどうかを確認して一夜を過ごしたのだ。


「朝の食事が二人分ってことは、相手さんにこいつを起こす気はないらしい」

 ヨースケは皮肉げに口の端を上げた。


「おい、落札者! どうせこの部屋をどっかで見てるんだろ? ちょっと話をしようじゃないか」

 ヨースケが斜め上の四方八方に注意深く視線を向け、空中に声をかけて、それに応対する形で、またホログラムとかいう半透明な落札者が姿を現した。


『お客様、どうなさいましたか?』

「どうもこうもない。こいつを起こせ。俺らは今日、ここを出ていく!」

 ヨースケはリトウが眠っている気味の悪い半透明の卵を足で蹴り上げた。

 卵はゴムよりも柔らかいもののようで、ふわふわと揺れ続けている。これでは物理的な衝撃を吸収してしまうので、とてもではないがリトウ・モリを起こせそうにない。


『そう乱暴になされても、このシステム、ご本人の意思でなければ覚醒することはできません』

「はぁ!?」

『ですから、お客様のお二人が本日こちらを出ていかれることはいっこうに構いませんが、リトウ・モリ様は、ーー目覚ましタイマーを設定されませんでした』


 不穏な言葉に、リンフィーナはヨースケの衣服の袖をぎゅっと掴んだ。

 そうしてこちらを振り返ったヨースケと、視線だけで以心伝心した。


「その目覚ましタイマーを設定する説明って、落札者である貴方は、しなかったんじゃないですか!?」

『ええ。ご質問されなかったですから』

 回答には悪意という意図がはらんでいて、その瞬間ヨースケが動いた。

 卵のような粘着質の物体の中に埋まっているリトウを起こそうと、なんとか境目に爪と指をかけていた。


『お客様、そのように無理にこじ開けようとなさいましたら、眠っているお客様の精神にどのような作用があるのかわかりかねず、適切な接客を遂行できません。おやめください』

 半透明な卵をこじ開けようとしているヨースケに、落札者は慌てた様子もなく事実を伝えた。相手は冷静だ。感情なんておそらく、どこかにおき忘れてきているとしか思えなかった。


 だがヨースケの動きは、落札者の言葉で完全に意気消沈した。

「ちっ!」

 卵に蹴りを入れ、狭い部屋の地べたに座り込む。

 それだけでヨースケがリトウのことを大切にしていることがわかった。


「とりあえず、今朝も不味い朝食を食べましょうか。私たち、人質を取られているも同然の状態ですよね」

 リンフィーナがそう言うと、ヨースケはさらにリトウが眠っている卵を蹴り飛ばした。


「食べてから、起きていただく方法を考えましょう」

「あんたやっぱりめでたいな。この時点で、固形物に薬もられてたら、リトウ同様、俺たちもやばい」


 リンフィーナは自然に微笑み返した。

「ご心配なく。食欲がなくて、今日も私は食べられそうにないです」

「は? 昨晩もちょっと食事をかじったぐらいで?」

「ええ」

 サナレスとアセスがこの世にいない感覚を味わった直後から、リンフィーナの消化器系は死なない程度に動いているだけだった。


「たぶん大丈夫です」

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

「戻った場所は、異世界か故郷」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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