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不味い食事を食べるかどうか?

こんばんは。

本日も大学院がなく春休み中なので、描きたいこと書いて寝ます。


誤字脱字や訂正は、1週間以内に行いますけれど、古字脱字も表現も、

荒削り!!

 そんな感じでリアルタイムで読んでくださる方に感謝申し上げます。



       ※


「まずい。食えたものじゃないなーー」

「贅沢は言えない状態だと思います」


 でも内心、ヨースケの意見にリンフィーナは同感だった。

 湿気を帯びた無機質な床に三角座りをして、リンフィーナは膝を抱えて丸まった。あまりにも食が進まなくて、足元に置かれた銀色のトレイに目を向けた。

 このトレイ、どうしてこうもボコボコで傷んでいるんだろうか。


 ヨースケはあぐらをかいて、膝の上に銀のトレイを置いていた。

 眉間に皺を寄せている。


「あんたもさ、思ったことをあんまり口にしないタイプなんだな」

 不遇な状態で二人は向かい合って座ることになり、ヨースケは銀色のトレイを見つめながらそう言った。


「え?」

 意外なことを言われたため、リンフィーナは最初自分に言った言葉だと認識するのに時間がかかった。

「飲み込んでいる言葉が多そうだ」

 そうなの?

 そうなんだろうか。


 キョトンとした顔でリンフィーナはヨースケに視線を向けた。


「思ったことは、自分なりにかなり口にしていると思っていたんですけど」

「いや。じゃあこの食事、口に合わないからっていきなり食べなくなったりしないだろ?」

 うっ。

 図星をつかれ、リンフィーナは仕方なく、銀色のトレイを自分の膝に乗せる。


「別に食べたくなければ、食べなければいい。でも人は飢えたら死ぬし、飢え切ったら、何だって食べる。あんたがのたれ死んでも俺はいっこうに構わないから、あんたは自由だ」

「ーーそうですよね」

 リンフィーナは乾いた笑いを返した。ふと、ラーディア一族を追われ、山越をした時のことを思い出す。

 ラディという側仕えの双見が一緒に逃亡の旅をしてくれた時のことだ。リンフィーナは何も食べたくなくて、死んでもいいと思っていた。でも側仕えの彼女は、『食べてくれ』と懇願した。


「ーーそうですよね。あなたは私の生死に何の責任もありません」

 何か寂しかった。

 なんでもないことのように言おうと笑おうとしても、とりつくろえない。

 目をかけてくれた彼女は、もうこの世にはいなかった。


 ヨースケはこちらを一瞥もせず、淡々と伝えてきた。

「私の生死に責任を持つ者も、誰もいない。普通は誰でもそんなもんだ」

「ーーそうですね」

 ヨースケの言葉は残酷で、リンフィーナは俯いた。やいやいと小言を頂いている瞬間が、どれほど幸せだったことだろう。今のリンフィーナならそれがわかった。


「だがここで、たとえ最高に不味くて食べれたものではない食事でも、食べない選択肢なんてないな」

 理解に苦しむ発言だった。ヨースケはそう言うなり、ときには鼻をつまみながら不味そうな食事を喉元に流し込み始めた。


「食べろってこと?」

「どうでもいい」

 リンフィーナが確認しても、あくまでヨースケにはそう答えられた。


「だがお前の行動は合理的ではない。モリは生きているようだ。この場で全滅を避けるなら、私が食べて、お前が食べない。もしくはお前が食べて、私が食べないのがいい。毒を盛られる可能性を考えれば、各々違う行動をとればいいのかもしれないな。それなのにお前は私が食べたのを見て真似をしただけだ。最初のひとくちを口にした時点で、毒盛られていたら二人とも死んでいたんだから、今のお前の行動はわけがわからんと言っている」


「とても食べれる気分じゃない」

「はぁ? 気分で命がつながれると思うなんて、姫君ってのはずいぶんめでたいな」

 リンフィーナの反論に、即座に答えが返ってきた。

「それとも姫様だから、仕方ないのか」


 ヨースケの発言は、ことごとく腹立たしくて、リンフィーナは口元を引き結んだ。

「私の生死なんてどうでも良いのなら、そんな嫌味を言う必要ってあるの?」

「ないよ」

 気不味い沈黙だけがあって、リンフィーナは親指の爪を口元に持っていった。


 ギリっと自分の爪を噛みそうになり、今度はサナレスのことを思い出した。

『ストレスを自分の身体を蝕むことで解消するのは賛成できない。血が出るほど爪をかんで、どうする? お前の問題はそれで解決するのか?』

 子供の頃爪を噛む癖があった。

 その言葉はリンフィーナの悪い癖を見抜いて、発せられた苦言だった。


「ヨースケはこの食事、毒は入ってないんだから、食べた方がいいってことを言ったの?」

 遠回しすぎる。

 リンフィーナは銀色のトレイに置かれた硬いテーブルパンをがしっとかじった。


「別に。ただーーこの状況、何日続くのかわからない。俺が食べて、死ななければあんたが食べればいい。明日はあんたが食べて、死ななければ俺が食べる。どれだけ不味くても、生きたいならそれが最適解だと思う」

 賢く状況に対応した意見だった。

 かつてサナレスと意見があった商人で、取引相手だと聞いていた。なるほどな、と思う。


 噛み締めた、石のように硬いパンがまずい。

 思わず、愚痴が出た。


「どうしてこの銀色のボコボコの皿、客に出すのかしら? これってとても食器とはいえないでしょ?」

 食事の美味い不味いは、食器でも決まる。これは客に出す食器であるとは思えなかった。


「この食器か? 俺には逆に懐かしすぎる代物だ。給食だよ」

「給食って?」

「俺達のいた世界に存在したもんだ。一律に配給される食事で、味へのこだわりはなく、栄養が足りているかどうかが優先される。さっき落札者が言っていただろ? 卵の中には眠ったその一人一人に、過不足ない栄養が賄われる。でもそっちのベットに寝ることができない従業員には、不味くても均一な栄養を届けている。俺たちは、客用のもてなしを断って、固形の食事を要求したから、ここの従業員が食べている給食を配給された、と考えれば腹も立たない。給食の食器より、ーーコンビニのプラスチックトレイの方が貧しいと俺は思ったな」

 ヨースケはふっと破顔した。


「とても不味いけれど」

「不味いな。せめてカロリーメイトーー、固形状にフレーバーで味付けするとかすればいいんだが」

「なんか、サナレス兄様が時間がないときに食している、オートミールみたい」

 リンフィーナはしかめっ面のまま、給食というものを理解し飲み込んでいく。


「あの人は特殊。忙しくなると味覚をないがしろにする性質がある。究極、胃の負担を減らすために、食事全部をすり身にする人だよ」

 うんうん。

「美食家らしいけど、カロリーメイトもどきのドックフードを売り出すと言ったら、前のめりだったな」

 これには少しサナレスにケチをつけられた気がして、リンフィーナはコメントを控えた。


「兄様ーーサナレスは、合理主義なだけ。考え事をしている時は、味覚とかはどうでもよくなるみたい。でも美味しいものを味わいたいときは、誰より食にうるさいし」

「ああ。あの人って天才気質なぶん、時と場合によって五感や第六感を局部的に削っているよな」

 そうなの!?

 時々、どれだけ呼びかけても返答がないことがあったのは事実。フリーズしているサナレスは、確かに五感の何らかを閉ざしていた。


「到底凡人にはわからない話だ。リトウ・モリ、こいつもサナレスの属性に類する部分がある」

「そうなんです、ね」

 サナレスの師匠と知っていてもとても謙虚なので、リンフィーナはヨースケの方を警戒していた。だが今は、少しだけヨースケの方にも親近感を持った。


 リンフィーナは、ボコボコの銀色のトレイや食器にのった食べ物を口に運びながら、聞いてみた。

「給食って、干し肉みたいなものですか?」

 ラディという側仕えが、リンフィーナが死なないために食べろと言ったあの食事を思い出して、感慨深い。


「食事の価値観が違います。干し肉ってのは、給食の世界ではとても贅沢だった。単に一律平等に振る舞われる食事ですよ。こっちの世界で干し肉は保存食として重宝されますが、ーー私たちの故郷と言われる場所では、干し肉って珍味、つまり酒のあてだったんです」

「酒のあてに、日持ちする必要が!?」

「ないですよ。酒のあてなんて腐るほどありました。食料を廃棄する量が多いと社会問題になったような世界でしたから」


 食料を廃棄する量が多い!?

 想像もつかなかった。

 貴重な食料を廃棄するだなんて、どのような大国だろう。


「姫君にはわかりませんよ」

「でも、この不味いのを食べた方がいいのよね?」

「そうですね。両方を知らなければ、わからないのです」

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

「戻った場所は、異世界か故郷」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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