表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/85

本心の行方

こんばんは。

ずいぶん更新が緩やかペースになりました。

反応を楽しみに書いておりますにで、またご意見などお願いいたします。

若い方とは違い、とにかく楽しんで書いています。

なので相互に反応し合うようなことできません。

       ※


 1人の女性、サナレスからしてみれば赤子の時に引き取った、妹として養育してきた乳臭い娘、リンフィーナは数奇な運命を背負っていた。

 アルス大陸を統治するラーディア一族の次期総帥であるサナレスと、兄弟氏族であるラーディオヌ一族の現総帥であるアセス、2人から好意を寄せられている。


 本来であれば王族の儀式の元、民に祝福された婚儀が行われる身分同士の出会いだった。


 それなのに当の本人、リンフィーナ・アルス・ラーディアは、古代史で登場する魔女ソフィアに半分人格を乗っ取られたまま、わけもわからず放浪する旅に出ることになっていた。


「ちょっと! 兄様が目覚めないうちに出ていくなんて、一体どういうことなのよ!! あなたが兄様を心配しているのは嘘じゃないって言ったから信頼したのに、どうしていったい、兄様のそばを離れないといけないっていうの!?」


「ーーうるさい」


 リンフィーナの身体に半分の主導権を得つつあるソフィア。かつて魔女と言われた少女は、共存するリンフィーナの主張を一掃した。


「兄様、兄様ってね。その呼び方自体が気に食わないっていうの。あなた、サナレスのことなんだと思ってるの? 実際、血も繋がっていないくせに、妹ぶって。それなのに本心じゃ、妹として見てもらうだけじゃ嫌で、ーー口に出すのも汚らわしい。……なんていうかもう、異性として……、特別扱いされたいだなんて、エゴの塊よね。わたくしはそれが許せないのよ」


 ソフィアの口調が不自然に、貴族であるかのように変容する。

 古代と言われる時代、一匹の竜に育てられたソフィアが王族の人間に見つけられ、拾われた後、強制的に貴族の振る舞いを強いられた。同族である人間と仲良くなるために、いったんは身につけた貴族の言葉、そして立ち振る舞いが、こんな時に顔を出す。


 生まれた時から皇女として育てられたリンフィーナに対し、少しだけ嫉妬心がある。だから自分だってそう振る舞えるのだと、何か不自然になってしまうことを、ソフィアは感じ取って舌打ちした。


 私の分身、単に分身ラバースであるだけの存在であるリンフィーナは、何から何まで、ソフィアを苛立たせた。


 ソフィアだってサナレスの元を離れたかったわけではなかった。できることなら、リンフィーナが言うようにサナレスが目覚めるまでそばにいて見守っていたかったのだ。


 だが、ソフィアが魔女と言われる所以は、アルス大陸を含めたこの星の異常事態を我が事のように察知する能力を得ているからだ。極端に言えば、肌感で感じるその能力があるから、誤解され、魔女だと言われた。


「お前は、甘えているのよね? そもそも生まれた時から、サナレスを良いように保護者みたいな扱いをして。その上、さらに欲張ろうなんて私は到底許せないと思っています、わ」


「あなたに許してもらう気なんてない。私は私の兄様やアセスと過ごした歴史がある。それはあなたには絶対奪えないものなんだから。早く! 私は2人のところに戻りたい」


 一つの身体に二つの人格が、入れ替わり立ち替わりで喧嘩していた。


「だいたいあなたもサナレス兄様のこと、心配していたでしょ!? それなのにどうしてこんなにも急に旅だったの?」


 リンフィーナが意識のないうちに、止めようとするアセスをコテンパンにのして、ソフィアはサナレスの元を離れた。


 ーー去りたくなどなかった。

 ソフィアとて去りたくなどなかったのだ。

 これがソフィアの本音なので、のちにリンフィーナから非難される度、イライラと反抗的になって感情が泡立ってくる。


「サナレスのことなどどうでもいい。私はしたいことをするのーーですわ」

「だから! アセス様をあんなふうにするなんて! それに、したいことって何なのか、私はずっときいてるじゃない!?」

 リンフィーナがかぶせるように言ってきて、ソフィアの心は凍りついた。


 世界は、望んでも全てを叶えてくれるものではない。

 言い換えれば。

 望んでもほとんど何もかなえてくれず、絶望をもたらしてくる。


 兄サナレスと婚約者アセスに甘やかされたリンフィーナは、絶望を知るべきだと、ソフィアは思った。


 人は、つまり生命は、誰の力を借りなくとも、衣食住さえあれば生きられる。衣食住なんて、贅沢なくらいだ、食さえあれば、生きることができるのだから。ソフィアはしらっと考えていた。


「それであんた、どこに行くって?」

 二重人格のような会話に割って入ったのは、男の声だった。

「誰?」


 ソフィアは単身で出てきたつもりだった。

 リンフィーナというお姫様が使っていた体は、今ソフィアが支配できているので、内在するリンフィーナからの騒音にさえ我慢できれば、1人で計画を実行できると思っていた。


 それなのに、1人だけくっついてきている男がいて、ソフィアはゲンナリと苦虫を噛み潰した顔になった。


「ワギ_ヨースケとか言った? なんでお前がここにいる?」

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

「戻った場所は、異世界か故郷」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ