試される本気
こんばんは。
そろそろまた、続きを書き始めております。
ハイファンタジー。
異世界転生、逆転生、色々で書いております。
後書に順番をのせています。
どの章からでも、とはいかないですね。
でもどの章からでも、面白くありたいろ努力しています。
※
はぁ……。
次代の一族を背負う立場にいるはずの2人だというのになんて無力なものだ、とサナレスは吐息と共に苦笑した。
だがそんなサナレスに声をかけるアセスは、不思議と落ち着いていた。
そして、「無力なのも案外、悪いことばかりではないと、私は思うのです」と言った。
「私たち2人は本来であれば、リンフィーナを追えるような立場ではないはずです。あなたが言うように、どちらかが残ってアルス大陸の安定を図る、あるいはどちらともが一族の立て直しを行い、現状の問題に対峙する」
「よくわかっているじゃないか。少なくともラーディア次期総帥の私よりも、ラーディオヌ現総帥のお前の方が動きにくい立場だな」
だからアセスはリンフィーナの後を追わずにここにいたのだろうと、サナレスは想像していた。
「いえ。現状私の信頼がラーディオヌ一族から皆無なこと、これは利用できると思います」
アセスが何を言っているのか分からずに、サナレスは首を傾げた。
「やはり私達は、ラーディア一族とラーディオヌ一族がアルス大陸の混乱を治めるために協定を結ぶのです。そしてその協定の公約に、私の身柄をラーディオヌ一族に外交大使としてラーディア一族に迎え入れたことにしていただきたいのです」
「しかし今、ラーディア一族はジウスが鎖国をし、私の力は及ばない」
「ええサナレス。その状況を逆に利用するのです」
いつになくアセスの言葉に力がこもっており、サナレスはその先に興味を持った。
「私をラーディオヌ一族との公約の代わりに、表面上外交大使として迎えることで、私をラーディア一族に拘束。そうして頂ければ、私は自由に動けます」
アセスはじっとこちらに眼差しを向けてきた。
サナレスはアセスが提案してきた内容の全てを、直感的に理解した。
「ーーお前にしては大胆だ」
「あなたと出会って、もう随分経つので、少しだけ学ばせていただきました。厄介ごとと言うのは、取り繕うのではなく、根本を優先すればいいのでしょう?」
「正解だ」
少しだけアセスに対し、絶望していた。
けれどアセスは、何もラーディオヌ一族の立場にがんじがらめになり、リンフィーナを追えなかったわけではない。追わなかった。その方が利があると算段した。
「もう、私との勝負を諦めたのかと思ったのだが……」
サナレスは不敵に口の端に、満足げな笑みを作る。
「はぁ? 何を言われるか」
くすと笑われた。
「こんなにも目覚めが遅いあなたを私は待っていて、公平性を確保したのですよ」
整いすぎた容姿で、かつてクリスタルドールなどと言う異名を持ったアセスは、少し眉を上げて口元を歪める。
「お前が言うように表面上、取り繕う用意であれば、可能だな」
ジウスが鎖国した一族の一部を破り、ラーディア一族の次期総帥サナレスとラーディオヌ一族の現総帥アセスが、和平を結んだふうを装うのは簡単だ。それくらいの力であれば、サナレスにはある。
「むしろ、私が自国の総帥として信頼されず、あなたの父である大神ジウスが鎖国をしてくれている今が好機ですよね」
「ああ」
アセスは表面上だけ体裁を整え、いっとき休戦し、2人でリンフィーナを追うことを提案してきた。
「私はまだ、別の意味の勝負をあなたと終わらせたつもりはありませんよ」
目力には、人間らしさが宿る。
サナレスはかつてのアセスを知っていて、彼の変容振りを眩しく思う。
「演出を算段すればいいのだな?」
「ええ」
「ただそれでは、おまえは事実上ラーディア一族の人質ということになってしまうが」
「構いません」
アセスはリンフィーナを魔女ソフィアに奪われ、サナレスが目覚めるまでに一人で考え、それだけのことを算段したのだった。
アセスがリンフィーナの行方を追っていなくて、きっと立場上アセスはリンフィーナを手に負えないと思い、諦めたのだと勘違いした。それをサナレスは、少しだけ、寂しく思った。
赤子から育てたリンフィーナが、初めて好きになったのがアセスだった。
だから彼がリンフィーナの気持ちに、どこまでも寄り添った決断をしてくれていたことが嬉しかった。
「感謝する」
サナレスがそういうとアセスは肩をすくめた。
「サナレス。また貴方って人は、兄の顔に戻ろうとする。本気で私と、彼女を奪い合う気はあるのですか?」
アセスから、問われた。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
「戻った場所は、異世界か故郷」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー