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罹患

こんばんは。

読んでいただいている方、ありがとうございます。


サラリーマン、仕事と学業と、やりたい事の隙をついて、書いている長編です。

皆様の反応、感想は、今後の励みになるので何でもご記入ください。

後書きには、読む順番を載せていますが、それもお好きにしてください。


          ※


「私は以前、海底深くに沈んでいるラン・シールド一族に来たことがあります。それで、魔女ソフィアの力ですけれど、ラン・シールド一族を海底から地上に浮上させたと言う覚えがあり、どうしてまた、ラン・シールド一族が海底に本拠地を置いているのか合点がいかないと思っています」

 その通りだ、とソフィアの声が聞こえた気がしていたけれど、リンフィーナはとりあえずウィンジンに会いに行くより前にすることがあると思っていた。


「私が前にラン・シールド一族に来た時は、一族は海底から地上に出ることができたと喜ばれていたと記憶しています。でもーー」

「実際には適応できなかった、と言うところでしょうか?」

 リトウがリンフィーナが想像したことを口にした。


「民のほとんどが魚人化してしまっていては、一族の王都が海上に浮かんだとて、適応できるはずもありませんよね」

 サナレスはリトウのことを師匠だと言っていた。サナレスが尊敬に値する人物は、リンフィーナが考えること全てを看破しているようで、リンフィーナは何も言えなかった。


 代わりに、ヨースケが代弁する。

「そうだな。適応できなければ、ラン・シールド一族はまたこうして王都を海底に沈める他なかったことだろう」

「そうですね。それに魚人化した民を隠すとなれば、浅瀬に本拠地を置くわけにはいかなかったでしょうから、とてもじゃないけれど海の上にはいられなかった。そう考えられますね」


 リンフィーナは、自分がソフィアの力でラン・シールド一族を救えたような気分になっていたことを浅慮だったと恥じる。


 ただラン・シールド一族を海底から地上に浮上させたあの時、恩人だと感謝された言葉のまま受け取ったけれど、現実はそう上手くいっていないようだった。


 表情を暗くしたリンフィーナに、リトウは言う。

「でも、ラン・シールド総帥のウィンジン様は、サナレスやリンフィーナに感謝しているようだったよ。だから一族の方針を違えてでも、昨日見過ごしてくださったんだと思うんだ」


「でも。命乞いして生きても、この氏族の苦しみを私は、ーーソフィアの力を使っても解決できなかったと言うことですよね。ーーだから殺される」


 殺される対象になっているのだと言うことを、リンフィーナは言葉に出すことができなかった。そもそもサナレスとウィンジンが交わしたと言う約束についても、リンフィーナは把握していなかった。無論、魔女ソフィアに制約を与えていることは理解できたけれど、サナレスは何を交渉材料にしたのだろう。


「まぁ、リンフィーナ。そんなに暗い顔ばかりしていないで。僕は今、結構楽しいんだ」

 リトウにそう言われて、リンフィーナは俯いていた顔を上げた。


 この状況が楽しい?

 リトウの顔をじっと見つめた。


「だって見てごらん。僕の常識じゃ、海底というのは水で埋め尽くされているから海底なんだ。それなのに、この海底ってどうなってるのかな? 酸素があって、僕たちは魚人化していないのに、息ができる。これってかなり科学的に不思議な状況なんだよ」

「潜水艦ってのも考えられるだろ? 小さな世界であれば、海中にでも作れるよな?」

 ヨースケが至極真面目に答えているけれど、リトウは首を振った。


「いや。空気が流れている。この空間が小さな潜水艦と比較していい規模のものとは思えない。海底を居住区にできるなんてさ、世紀の大発見だと僕は思う」

 思いの外、リトウは顔を輝かせ、感情を高揚させているようだった。


「だったら少し、探検してみます?」

「そうだね!」

 つられるように提案したリンフィーナに、リトウはそれが最善だと言わんばかりに賛同した。


「忍び込んだ上に、ウィンジンとかに先に連絡を入れないでいいわけ?」

 ヨースケはボソッと呟いたけれど、楽しそうにしている時点で、リトウとリンフィーナに同意しているようだ。


「あっちから風が吹いているんですよ」

「ええ。以前来た時も、この宮廷の中央部分に空気の泡玉が吸い込まれていくのを見て、気になっていました」

「行ってみましょう」

「はい」

 兄サナレスが師匠と仰ぐリトウ・モリは、不思議な魅力のある人だった。彼の興味はまっすぐで淀みがなく周囲を圧倒しており、その追求こそが正しい行動だと思わせてくれる。


「巨大な酸素供給装置みたいなの、あるのかなぁ?」

「酸素、供給?」

「うん。僕たちの体ってさ、酸素取り入れないと死んでしまうから。人魚とかーー、つまり魚人化した人って、どうやって呼吸しているのかは調べないといけないと思っていたんだ」


 そっか。

 学者肌だな、とリンフィーナは思った。


 しかしリンフィーナも、リトウやヨースケに話せていないことがあった。

 そして気分の重さを隠すように、自分の手で左右の足首を撫でていた。


 やはり手指の感覚は、ガザガサと乾燥している。

 少し痛痒くて手の爪でかいてしまうと、容易に皮膚が剥がれてしまった。

 血が滲み、少しだけ厚みのある皮膚が再生される。


 魚人化という病のことを知って、リンフィーナはもしかすると自分も罹患しているのだろうかと、怖くなってしまっていた。


 いつからそのような症状が出たのかと思い返せば、ラン・シールド一族に出会ってからだった。


 水月の宮で、アセスと一緒にいた時間、リンフィーナとアセスは魚人化したラン・シールド一族の民に襲撃された。その時にリンフィーナは彼らに足首を掴まれ、命を危うくして、水中に引っ張り込まれようとした。


 あの時から、足首に異変があった。


 魚人化した異形のものに足首に爪を立てられ、リンフィーナは血を流していた。

 今流行りの魚人化という病があって、もしそれに罹患しているなら、あの時だとリンフィーナは覚悟していた。


 乾燥しているだけ。

 そう思いたかった。


 でも爪でかいてしまって、血が滲む肌は、少しづつ変異しているように感じていた。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

「戻った場所は、異世界か故郷」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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