親を訪ねて三千里
こんばんは。
長編ファンタジー。異世界転生、逆転生で書いています
読む順番は後書きに記していますので、ご興味持っていただきました方、よろしくお願いいたします。
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『おまえたちはーー、私をないがしろにしていないか?』
リンフィーナの中で行動制限をされているソフィアは、じとっとこちらを見ながら文句を言っている。
『言っておくが、私はおまえたちの敵ではない。この身体は私の体神(分身)なのに、どうしておまえが主導権をとっている……?』
横柄な態度しか見せないソフィアが、珍しく気弱になっていて、リンフィーナはふん、と鼻を鳴らした。
「この時代では私がこの身体の持ち主なの。千年も眠っていたあなたに、そう簡単にこの身体、渡さない」
『早く寝ろ。そうすれば私が表面化できる』
「そんなこと言われて、寝るわけないでしょ!」
ソフィアとの会話は、もはや子供同士の言い争いになっている。
周囲のものが2人の会話を聞くことができたら、リンフィーナはまるで二重人格のように思われることだろう。ゾッとしてしまう。
「あのね、全員一致であなたの目的実行を見守るって言っているのに、いったい何が不満なの?」
二重人格だなんて痛々しい。
そんなふうに思われるのは、リンフィーナとしても避けたかった。
いっそ単なる心の病気であったならよかったのに。だとしたら病気を治すことに専念するが、現状では病気の類ではない。言動も行動も、いつソフィアに入れ替わるのかわからない。
入れ替わってしまったら呪術の能力もケタ違いになって、何をするかわからない。そして悪いことにソフィアは、強大な力を使うことを息をするように躊躇しない輩である。人の存在がどれほど消えてしまっても心が傷まない女なのだ。
『不自由だ』
ソフィアはボソッと伝えてきた。
自分の身体を、そう自由にされてたまるものですか。
リンフィーナはそう反論したかったけれど、いったんソフィアの話を聞いてみることにする。
「何を不自由に感じているの? 言っておくけれど、私と身体を共存していることを不自由っていうのはなしね。ーー私だって、同じ思いなんだから」
ソフィアは簡単には気を許さず、険しい視線の気配を感じさせたまま、リンフィーナの中であぐらをかいている。
厳密に言えば、ソフィアのことは見えない。けれどリンフィーナにはなぜか、自分の中に存在するソフィアを、確かにいる別人格として、彼女の気配が見えているような感覚があるのだった。
そんなソフィアは魔女として恐ろしく思う半分、なぜか憎めない。サナレスのことが好きだという共通概念は一致していて、リンフィーナはどういうわけか、迷惑をかけられる姉妹のように思い始めていた。
「えっとさ、あなたの何がしたいかっていう目的を言わないと、協力できるものもできないんだからね」
『うるさい。協力なんて不要だ。おまえはさっさと私に身体を渡せばいい』
「渡さないわよ。ーーサナレス兄様のことも、渡さない」
そんなふうに言えばきっとソフィアは怒るだろうと、リンフィーナは予測している。ソフィアが唯一人間らしい理性を保てる理由、その鍵を握っているのはサナレスだ。
『私だって、サナレスにおまえを殺さないと誓約した。しかしーー!』
ソフィアはだいたい、サナレスの名前を出すと混乱している。
リンフィーナは半眼になってサナレスに叱咤する。
サナレスは女ったらし、人たらしの類まれなる才があるとは思っていたけれど、まさか魔女までたらし込んでしまうとは。リンフィーナは吐息をついた。
「そう。サナレスに嫌われたくないなら、さっさとあなたの目的を私に話して」
『なっ何……!? サナレスのことなど、どうでも』
「話して」
リンフィーナはソフィアに、力では圧倒的に負けている。けれど制御できそうな気がしていた。そう感じるぐらい、世界を滅ぼしたと言われる魔女ソフィアは、強大な力に相反して、精神的に幼かった。まるで子供だったリンフィーナが、兄のサナレスに盲目的に恋焦がれたような幼さを、ソフィアから感じている。
会話の末、根負けしたのはソフィアだった。
『私は、水龍を探している。ーー私の育ての親だ』
「親?」
『私は心配している。海の中で異変が起きている。それは、私の探す水龍が弱っている。けれど弱っているとはいえ、彼は生きている』
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
「戻った場所は、異世界か故郷」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー