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だったらどうする?

なんだか、どうする家康?

みたいなタイトルになりました。


私にしてはご無沙汰しております。

週の後半は、また書きたいものを書けそうです。(仕事の都合上)


最近、自分の文章力のなさというか、仕事上で色々もまれているのですが、お付き合いや反応、よろしくお願いいたします、


        ※


「受け入れないと言うより、受け入れられないんだ」

 深い吐息をついた後、サナレスは軽く微笑んだ。

 そしてサナレスはかぶりを振った。


「あり得ない、アセス」

 あり得ないんだ。

 その言葉はわかってくれという願いすら表現できないほど頼りなく、思いのほか渇いた声が出た。


 でもサナレスは、心の奥底から湧き出てくる感情を隠せなかった。

 

「ーー今となってはあり得なくなっているーーアセス。私は、時間には限りがあると言うことを、この度初めて自覚した気がしているから」


 いや、サナレスは知っていたはずなのに忘れていた。


 神の氏族の寿命は長い。またその中でも王族の寿命は永遠とも誤解されるほど長かったので、いくらでも時間があると慢心していた。


 けれど自分は知っていたはずだった。

 寿命の長い貴族だったとしても、かつて幼馴染であったルカやレイトリージェは、もう自分の側にはいない。

 最愛の人も他界している。

 

 相手がいる場合、相手と一緒にいられる年月は、とても短いものだと知っていた。


 異世界で寿命の短い人間という種族と一体化して、一緒にいられる時の短さを思い出した。かつての親友ルカが流れついた魂が異世界で人として生きて、サナレスを待っている時間の長さを猶予として知った。


 でも結果、異世界でルカとは生きて出会えなかった。

 彼が残した秘密の隠し部屋という伝言を知れただけで、それを知れたことですら、もはや奇跡だと感じずにはいられなかった。


「神であろうと、人であろうとーー。私たち生命が、出会って共に過ごせる時間はあまりにも短い。だから私は、もう大切な物を奪われたくないし、欲しいものは今すぐ手に入れに行く」


 だから、とサナレスは両手を天に向けて肩をすくめ軽く笑い、ーー笑う他、この場を納めることができなかった。

「私はラーディア一族を捨てることにする」

 そう言った。


 アセスは、サナレスを見て絶句していたと思う。

 元々目の前にいるアセスは、生粋の神の氏族の王族であり、感情表現は極端に苦手だった。そんなアセスが束の間、息をするのも忘れるほど、じっとサナレスに視線を向けてくるのがその証拠だ。


「私は放棄する。今、アセス、お前が私をラーディア一族の長として交渉をするなら、私はその立場を利用して、ラーディア一族をラーディオヌ一族に如何様にも差し出そう」

 元は兄弟氏族だったのだ。

 どうってことはない。


 呪術に対して肯定派か否定派かで門下を分けてしまったけれど、どちらの氏族が上下という関係性でもなかったと思う。これまではジウスが率いるラーディア一族がアルス大陸の神の子の統治を引き受け、その実子であるサナレスは次代を継ぐと言われていた。けれどラーディオヌ一族が主導権を取ることについて、サナレスは何ら反感を覚えない。

 もとより、どっちがアルス大陸を治めても一向に構わないと思っていた。


「おまえなら、きっと立派なアルス大陸の次期統治者になる。私をラーディアの次期総帥と見込んで話すのであれば、私としては全ておまえに託す」

「サナレス! そんな簡単に言ってしまっていいのですか? また突拍子もない! あなたって人はーーサナレス……!」


 アセスはサナレスから今、総帥として得たい言葉を得たはずだった。ラーディオヌ一族の総帥であるアセスは、サナレスから聞きたかった言葉はわかっていた。それなのにアセスは、サナレスから放棄する発言を望んでおきながら、戸惑いを隠せない様子だった。


 サナレスは吐息をついた。

「現状、ジウスの生存自体を確かめられない」


 もうジウスの力がアルス大陸という世界を統治できないことを、サナレスは知っていた。

「ラーディオヌ一族の総帥であるおまえが、私を次期ラーディア一族の総帥だと認めるのであれば、私は全ての権利を放棄してやる」

 元々、サナレスはラーディオヌ一族が好きだった。呪術と薬で反映を誇る氏族について、かつての親友が案内したその土地は、サナレスにとって疎むものではなく、むしろ好ましい在り方だった。そこには一族としての努力がある。


「アセス、おまえがアルス大陸を率いるなら、私には何の異論もないよ」

「あなたが自ら豊かにしたダイナグラムを手放しても?」

 アセスはことのほか眉間に皺をよせ、サナレスの決断を信じられないといったふうに確認してきた。

 そして「和平を結ぶのが筋かとーー」と、彼が予想した着地点を口にしている。


「おまえな」

 サナレスは笑ってしまった。


「ラーディオヌ一族にとって一番好都合なのは、ラーディア一族を制圧し、ラーディア一族に代わってアルス大陸を統治することなのだろう? だからラーディア一族と和平を結ぶより、ラーディア一族を傘下にする方が手っ取り早い。おまえなら分かっているはずだ。何を血迷っている?」

 サナレスが端的に言ってしまうと、アセスは言葉を選ぶのに躊躇い(ためらい)、束の間フリーズして沈黙した。


「サナレス、あなたがこのアルス大陸に残された功績はーー?」

「あ、そんな考えや遠慮は不要だから。私にしたら、それって愛しい妹の暮らしを豊かにするために考え出しただけで、何の未練もない」

「それでもーー」

「お前が統治するのであれば、どう転んでもリンフィーナにとって悪いようにはならない」

 アセスに対して絶対的な信頼があって、サナレスは心底心穏やかにそう伝えた。


「ーーそれは、私にリンフィーナを譲るということですか?」

 アセスは複雑な表情で質問してきた。


「そんなわけないだろ?」

 サナレスはすかさず答えてやった。


「勝負をしろと言ってきたのはお前の方だ。それなのにあいつが私とお前、どっちを選ぶかの勝負がつく前に、私が白旗を上げる理由はない。恋愛は領土争いではないよな? 私はただ、どう転んでもリンフィーナが幸せになる策を講じるなら、お前がこのアルス大陸を統治するのがいい。もしくは私が統治して、お前が今すぐリンフィーナを探しに行くのがいい。そのどっちかだと思っているんだよ」

 アセスは唖然としている。


 双方の王族の立場を全く無視したサナレスの発言に、アセスの理解はついてきていないようだ。


「私にとっての最優先事項はリンフィーナを取り戻すことだから、ラーディア一族をお前に任すことは好都合だ」

「ーーそうなの……ですね」

 サナレスにとって本心だった。アセスが王族に染まり切った考え方をしてくれていることに、サナレスは感謝する。


 そもそも勝負したいと言い出したのはアセスだった。

 今、リンフィーナと先に接触することは、彼女を手に入れるという目的の一点について、優位な立場になる。アセスは気が付いていない。


「それはーーラーディオヌ一族にとって誠に有り難い申し出なのですが……」

 ああ、とサナレスはお前に任せたと彼の肩に手を置いて、ポンポンと叩いてアセスを丸め込みたい気分になったが、サナレスの画策は見事にアセスに裏切られることになった。


「すみません、サナレス。誠に有り難い申し出なのですが、今の私にはそこまでラーディオヌ一族において実権がありません」

「は?」

 ラーディオヌ一族の総帥であるアセスは、何とも言えない顔で表情をひきつらせている。


「どうして?」

 アセスの反応が想定外で、頭の中がこんがらがってきた。サナレスは額に手をやった。


「私はこれまでの経緯で信頼されない総帥です。ーーいえ、元々あまり権威のないおかざりの総帥です。ですからこんな私があなた達兄妹と関わったことをきっかけに、さらに不信感を買ってしまいまして、今は血筋ゆえに処分はされておりませんが、実質的には更迭されているようなものなのです。ですからサナレスにラーディア一族の実権を放棄するとか、アルス大陸の実権を握れと言われても、ーーそもそも、私にはできないのですよ」

「ーーだったら?」

「和平ぐらいで信頼を回復するのが先決だと思ったのです。リンフィーナを乗っ取った魔女に敗北したところを臣下に見られましたので、信頼回復はそう簡単には参りません。そもそも一族と一族をどうこうするような実権、今の私にはございません」


 明らかに肩を落としたアセスに、サナレスは自らの思惑を裏切られて、閉口した。


「なんかーー、ごめん」

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

「戻った場所は、異世界か故郷」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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