心を病むって誰にでもあるかな?
こんばんは。
仕事と勉強と、そんなしなければならないことばかりの合間をぬって、やりたいことを書いています。
本来なら相互リンク的なことや情報交換、をしたいです。
色々、このサイトの醍醐味や使い方、教えてくだされば、ありあたいです。
孤高の小説、ただ書くだけになっているここ最近、人との関わりも欲しいなと思います。
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死を覚悟できる人間は、どこか精神的にはイッてしまっているらしい。
そういうことをリンフィーナは自覚していた。子供の頃から、常に死と隣り合わせ。それくらいの頻度で命を狙われた経験があり、どこかでいつ死ぬのかもしれないと諦めていた。
どうせ生きていても、それ以上の苦しみが付きまといそうだし。
それに今生き延びても、いつ死ぬのかわからないし。
将来が真っ暗で、不安で、だから死を覚悟できるんだと思う。
リンフィーナにだって夢はあった。
けれどその夢がとても遠いところにあって、かなえるのは難しいと感じてしまっていたから、何度も何度も自分なんて死んでしまった方が世の中のためになるんじゃないかと、心の中に暗い影を落としてしまった。
だから他人に命を委ねるような真似をして、攻撃してくるウィンジンを前に、ぎゅっと目をつぶるという暴挙にでることができた。
『バカものが! おまえは、おまえをどこまで蔑ろ(ないがしろ)にするのだ? どうして戦ってでも、生きることを勝ち取らない!?』
お願い!
絶対に出てこないで!!
あなたを制御できない私は、きっと生きている意味がない。
リンフィーナは、必死でソフィアに入れ替わらないように、全身全霊でソフィアの意識を封印する。
『ああ、もどかしい!! だから、私が出てくれば勝機も生まれて、おまえは死なないんだ。おまえの好きなサナレスにもアセスにも、また再び会えるのだとしたら、今は私の力を借りるべきだと私は思う』
借りない!
ソフィアの力は絶対に借りない。
私があなたを制御できないのであれば、ウィンジンが言うように、殺された方がいいと思う。
『もう2度と、サナレスに会えなくても!?』
ああ。魔導士という存在は、どうしてこうも自分の痛いところをついてくるのかーー。リンフィーナは舌打ちした。
まだ生きていたい。
会いたいよ。
死にたくなんてない。
でも自分が魔導に落ちて、ソフィアの言うとおりに動いてしまったら、もうサナレスの横にはいられない、とそう思った。
アセスが魔導に落ちた時、彼はリンフィーナを遠ざけた。それは迷惑をかけないという優しさだったと考えることができるまで、相当の時間を要したのだ。でも今の自分は知っている、アセスは魔導士に落ちて、かつて迷惑をかけないようにと自害しようとした。アセスから学ぶことがあった。
「自分よりも、大事な人がいるんだってば!」
自分のことより、相手が大事なんだよ、とリンフィーナはじっとしていた。
サナレスは一国の王を継ぐものである。アセスも同じ立場にいる。大切な2人の立場を思えば、自分は魔女に支配されてはいけないと思った。
たとえこの場で殺されても。
ぎゅっと目をつむって、裁かれる瞬間を待つことにしたリンフィーナに、ウィンジンの攻撃はいつまで経っても実行されることはなかった。
緊迫する時間は、まな板の上の鯉だったので、永遠に続きそうだった。けれど、その時間は一瞬だったのかもしれないぐらい、時空軸すら歪んでいた。
あまりに長い沈黙があったので、そっとリンフィーナは薄目を開けた。
目の前には、世界最高の術師として指折り数えても上位にいる天道士、ーーウインジンが少し顎を上げて、こちらをじっと見下ろしていた。
彼は薄く笑う。
「ーーサナレスは、約束を違えない。あなたが殺されそうになっても、ソフィアに変化しないことから、リンフィーナ、あなたの主張を認めることにいたしましょう」
神様!
このとき、リンフィーナはかろうじて自分の命が繋がったことに手を組み合わせ、天を仰いだ。
人によって神格化していった偽りの神々がいるこの世ですら、人は神にすがりたい瞬間があるのだと気がついた。
「ご理解いただけたこと、本当にーー」
嬉しく思うと伝えようとしたのだけれど、リンフィーナは度重なる緊張感から倒れそうになった。首根っこを猫のように掴まれて、かろうじて自立した。
「どこまでも甘い。ここで意識手放すなんてあり得ないな。おまえさ、今ソフィアが出てきたらどうするんだ!?」
ヨースケ・ワギが倒れそうになるリンフィーナを右脇で支えた。
「この時代の王族貴族って、すぐに血の気が引いてしまうんです。困りましたね、栄養素が偏っているんだと思われます」
そう言ってリトウ・モリが、リンフィーナの左脇に近寄って、支えてくれる。
「私達も、魔女と言われたソフィアの、この世での目的を知りたいと思っています。リンフィーナは魔女を制御できる。そして彼女の兄は、サナレス・アルス・ラーディアなのです。今この2人を信じなくて、この世界の奇病にどう立ち向かいます? 元々はラン・シールド一族のみに流行した魚人化ですけれど、今は人の世にも蔓延しつつあります。このまま解決できなければ、人々の怒りは、どこに向きますか? 家族の死は重い。人の恨みは今貴族全体に向いておりますが、いずれ病気を広げたのは、貴方の率いるラン・シールド一族に向くのではないでしょうか?」
淡々と冷静に紡がれた言葉は、あらかじめウィンジンが想像していた未来を言い当てたようだった。
「ーー俺は、サナレスやアセスがいなくても、せっかくこっちに長く居たんだ。この世の未届役を買おうと思っている」
「奇遇ですね。僕も同じ考えです」
ヨースケ・ワギとリトウ・モリに抱えられながら、彼らが自分に付いてきた理由の核心に触れることができた。ソフィアはリンフィーナの中で、『こいつら鬱陶しい』とぼやいていたけれど、リンフィーナは安心した。
「眠い……」
「寝るな!」
正直な感情を口にすると、ヨースケの大きな掌で思い切り頭をはたかれた。
「アセスにもう一度会わせてやる」
今にも飛びそうな意識に、ヨースケが気になる名を口にしてきて、リンフィーナは顔をあげた。
「は? サナレス殿下に会うことが、彼女の望みでしょう? ね? リンフィーナさんはアセス総帥よりもサナレス殿下にお会いしたいのですよね?」
遠くなりそうな意識の中で、ヨースケとリトウが揉めていた。
目の前にニンジンというご馳走を、吊り下げられている馬の気分になってしまう。
「ーーわかったって。わかった。私はただ……」
サナレスとアセス、三人で一緒にいる時間がもう少し長く続けばいいと思っていただけだ。
例えその時間に限りがあっても、人は永遠に変わるかけがえのない時間を失いたくはない。
だからリンフィーナは言った。
「明日から、ソフィアの目的を実行するのに付き合ってくださるんですね?」
「私も協力させてもらう」
ウィンジンも言葉すくなく賛同してくれている。
「よろしくお願いいたします」
リンフィーナは言葉にするのがやっとのこと、自分の意志を伝え、周囲にいる三人がうなづくことになった。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
「戻った場所は、異世界か故郷」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー