暗殺者の気持ち
こんばんは。
いくらでも書けるのですが、いくらでも書く時間はない。
だらっと書くな! と怒られそうですけれど。
本年も、よろしくお願いいたします。
キャラクター本位なので、書くツールがあれば、いくらでもダラダラ書きますね。
今や趣味? 生きがい? 日課?
そんな感じです。
※
「おまえ! 単に私のラバース(分身)不勢だから、命の重みを軽んじるのか!? おまえは、やはり所詮道具なのだな? サナレスが大事にするから、ーー私としても、ーー多少は軽んじないでやろうと取り計らっていたが、所詮その程度なんだな!?」
ソフィアは未だ見たことがないほど、怒っていた。
「たかだかラバース(分身)だというのに、おまえは、存分に恨みを勝っているようだ」
ソフィアがリンフィーナを非難した。
これにはリンフィーナも完全否定をしたかった。
目立たず、騒がず。
生きてきたのだ。
ラーディア一族で有名なサナレス、その妹である皇女リンフィーナとして、銀髪という忌み嫌われる容姿以外について、兄に迷惑がかからないようにと、ずっと息を潜めるように暮らしてきた。サナレスの妹としてふさわしくはない、と言われないように、存在すら隠してきた。
恨みを買うはずもない。
『ちょっと、私じゃないわよ。恨まれているのはソフィア、あなたでしょ!』
魔女として処刑された自分の生存元、つまりプロトタイプの方に原因があることを追求した。
しかしソフィアは一笑した。
確信した上で言い切ったリンフィーナに対してソフィアは、相手が使役する水の高級精霊をねじ伏せながら、宿の部屋の中に使役者を引き摺り出した。
「こいつ。おまえの知り合いだろ? 私に咎はない」
そうして捻じ曲げられた空間に現れ、ソフィアの勢いで壁に叩きつけられたのは、確かにリンフィーナの知り合いで、目を見張る。
ラン・シールド総帥。
「ーーウィンジン様……?」
荒ぶる魔女ソフィアに、室内の壁に放り投げられ、身体を追って床に尻をついたのは、リンフィーナもよく知る人物だった。いや、ジウス同様、彼も神の領域に属する存在だ。
ソフィアが自分の身体機能を奪って、ウィンジンにトドメを刺そうとするので、堪えきれずリンフィーナは抵抗した。
鋭い爪を伸ばし、横たわるウインジンの喉を掻っ捌こうとするソフィアの手を、リンフィーナの意識だけで制御する。腕から先が、二つの反する意思に震え始めて、命を奪おうとする爪先は空中を漂う。
どこまでソフィアの暴挙を止められるか、リンフィーナにはわからなかった。全身に力が入り、今にも飛びかかろうとするソフィアは、宿の床を前のめりに蹴り出してでも、ウィンジンを仕留めたいらしい。
「止めるな! こいつはおまえを殺そうとした相手だぞ!!」
手がつけられないほど怒っているソフィア、この状態をリンフィーナはなぜか俯瞰していた。
ウィンジンに殺されかけたことは唯ならぬショックだ。
けれど彼は、理由もなくそういった行動に出る人格ではなく、リンフィーナは流行る心を鎮めるようにした。
「対話しよう」
それしか言えなかった。
対話して、それでもどうにもこうにもウィンジンの殺意が消えなければ、生存本能に任せて手合わせすればいいのだと、リンフィーナも腹を括った。
見事な銀色の髪は、リンフィーナつまりかつてのソフィアの血縁であることを物語る。
リンフィーナ自身もウィンジンという神の一族の総帥をよく知っており、馴染みがある。
そんな彼がどうして?
自分を殺しに来る?
「対話しよう、ウインジン様!」
すがるような気持ちで、リンフィーナは言った。
ごほっと咳き込むのは先ほどまで呼吸ができず、宿屋の室内だというのに溺れかけたからで、びしょ濡れのまま肩で息をする。
ソフィアに完全に身体を奪われれば、ソフィアとウィンジンはこの場で殺し合いをしかねない。呼吸困難から意識がもうろうとなっていても、リンフィーナはソフィアを自由にするわけには行かなかった。
長い銀色の髪と、血液すら通っていないかのような透明感のある、白い肌。
痩せ細った肢体に、肌けた白い衣服の男は、氷のような金色の瞳でこちらをじっと見つめてきた。
その表情はどこまでも冷たい。
「申し訳ありません。今あなたはリンフィーナ様ですよね? ですけれどーー」
そう言い終わらないうちにウィンジンは、左手を前に出す。
痛いっ!
突然、室内に異常な冷気が満ちて、先ほどまでリンフィーナ覆って溺れさせようとした水が、矢礫のように鋭く凍って、不気味に並び、先端がこちらを向いている。
ウインジンがそれをしていることは容易にわかり、彼が手を下ろすと同時に、氷の刃は容赦なくリンフィーナに飛んでくると想像できた。
『だから言わないことはない。殺してしまおう』
毒づくソフィアの出現を、リンフィーナは必死で止めていた。
「待って! ウィンジン様、少しでいい。話したい」
「話すことはない。ここにはサナレスがいない。ラーディア一族は、約束を違えた」
問答無用で、尖った氷が矢のように飛んできて、リンフィーナは横の机を蹴った。机を盾にするのでやっとだが、それで全てが防げるわけではなく、左肩の皮膚が裂けた。
ソフィアは自分への攻撃を防がない。
気がついたことがあった。
ソフィアは痛覚がどうかしている。
リンフィーナにとっては痛みで思わず悲鳴を上げそうになったけれど、ソフィアにとってはかすり傷であるようで、彼女はリンフィーナの中であぐらをかいてほくそ笑んでいる。
『痛いなら、私と入れ替わって、こいつを始末させるんだな』
リンフィーナは机の裏側に身を隠しながら、ぐっと歯噛みした。
『でないと死ぬけど。あ、死んだらこの身体は私のモノか』
冗談ではない!
ソフィアの言葉が物騒すぎて、リンフィーナは焦っていた。
ソフィアの言葉はウィンジンに聞かれているはずもないのに、さらに氷の刃が飛んてきて、ウィンジンが言った。
「心配しなくとも、魔女が蘇生できないほど木っ端微塵に消してやる」
盾にしている机が、無数に飛んでくる氷の刃にいつまで持ち堪えられるのか。
ひえっ。
こっちの方が物騒かもしれない!
尖った氷が、木の机を削り始めている。
リンフィーナは頭を抱えてうづくまった。
「ウィンジン様!! お願い」
殺さないで。
まだ死にたくはなくて、リンフィーナは叫ぶ。
死にたくない。
それに、もうこれ以上、ソフィアに人を殺させたくもない。
「サナレス兄様は、約束を違える人ではありません!!」
だから信じて欲しい。
相手は神様。
願うことを諦めず、リンフィーナは両手を胸の前で組み合わせ、もう一度言う。
「サナレス兄様はラーディア一族の次代の神です!! 嘘などつくわけがない!」
少しだけ、攻撃の手が弱まっていくの手応えを感じることができた。
ここですかさず、リンフィーナは机の陰から立ち上がり、丸腰のままウィンジンに向かい合った。これで殺されてしまったら無念だけれど、自分の身体をソフィアに自由にされるくらいならば、これでいい。
「話を聞いていただけないなら、木っ端微塵、歓迎しますから!」
怖いからぎゅっと目を瞑ったままで、大きく横に両手を広げ、的になる覚悟をした。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
「戻った場所は、異世界か故郷」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー