突然死ぬかも
こんばんは。
書くのが好きで書いていますが、
なかなか進展しないことも、ままあります。
そういう異世界ファンタジーでも、ブログのような小説。
受け入れられる方、反応お願い痛hします。
※
ワギ・ヨースケという男、もしかすると悪い人ではないかもしれない。サナレスが師匠と認めたリトウ・モリと同郷のようであるし、サナレスとも旧友の関係になるらしい。
目つきは悪い。
リンフィーナは眉間に皺を寄せていた。
身にまとう雰囲気も、真っ当ではなさそうだ。
けれど、どうやら敵ではない、とリンフィーナは彼が用意した氷袋で手首を冷やしながら、そう思った。
「今日は僕たちがこのまま、交代で見張りをするので、リンフィーナは休んでください」
リトウにうながされて、リンフィーナは最初に宿をとった部屋に戻るよう、うながされた。
リトウとワギ2人は、部屋の外で声をひそめて、会話している。普通ならば聞こえない音量での会話のはずである。けれど魔女ソフィアが身体の中に目覚めてから、リンフィーナの聴覚も鋭い。部屋の寝台に寝転がっていても、意識を集中すれば、2人の話していることが聞こえてきた。
「今回の天災、そしてラーディア一族ジウスによる意味不明の鎖国があって、民衆の貴族に対する信仰がなくなっているな」
「ジウス皇帝がラーディア一族の総帥がいきなり鎖国し、サナレス殿下ですらラーディア一族をどうすることもできないんだよ。ラーディオヌ一族の総帥、アセス皇帝も、私的な理由で魔導士になった嫌疑をかけられ、不信感、買ってしまってるでしょ? それにここのところ立て続けに起こる地震もやばいし、この町では魚人化までーー。終期末ってこんな感じ??」
そう言ってリトウは吐息をつく。
「せめてーー」
サナレスがラーディア一族で存分に権威を振るえる立場に戻れば、とリトウは思っているようだった。リトウが話す口調には聞き覚えがない。旧友に対しての気やすさゆえかと思うが、ところどころ、リンフィーナには聞いたことがない方言だった。
ワギは、「せめてアセスがーー」ラーディオヌ一族の揺るがない存在で鎮座し続けられていたらなぁ」と呟いていた。
リトウもワギも、リンフィーナが最も大切にしている2人、サナレスとアセスを頼りにしていて、だから今彼らが自分の側にいてくれていることを感じ取った。
リンフィーナは寝台のうえで唇を噛んで膝を抱えた。
未だ、サナレスとアセスがいなければ何もできない自分がいる。そのような肩身の狭さなのに、ソフィアに呪われている間、自分ですら制御できない。自分の身勝手な行動に辟易していた。
ふと、部屋に常設されている、高級品ではない調度品に目が入った。鮮明には姿を映さない。曇った鏡に、自分の姿が映っていた。
それでも銀色の髪、蒼い双眸は、確認できた。子供の頃からとても嫌いな自分の姿だ。
鏡の向こうに、人間ではない魔女の異形の姿をした自分がいて、リンフィーナは萎縮した。
あなたは、いったい何を望んでいるの?
萎縮しながら、リンフィーナは鏡の向こうのソフィアに手を伸ばした。
身を起こして立ち上がり、近づいて触れた鏡。
手の感触はただの鏡だった。ただ指先に伝わる感覚は、冷たい。
そこに、コンプレックスだらけの自分がいる。
嫌いな銀色の髪。
リンフィーナが魔女と言われるソフィアに手を伸ばし、対話しようとしているその時に、圧倒的な力がその場を覆った。
身の毛がよだった。
何が起こったのか!?
一瞬で、空気の密度が薄くなった。
呼吸すら、できなくなる。
え?
空間は何も変わっていない。
宿屋の一室でしかない。
それなのに一瞬で水の中に沈められたかのような圧を感じ、全身を捕らえられた。
息が、苦しい。
なぜか襲撃は、もうないと思っていて、油断していた。
扉の外にいる、リトウとワギは未だ会話を続けていた。
異変に気づいてもらえていない!
自分がいる部屋の中だけが、侵食された。圧倒的に力が強い水の聖霊の力を感じる。高級精霊を使役する何者かによって、扉一つ隔てたこの部屋と外を分断された。襲われたのだ。
酸素が薄くなり、意識が遠のく。
誘拐される。
過去の記憶をたぐれば、ラーディア一族の皇女として誘拐は何度も経験してきたことが、今また起ころうとしていた。
誘拐されると酷い目に遭う。
それは何度か経験して、わかっていた。
無力な自分があがらえないことも、同時に悟ってしまっている。
「サナレス兄様……」
弱気になると、すぐに子供の頃の自分に意識が戻ってしまった。絶対的な存在である兄サナレスに手を伸ばそうとしてしまう。
苦しいよ。
兄様。
不遇な境遇を受け入れ、ただひたすらサナレスに助けを求める。
そうして待っていると、きっと兄は来てくれる。
信じていた。
かつて一度も裏切られることはなかったから、経験が確信になっている。
幼い頃、どれほど苦しくなっても、サナレスが抱きしめてくれて頭を撫でてくれて、背中を支えてくれていれば、いずれ眠ってしまうほどに安心した。
「リンフィーナ」
呼ばれる声は、なぜかこの時サナレスではなかった。
リンフィーナはずっと水の中に閉じ込められた苦しさを味わった。
苦しい、苦しい!
死ぬ時は、1人だとわかっているけれど。
苦しい!
おぼれて、死ぬと思った。意識が遠退きそうになる時に、自分の中のソフィアは、死に対して抵抗した。
「リンフィーナ、おまえ! 何のつもりだ!?」
ソフィアが一言発した瞬間、水の精霊の全ては恐怖心からソフィアに従った。
急に呼吸が楽になった。
リンフィーナは咳き込む。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
「戻った場所は、異世界か故郷」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー