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手当てする

こんばんは。


楽しみで書いているシリーズです。

長編です。


長らく書いていますけれど、コロナからこっち、オンライン上に投稿することを覚えました。

あとがきに順番を列挙しています。

        ※


 決意したリンフィーナが捕らえている者に刃を振おうとしたその時、すんでのところで剣先を止めたのはワギだった。閃光が光る。ワギの剣筋はサナレスのそれに似ていて、リンフィーナは目で追うのがやっとだった。


 カシャンという音と共に、自分の右手に衝撃が走った。

 痺れから、痛みが走る。


「あんたのやっていることは正しい。でもその考え方、こいつの前では禁止する」

 研いでいた刀がリンフィーナが逆手に握ったナイフを床に弾き飛ばし、ワギはリンフィーナに、リトウを見ろと目で合図してきた。


 リトウは顔面を両手で覆って、ぎゅっと目を閉じていた。咄嗟にリンフィーナを止めるほど、彼は俊敏に動くことはできないでいた。だが目を閉じることで、リンフィーナの行動に拒絶の意を表している。


 刀の重さと速さに、しばらく手がジンジンした。

 リンフィーナは自分の右手首を左手で支えた。次にワギが襲ってきたら、太刀打ちなりそうにないので、自然と身をすくめリンフィーナは二、三歩後退した。


「悪いな」

 ワギは謝罪した。

 意外な言葉だった。


「ーー」

 掌の痺れや痛みよりも、リンフィーナは安堵する気持ちが強かった。

 ワギに戦闘する意思はないようだ。それはリンフィーナの逆立った戦闘意識をおさめてくれた。

 

 それからリンフィーナがほっとした理由は、やはり、意図的に人を葬るという行為には抵抗感があったからだ。


 心の痛みと手が痛むことを天秤にかけた時、圧倒的に心の方が弱かった。

 リンフィーナは安堵した。その平和さ。なんとはなく抑えている自分の右手首に、リトウが手を重ねてきた。


「よかったーー。いえ、痛みますか?ーー大丈夫ですか?」

 狼狽しながら、リトウがリンフィーナに怪我がないかを確認する。


「リンフィーナ、よかった。ありがとう和木くん」

 リトウは感極まったのか、リンフィーナの手に重ねた彼の手が震えているようだった。いや、震えているのは、リンフィーナの手だったのだろうか。わからなかった。


「大丈夫。ちゃんと拘束して、もう一度同じことが起こらないように僕が考える」

 そう言って謝りながら拘束した男たちに、リトウは一呼吸おいて真向かった。彼の背中は、リンフィーナを庇うように、彼が捕らえた者達とリンフィーナの間に立ち塞がった。


「僕は対話で問題を解決したい。ねぇ君たち。君たちはいったいどうして、僕たちを襲撃しなければならなかったのかな?」


 リトウの背中から静かな怒りを感じた。けれど彼には確固たる信念があるようで、暴力のいっさいを禁じていた。言葉の暴力も然りである。


 ただ、彼が言うところの「対話」には、対峙する相手と何時間でも向き合う覚悟があることを物語っていた。

「さあ、僕は平和的和解になるために、君たちといつまでも向かい合うよ」

 丁寧に縛りあげた襲撃者を前に、リトウは真摯に向かいあった。


「和木くんは、リンフィーナさんを手当てしてよね。自分でやったんだからさ」

 まっすぐな主張は権力でも能力でも、剣の技術でもなくて、意識の高さだ。リトウの静かな主張に、ワギは諦めて吐息をついた。


「今日の襲撃はもうないだろう。俺は寝る」

 ワギは大きなガタイを少し縮めながら、手早くリンフィーナに氷を入れた防水製の袋を作って差し出した。

「ちょっと見せろ」

 それからおもむろに、リンフィーナの手首を左右前後に動かし、おそらく骨折がないかどうかを確認した後、吐息をついた。

「こいつで一晩冷やしてくれ」

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

「戻った場所は、異世界か故郷」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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