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戻って、目覚めて

こんばんは。

秋といえば小説執筆の季節です。


ーーというかもう、季節の移り変わりが異常で、もう冬のように寒くて、今年は夏から冬に一気に季節変化してしまったような気がします。


異世界転生、異世界逆転生が双方向に作用する世界観を描いております。

時代も、現代・過去・未来が行き来する、ネオファンタジーです。

長編で、後期部分に読んでいただける順番を載せておりますが、ひと作品毎にお楽しみいただけるように、考えつつ書いています。


ただ、書きたいものを書いているので配慮が足らなければすみません。

完全ファンタジー、オリジナル小説の長編です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


異世界逆転生から戻ったサナレスは、自らの身体を取り戻した。

やっと会いたい女人ヒトに会えると決意を新たにしたサナレスの前には、変わり果てた元の世界が目に映る。


永遠楽度と言われた、神の子が統治するその大陸は、魔女ソフィアの覚醒を発端として滅びの一途を辿っていた。


オリジナルのハイファンタジー。

考えてみればこの小説は私が小学校の頃から考えている世界観で、とても長い物です。


すっかり現実社会で社会人をしていたので、途中で書くことを途絶えさせておりましたが、コロナで外出自粛ムードになり、その頃から再燃して書いております。


シリーズ物です。

後書には常に読む順番つけます。

(そろそろ、番号振っていこうかなーーー)


        ※


「はぁはぁはぁ」

 サナレスは到底自分の鼓動とも思えない、荒い息と共に蘇生した。


「死ぬめに遭った」

 冥府から異世界転生し、命からがらこの世に戻った。

 そう主張するサナレスの経験に対して、目の前にいた漆黒の髪の青年はピシャッと冷や水を浴びせるように、間髪入れず否定してきた。


「いえサナレス、そもそもあなた自身が、その状況を意気揚々と作り出し、受け入れていたでしょうーー?」

 日頃寡黙な男である彼が、ボソボソと文句を言っている様子に懐かしさを覚えた。サナレスはあらためてこの世での自分の命がつながったことを確認した。


「今甦ったばかりの人間に、なんてことを言う……」


 別に意気揚々というわけではない。

 アセスは憮然とそっぽを向いた。

 確かに異世界転生を楽しもうという気持ちは、どこかに、多分、かなり、あったけれど。


 サナレスは彼の言葉を右から左へ聞き流しつつ、手足を動かしてみる。

 麻痺もなく、脳の神経細胞は順調に機能している。

 自分の手足だと認識すると、サナレスは本来の自分の身体に感謝した。


 橙子の身体に仮住まいしていた窮屈さは、今はもうない。


 大きくて、長い手足。

 日本の女子という橙子に内在していたときは、小さい彼女の身長では視野さえ狭く、向こうの世界の平和で平凡な街の雑踏にでさえ、威圧感を感じていた。


 だが今、サナレス・アルス・ラーディア自身の身体に戻れたのだ。

 やっぱり馴染むーー。

 らしくはないと思うけれど、サナレスはほっと安堵の息をついた。


「心配をかけてすまない」

 最初に発した言葉は、目の前のよく知った男、アセスに対しての詫びである。


「珍しくーーあなた……、殊勝な振る舞いなんですね」

 

 急死に一生を得るという経験をした。だから何かしら感慨ぐらい覚えるのだと言い訳しようとして、サナレスはその言葉より優先すべき確認事項を思い出し、口にしていた。


「で、リンフィーナはどこだ!?」

 謝罪する気持ちに嘘はない。けれど知りたいと流行る気持ちがサナレスの発言を性急にしており、そして横柄にしていた。


 目の前の男、漆黒の髪、その双眸の青年は女人のように美しい顔をしている。生粋の王族、彼は薄い唇の端を少し上げると、サナレスからの質問を予測していたかのように吐息をついた。


 ラーディオヌ一族総帥、アセス・アルス・ラーディオヌ。

 この世において、サナレスが能力を認めている数少ない者の一人である。


 非の打ち所がない容姿のアセスは、サナレスにこう答えた。

「ーーすみません」

 その言葉の続きは、想像通り不穏だった。

「きっとあなたに、開口一番、このことを問われるだろうと想像できたのですが、ーーリンフィーナの所在を、私は把握していないのです」


 せっかく元いた世界に戻ったというのに、軽い絶望がサナレスを襲う。

「おまえが……、把握していないだと?」

「……すみ、ません……」

 消え入りそうな声で事実を告げたアセスは、気まずいのか長いまつ毛を伏せて視線を床に落とした。


「おまえが知らなければ、いったい誰が彼女の行方を知っている!?」

 少し声を荒げてしまうのを、サナレスはギリギリの理性で抑えていた。自らに対して「気持ちを静めろ」と言いきかせる。アセスを責めるのは筋違いだ。

 それはわかる。


 ーー私が、不甲斐ないばかりに。

 サナレスは心の中でつぶやいた。


 念仏のように繰り返し繰り返し、でも負の感情で構成された言葉が、サナレスの心の中にねっとりと渦巻いている。

 

「あなたが生死を彷徨っていらっしゃる間、何があったのか、私が順を追ってお伝えしますね」


 アセスとは、もう少しだけ打ち解けた関係だったはずだ。そういうふうにサナレスは記憶していた。

 でもアセスが苦々しく眉間に皺を寄せて語る内容に、かつてラーディアとラーディオヌ一族という兄弟氏族の間で長らく続いてきた溝を感じる。


 直感的なものだった。

 互いにリンフィーナという一人の少女を大切に思う間柄で生まれた、競争心のそれとは違う余所余所しさがある。距離感が、サナレスの目を少しだけ細めさせた。


 アセスは語った。

 

 まず彼が口にしたのは、リンフィーナがソフィアという魔女に身体を乗っ取られ、連れ去られたということだった。


 はぁ。

 また魔女だ。

 サナレスはアセスを気の毒に思う。


「彼女は昨夜までここに居たのです」

 アセスと一緒に、サナレスが戻ることを彼女は信じて待っていたと伝えられた。


 リンフィーナの呼びかける声は、魂が身体を離れている間中ずっと感じていた。サナレスがアセスの言葉を疑う術もない。

 彼女がここを離れた理由や、時間的に起こった事象の詳細を知りたかった。そう思うサナレスに、アセスはメモを手渡してくる。


「すべて記しています。あなたならきっとそう要望すると思って」

 アセスは苦笑する。

「まだ、そう遠くには行っていないと思います。通常の、ーー女人の足であればという限定条件がありますがーー」

 アセスが言いにくそうに付け加えた言葉から、アセスのショック状態を察知した。


 よく見れば、彼はその美しい容姿に似つかわしくないほどボロボロに傷ついていた。

 以前は絹のように光沢のある艶やかな長い黒髪が、ラーディオヌ一族の国宝と噂されたほどだ。それなのにざんばらに切られた髪。以前の面影もない。顔にかかる髪の毛が、まだ血の滲む額の傷を隠している。


 顔や肉体、彼の造作の美しさは、髪の毛などは飾りの一つが取れた露ほどの出来事だと思わせたる微々たる変容だったが、アセスは見たところ負傷していた。

 それは目につく。


「やられたのだな?」

「ーー」

 呪術でやられる。

 それは呪術で繁栄を誇ったラーディオヌ一族において、最年少の天才呪術師と言われた若き総帥であるアセスにとって、どれほど彼のプライドを傷つけ、受け入れ難いことだったかは、容易く想像できた。


「すみません。力不足で、彼女を護るどころか、魔物に拐かされる彼女を留め置くこともできませんでした」


 アセスのことだ。

 リンフィーナを力づくで止めるのは難しかっただろう。アセスはリンフィーナに好意がある。だから彼女を傷つけるリスクを考えたはずだ。本気でやり合ったら互いに身体が無事であったかどうか。サナレスは慮った。

 すまない。

 サナレスは心の中で手を合わせた。


「ここは? 今どこにいる?」

「星光の神殿奥です。ラーディオヌ一族であなたの身体を守り切ることは難しく、私とリンフィーナでここに運びました。神の氏族同士、和平の約定が結ばれたこの地であれば、あなたを安全に待つことができると考えました」


「そうかーー」

 サナレスが状況を判断するにはさほどの時間も要らなかった。


「ですがサナレス……、私の代わりにヨースケ・ワギというものがリンフィーナを追っていきました」

「和木がーー?」

「サナレス、その発音……??」


 日本に転生した名残で、ヨースケ・ワギに対して、異世界の然るべき発音で名を呼んでしまった。刹那の音声。アセスはそれを聞き咎めて眉根を寄せている。


 和木洋介。

 古くからの知り合いで、世話になった男の名が、転生していた日本という場所にはよくある名前であることを、サナレスは気が付いていた。

 百年前、初めて日本刀という刀を、サナレスに献上してきたのも彼だった。


「そうか、和木がリンフィーナの側にいるんだな……」

 彼が追ったのは、リンフィーナなのかどうか、わからなかった。彼は気まぐれな商人だ。もしかすると彼は、リンフィーナより、魔女裁判で処刑されたソフィアに興味を持っただけなのかもしれないのだ。


「ーーそれでお前は?」

「私は今、ラーディオヌ一族を統べる立場にあります」

 サナレスが確認する内容は、ラーディオヌ一族の国王に対してのものだと、アセスは理解していた。

 だからこそ、アセスはこの場を離れず、リンフィーナを追えなかった。


「だから和木がお前の代わりに行ったのか?」

「ーーいえ。彼は気まぐれで、到底私の代わりなどにはならないでしょう」

 確かにその通りだ、とサナレスは首肯した。

 それでもアセスは、ラーディオヌ一族を滑る立場を手放さなかった。それがアセスがここにいるという事実だと思った。


「サナレス……」

 アセスが言わんとすることは手にとるようにわかっていた。


 時はすでに熟している。

 悪いふうに表現するなら、アルス大陸は今、疫病、経済、国と国を揺るがすあらゆる面で、膿んだ果実が破裂しそうなほどの緊迫感がある。今にも人の国と国が戦争を起こし、神の氏族同士もまた同じ状況になっている。

 地震と疫病がもたらすものは、人の生活を蝕んで貧しくしており、この世界では滅亡でしかないと認識される。


 サナレスは分かっていた。

 それなのに最適解で行動した目の前にいる男、アセスに軽く絶望している自分に、サナレスは驚いた。


「ーーわかった」

 サナレスは立ち上がって歩き出し、背後にいるアセスに顔を向けず、肩先でひらひらと手を振った。


「ですがサナレス……」

「いい!」

 声のトーンが想像以上にキツくなった。

 自分への苛立ちが抑えられず、それが思念となってアセスに向いてしまう。


 アセスだけの判断ではどうにもならないことなのだと、サナレスは知りすぎた国の事情を加味して、ぐっと黙った。

 立ち止まったサナレスは半身で振り返って、自嘲気味な微笑みを返す。

 アセスの立場であれば。

 言葉も飲み込んだ。

「ーーそれでいいんじゃないか?」


 国と国を左右するような極限状態にあって、一族の総帥であるアセスがとった行動は、決して間違っていない。


 現状ラーディア一族の王位継承権が残っている自分が望まれるのも、アセスのようにラーディア一族の統治なのだろうと、サナレスは理解している。


 アセスが下した決断は、正しい。


 国と国、一族と一族が争わずいられ、和平を結ぶことを最優先に考えるなら、サナレスはこのまま、ラーディア一族を統治しに自国に戻る。長い目で見て、それがリンフィーナの幸せになるのかもしれないと、脳裏には彼女の笑っている顔が浮かんだ。


 でも、サナレスはボソッと感情を口にした。

「ーーない。それはない」


「サナレス?」

 アセスはまず、ラーディアとラーディオヌ一族、自分たち二人の総帥が和平を結ぶことが先決だと、理性的に提案していた。


「でも、それを私は全面的に受け入れないよ」

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

「戻った場所は、異世界か故郷」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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