影山さんのポーカーフェイスを崩したい!
「なろうラジオ大賞4」応募作品です。
現代恋愛。ラブコメっぽいかもです。
「か、影山さん! 俺と付き合ってください!」
「ごめんなさい」
「ぐはぁっ!」
それは、もはや放課後の恒例行事となっていた。
高校生にもなるとどいつもこいつも惚れた腫れたと言い出して、そこここでカップルが生まれたりしている。
年頃だ。恋のひとつぐらいするだろう。
俺はそんな奴らをどこか冷めた目で見ていた。
それはなぜか。
それは、俺の恋はきっと実ることがないからだ。
「影山さん! わいと付き合ってほしいどす!」
「ごめんなさい」
「ごわすー!」
今日もまた誰かが玉砕した。
才色兼備。
清廉潔白。
天衣無縫。
いやマジ天使。
彼女を形容する言葉は枚挙にいとまがない。
黒髪ストレート。色素の薄い大きな瞳。
スレンダーながらも出るところはそれなりに出ている鬼のスタイル。
おまけに頭めっちゃいい。
そしてポーカーフェイス。
話し掛ければわりと普通に話す。
けっこう気さくな方なんだと思う。
でも、その表情が変わっているのを見たことがない。
「……山田くん。これ」
「え!? あ、ああ。うん」
日直の日誌を渡されただけなのに謎の動揺を見せる俺。
おいおい。間近で見たらマジで美少女だな。直視できんわ小生。
「か、影山さん! お、俺と付き合ってください!」
「……」
これは俺の告白。
悪友に唆されて、気付いたら放課後の教室に二人きりにさせられていた。
「……山田くん。私のこと好きなの?」
「はい! 大好きです!」
夕日に染まる教室も、俺の顔面も真っ赤。
「……いいよ」
「ですよねー……うぶふぇっ!?」
変な声でた。
「な、なんで?」
顔を上げると、いつも通りポーカーフェイスな影山さん。うん。お美しい。
「……この前、川で溺れそうになってた猫助けてたでしょ。ずぶ濡れになって」
「あ、うん」
「……あと、迷子を交番まで送り届けて、お母さんが来るまで一緒にいてあげてたよね。家近いから。山田くんのそういうの、よく見る」
「あ、はは。なんか、放っとけないんだよね。損な性格でさ」
「……そういうとこだぞ」
「え?」
「なんでもない!」
くるりと背を向け、教室のドアに向かう影山さん。
その耳が真っ赤な気がするのは夕日のせいだろうか。
「……付き合うなら、一緒に帰ろ」
そう言って、背を向けながら右手を少しだけこちらに差し出す影山さん。
「ぐはかわっ! ……う、うん!」
俺は変な叫び声を上げてからドアに走った。
夕焼けに照らされて、手を繋ぐ二人の影が廊下に伸びる。
いつか、影山さんのポーカーフェイスを崩してみたいものだ。