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さよなら人生。  作者: 水乃戸あみ
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無茶なお願い

「亮介。亮介」

「う、ん?」

 陽の眩しさに目を顰める。

 給水塔と校舎の影で体休める俺を、覗き込む人。幽霊。

「登志子ちゃん」

「その登志子ちゃんってのやめて下さい。なんか馬鹿にされてる感じします」

「そんなことないんだけどね。おはよう。登志子。よく寝れた?」

 くそ。抵抗あるな。

 呼び方指定した本人はすっきりした顔してるけど。

「ええ、もう快眠でしたね。わたし史上マックスでした。ここの群れに今後混ざらなくていいんだと思うと、今朝からニヤニヤが止まりません」

「ああ」

 起き上がり、下を見てみれば、ぞくぞくと登校する生徒たちがいた。

 広いグラウンドでは運動部が汗を流している。

「一度は言ってみたかったんです」

 屋上の縁に立ち、冷めた瞳を向けている。

「なんとなく分かるけど言ってみて」

「ゴミが!」

 両腕を大空へと広げ、学び舎へと吸い込まれていく生徒たちを睥睨し、俺でも知ってる某有名アニメ映画のセリフをもっと短縮して吐いた。

 元ネタのがまだいいな。

「登志子は人間性に問題があるね」

「人間、蓋を開けてみればみんなこんなもんです。ところで」

「なに?」

「……上手く言えないのですが」

 登志子が恥ずかしそうにその場でもじもじし出した。肩を竦めたり、両手を弄ったりしてみせ、しばらくそのまま待っているとやがておずおずと切り出した。

「……亮介は……わたしに対して……負い目がありますよね?」

「言い方……。こっちから切り出すつもりだったからいいけどね。うん。あるよ。俺に出来ることなら何かしてあげたいと思ってる。大したことは出来ないだろうけど」

「引け目の方が言い方に角が立たない感じですか……?」

 小心者だった。

 意味合い的に引け目の方が角が立つと思うけれど。

 恐らく字面だけで言ってるんだろうな。

「そこはそんなに引っかからなくていい」

 登志子は安心したようにほっと息を吐く。

「そですか」

 そうしてぐっと言葉に詰まる。

 なんだろう?

 ここまで、ある意味良い性格しているのに。よっぽどのお願いなんだろうか?

 問題ない。何かしてあげたいというのは本当のことなんだから。

「いいよ。言ってごらん」

「三つあるんです」

「多いな」

「一つ目は――」

 俺の反応など聞いてないとばかりに喋り出す。


「わたしを生き返らせてください」



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