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さよなら人生。  作者: 水乃戸あみ
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さよなら人類

「鬱だ死のう」


 そうだ。

 現実が辛いなら逃げてしまえばいいじゃないか。

 だってそうだ。友達はいない。好きな漫画は連載休止。楽しみにしていたアニメは二期決定から音沙汰無し。推しのアイドルグループは主要メンバー総抜けでズタボロ。

 ネットはクソ。

 趣味はたくさんあっても八方塞がりな感じ。

 ……友達いない。

 いにゃい。

 いにゃぁい。

 いにゃいよおおおおほほほおおおお! うほほほほー!

 はあ。お昼をこんな……ぼろっちい旧校舎で一人食べてる自分って。一体。

 入学早々。

 未来かぁ……。

 働くのやだし、年金だってどうせ貰えないってネットでいっぱい言ってたし。でも生活保護はプライドが許さないし。ギャンブルは向いてないだろうし。体売るとかは吐き気するし。だいたい、私の体で喜ぶ男子が世にどれだけいるのか……。

 お父さんもお母さんも好きだけどいつかは死んじゃうんでしょ? ミケだって後何年生きてるんだろう?

 はあ。楽しいことだけ見ていたいしやりたいけど、楽しいことなかなかないし訪れない。

 自分から向かうのはちょっと怖いよしんどいよ。

 勇気ないもん。

 鬱だあ。

 このクソボロい校舎の屋上から一人飛び降りてやるんだよ。そうだよ。

 そして先生が言うんだ。

「あれ? そこの空席誰だっけ? 小相澤かあ(名簿見ながら。私の顔は薄ぼんやり)。どこ行ったか知ってる奴いるか? はあ(ふるふる首ふるみんな)。ま、いいか。授業やるぞー」

 そう。

 私の扱い、どうせそんなんなんだよ。発見。飛び降りから三日後。とかね。とかね。

 とかね!

 知らんけどさ。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁあ」

 お友達。

 一人くらいできるかなあって期待してたんだけどな……。

「死の」

 旧校舎。

 三階の三年一組。

 こ汚い埃だらけの教室で最後の晩餐(今朝お母さんが作ってくれたお弁当。ああっ! お母さんっ! プチトマトは入れないでってあれほど言ったのにっ! 温くて微妙に嫌なのっ!)を、残らず食し、私は手を合わせる。

「ごちそうさま」

 片し、教室を出、廊下。左右を見、階段へ向かう。上を見上げる。暗い。ふらりふらりぎしぎしぎしぎしと歩を進め、辿り着くは一枚の扉。

 開いてみ……。

「硬っいぃ! ううん……ちぇすとっ」

 蹴っ飛ばしたら開いた。

 というより、扉が壊れた。向こう側へと吹っ飛んだ。……いいかーどうせ死ぬんだし。私のせいじゃないもーん。

「きたな」

 そりゃそうか。風雨。まして旧校舎。お掃除なんて誰もせんよね。

「ま、お似合いか」

 なんか合間合間から草とか生えてるし。うへ。びちゃびちゃしてる。昨日の雨か、これ。うひょう。なんだよこれきたねーなー誰か掃除しろよー。おい業者ー。うしゃ。うっわ。ナメクジ踏んじゃった。何でこんな所に。ああ……ああ……無理無理無理。死ぬもう絶対死ぬ。

 フェンスに辿り着く。

 お誂えしたように一部破れてる。まるで「はい、用意しておきましたから」と云わんばかりだ。ふふふ。神様もわたしを死なせたいらしい。ファッキューゴッデス。

 いいよ。やってやる。

 くぐった。

 下は見ない。

 前だけ見る。

 そこには抜けるような快せ……。

「ああ、青空――だったら良いのに曇天とは。これぞわたし。へっ」

 乾いた笑いが出た。

 死ぬ時の作法ってなんだろう。靴脱ぐ……のは汚いからやだな。遺書、ああ、書いておけばよかったな。なんかメモ帳……あった生徒手帳。これに……。

「お父さん。お母さん。ミケ。今までありがとう。わたし、死にます。いえ。特に虐めとかじゃないんですが。未来に何の希望も持てないのと、あとえっと、踏み出す勇気がないのと、ええっと、誰もわたしを認めてくれないのと、あとあと、友達がずっとできなく……」

 ……ああ、なんかお腹痛くなってきたな。

 ……緊張かな?

 飛び降り死体が、脳漿ならまだしも糞尿まで撒き散らしてましたとか嫌だし、一回トイレ行っとくのも有りかな? そうはならん? 首吊りか? それ?

「よし。やぱおトイレ。後ミケに最後のお別れ言ってから明日明後日……は土日だから来週再来週辺りに再挑せ――」

「早まるなあ!」

 んあ。

 ん?

 声ならぬ声(何言ってんだわたし。でもそう聞こえた。耳鳴り?)が、聞こえてわたしは振り返った。

 ……。…………。………………。

「ひゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 わたしは落ちた。

 わたしは死んだ。


 さよなら人生!

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