竜宮城の統べる星2
縄梯子まで急いで泳ぎ、珊瑚の壁面の縄梯子を登っていると、想像したこともない大きな咆哮が聞こえて来た。まるで、月や星が震えだすかのような音量だった。そう……想像を絶する巨大な龍の咆哮だ。
東龍によって、縄梯子から引き上げられると、
「武! こっちだ! 急げ!」
急いで、四季彩る廊下を東龍と走り、幾本もの葉が舞う柱を通り過ぎていくと竜宮城の正門に辿り着いた。
空を見上げてみると、七色の月がそれぞれ三つ宙に浮いていた。
大気は常温くらいだ。
寒くもなく。熱くもない。不思議なところだった。
目の前には大きな水色の壁があった。心臓のようにドクドクと脈打ち、空を見上げると、雲のような髭のようなものに、虹が渡っていた。
「な!?」
俺は驚いて口を開けた。
超巨大な龍がこちらを遥か天空から覗いていた。
東龍は平然と俺の肩を叩き。
「ようこそ。龍神の住まう惑星へ……」
「あんなの……どうするんだ……」
俺はさっきまでの強気が急激に弱気に変化した。身体が震えて動けなくなった。
冬の枯葉が敷き詰められた広々とした平地にポツンと佇んだ。竜宮城の城下町が後方に見え。今はその反対側の平地で俺は水淼の大龍と対峙していた。
けれども、すぐに恐怖に打ち負かされていた俺の脳裏には麻生の顔が過った。すぐさま気合いを込めてタケルになり刀はあるかと東龍に聞いた。
「ほらよ。地球での戦いの時に俺を斬った刀だったな。さあ、勝ち負けなんてどうでもいいってほど……楽しもうぜ!」
東龍から渡された鞘に収まった刀はあの時の雨の村雲の剣だった。
「よし!」
俺は鞘ごと受け取ると、雨の村雲の剣を腰に差し居合い腰になった。
「待て! 一人で行くのか!? 私たちも加勢するよ!」
俺の後ろから声が聞こえ、振り向くと目の前には傷の治っている満身創痍だった北龍、南龍、西龍。魚人の大軍があった。
四海竜王がそれぞれ龍の姿になった。その大口から牙を剥いて、大気が振動するほどの咆哮を上げた。水淼の大龍もこちらに目を向け、大口を開けのっそりと近づいて来た。
俺はありったけの気で居合い抜きを放った。大海ごと大気ごと一刀両断にした。大海は二つに割れるが……。
「いざ!」
四海竜王も魚神の変化の魚人たちも水淼の大龍に突撃した……。
俺は雨の村雲の剣で、水淼の大龍の胴体に斬り込んだ。
ぱっくりと切り裂かれた肉から血が壮大に噴出する。
けれども、水淼の大龍の遥か上空の顔はここからは見えないが、俺には平然としている顔のように思えた。その証拠に虹の掛かった髭がそよ風に乗って、ゆらゆらと靡いていた。
高速で西龍が八つの口で同時に噛みついた。
だが、轟々と荒くなった大海から想像を絶する大きさの尾が振り回された。山々のような尾は西龍の隣の南龍にぶち当たった。
南龍は遥か後方へとその巨体が吹っ飛ぶ。
それを見かねた北龍と東龍が立ち向かうが……?
俺は西龍の頭の一つまで飛翔し、八つの首の一つから飛んで、上段から落雷と共に、水淼の大龍を深く斬った。
水淼の大龍が暴れ出し、それは海上地震を発した。
その衝撃の中心から大波が四方へと押し寄せる。
膨大な量の水泡が天空を埋め尽くした。
避けられず濁流と化した波の衝撃と重さで身体をしたたかに打ち。
俺は海中へと押し流されていった。
水淼の大龍が向きを変えたのだ。
体中の痛みで武に戻された俺は必死に海上へと浮上するが……。
水淼の大龍の首の向いた先は、竜宮城だった……。
「武よ! あそこを見ろ! 乙姫様が渦潮を発生させたんだ! 危機なんだ! この上なく! すぐに渦潮へ向かってくれ。あの青い星の力を借りるんだ!」
東龍もいつの間にか大海の海面上で人間の姿になっていた。
俺と同じく大波に流されて怪我をしたのだろう。
海面上まで昇った俺に向かってそう叫んでいた。
周りを見ると、魚軍は全て押し流され、四海竜王は皆、満身創痍だった。
「わかった! みんな無事でいてくれ!」




