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水の失われた神々  作者: 主道 学


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四海竜王

 一方。

 

 ここ鳳翼学園では、地姫が率先して1000を超える龍を迎撃していた。今は鳳翼学園は無数の渦潮で囲まれているのだ。

 恐らく、乙姫もすでに武たちに気がついているのだろう。

 龍の襲来が激化しているからだ。

 地姫は知っているのだろうが、もはやこうなっては……。

 地姫は自衛隊と虚船丸と共に戦っていた。轟雷を降り注ぎ数多の龍を灰塵と化している。

「まだです!」

 地姫は虚船丸の怪我を負った武士たちを回収している巫女や教師たちに言った。長くくるしい戦であった。

「地姫さま、後ろから龍が三匹も来ます!」

 一人の巫女が叫んだのだ。

「地姫さま、真横から、いえ、挟まれました!」

 別の巫女が叫んだ。

「はっ!」

 地姫は目を瞑って、遥か後方と四方にいる龍の群れに同時に轟雷を幾つも落とした。地姫の額からは汗が滲み出ていた。

 傷を負ったものは、自衛隊にも現れ、生徒たちや麻生と卓登が傷の手当てをしていた。

 龍を迎え撃つ激しい銃撃が弱くなりつつあった。

 自衛隊の弾がなくなりつつあるようだ。

 なにやら地姫もかなり疲れがで始めていた。


 絶望かと思われたその刹那、渦潮から尽きることなく現れる龍に麻生は何かに閃いた顔そしている。何かに気が付いたようである。


 ここは教室。

 麻生は怪我人の手当てをいそいそと一通り終えてのこと、二年D組のベランダに立つ地姫と田嶋に何かを伝えに行った。

「何に気が付いたんだ?」

 麻生の後ろにいる卓登は考える癖で頭を突いていた。

「あの、ちょっといいですか? 地姫さん。田嶋さん。渦潮から龍がでてくるから、渦潮に爆弾か何か渦潮の形を変えるものを投下してみてください」

麻生の真面目な声音に、地姫は目を見開いた。

 これまで、自衛隊も虚船丸の武士や巫女も正攻法で戦っていたというのに、麻生はナポレオンのような戦法を告げたのだ。

 余談だが、私の知っている限り。ナポレオンは小ジブラルタルという要塞を手薄な後方から砲撃をしたのだ。その当時は誰も思いつかない戦法だった。

 地姫は額の汗を拭って、感心していた。

 田嶋はニッコリと笑んだ。

「邪道……かしらね。その方法は?」

「勿論、ありですよ。手投げ弾をありったけ投げ込んでみます」

 数刻後には、渦潮へ応援のヘリコプターの群れが大量の手投げ弾を投下し、幾つもの渦潮の原形を崩した。


 その後、龍は再び昇ことがなくなったようだ。




 一方。


 ここは竜宮城である。遠い遠い南の海の底。

 武たちに気付いた乙姫を見るため。私は竜宮城の最奥へ向かうことにしたのだ。

 四海竜王と乙姫は円卓を囲んでいた。四方を囲む壁には四季が彩る巨大な窓ガラスがある。ガラスの向こうには東、西、南、北とそれぞれ春夏秋冬の木々と花々。そして、秋には紅葉があり冬には枯れ木がある。おとぎ話のような風景なのではなく、ここには美しき現実があるのだ。

「もう、俺が行ってもいいな」

 東龍という名の美形な男子が言ったのだ。東の席に座る。それはそれは銀髪の美しい男である。

「じゃあ、私は学園を」

 南龍という名の紅顔の少年が言った。南の席に座る。とても可愛らしい男の子であった。

 他に北龍と西龍がいる。当然、北と西に座っているが、二人ともとりわけて美形の男子である。

 乙姫は静かにこくりと頷いた。

 実は私も……。いや、今は言うまい……。急いで学園を見に行かねば。恐らくは、地姫と自衛隊たちでは歯が立たぬ。


 私はしばらくして鳳翼学園へと辿り着いた。

 四海竜王の南龍はまだ来ていないが、さすが地姫。感づいたようである。

 地姫は、武士たちや教師たちに、2年A組付近に停泊している虚船丸からありったけの神鉄を自衛隊の教室へと運ばせている。

 これで虚船丸の神鉄は全て無くなったのだろう。当然、弾がなくると自衛隊を抜いて、 地姫たちだけで戦わなければならないのだ。

 なんとも分が悪い負け戦であろう。

 恐らく南龍は私の知る限り齢1万年。

 千年の時を十は越えているのだ。

 その姿も、紅顔の男の子ではない。

 恐ろしきは、その真の姿の巨大な龍であるのだ。 

 地姫は、戦の準備の途中、麻生を探していた。


 麻生は卓登を連れ、2年D組に来ていた。

 生徒たちや教師たち、それと生徒たちの父母は忙しいようだ。皆、神鉄のことで頭が一杯のようである。

 麻生は神鉄のナイフのことで宮本博士と話し込んでいた。神鉄のナイフは何やらプラスチックの容器に入れている。他の研究員は皆、ディスプレイに向かっていた。

「麻生さん?」

 地姫の驚きの声も無理はない。

 地姫は神鉄を入れたプラスチックの容器を怪訝に見ているが、内心この緊急時に何をしているのかと思っているのだろう。

「これに近いものの量産は、この設備ではどうかな? 嬢ちゃんの賢さはわかったが、かなり難しいぞ」

 宮本博士が唸っていた。

「でも……。地球にある物質だし……。化学式がわかれば……弾丸用の小さな神鉄が増えれば」

 麻生は卓登を連れ、どうやら神鉄を量産しようとしているらしい。

「化学式は……どうだ?」

 宮本博士の言葉に、かなり細い研究員が首を傾げた。

「あの……測定しましたが……元素記号Feのただの鉄です……」

 かなり細い研究員は怪訝に言った。

「? 鍛え方によるのだ……いや、違う。精製の仕方だ」 

 宮本博士の言葉に、地姫は頷いた。

「ええ、そうです。山の麓にある渦潮から上がった鉄を海水と塩で洗うのです」

「?」

「ええ、ですから……」

 地姫が珍しく困った顔をした。

「あの、宮本博士……。多分、渦潮から上がっているから……地球にはない物質なんじゃ……量産は無理みたい……龍退治は鉄砲では無理そうです」

 麻生の言葉に宮本博士と他の研究員が頷いた。

 それもそうである。

 神鉄は龍に通用する唯一の普通の人間の武器である。

 なくてはならないのだ。

「うーんと、それでは地姫さんにお願いがあります。お願いする前に聞きたいんですが、地姫さんの雷ってどのくらいの距離まで落とせますか?」

 麻生の表には出さないようにしている不安な声音は、周囲に感づかれ不安を伝達してしまったが。

「針に糸を通すような正確さは狙えませんが、100キロは……」

「凄い! それなら、大丈夫ですね」

 麻生の今度は安心しているかのような声音に、周囲からすぐにホッとした安堵の息が漏れ出した。

 地姫は首を傾げる。

 田嶋まで真剣な顔で麻生の傍まで歩いてきた。 

 教室の外の興味本位で立ち聞きしていた生徒たちも、麻生と地姫の美しさに目惚れながら静かに聞いている。

 ここ2年A組は、もはや麻生のために作戦会議室になったようである。

「龍の大きさにもよりますが、まず地姫さんの雷で渦潮が出現したと同時に渦潮の形を崩します。それから、形が崩せなかった渦潮には、自衛隊や武士さんたちが牽制をします。つまり、巨大な龍が来たとしても渦潮からださないのです。最後には倒すのではなくて、根気で追い返してしまいましょう。幾度も幾度もと渦潮を崩して諦めさせる。それが私の考えた作戦です」

 麻生の静かな声の作戦に、宮本博士と地姫と田嶋はしっかりと頷いた。


 ここは鳳翼学園から南へ約60キロの地点の海域。

 雨の降りしきる暗き海に巨大な渦潮から黒い物体が現れた。いや、昇った。その巨体は体長百メートルに至る。まるで山のようである。

 無数の渦潮がその黒き物体の近くに突如現れた。けれども、幾度もの轟雷によって、それぞれの渦潮が崩れ始めた。

 黒き物体は憂いの表情をしながら、鳳翼学園の方向へと向かう。その巨体の周囲には数多の龍が何度も昇り始めていた。


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