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奪われた日常
やはり自分はぼっちのままでいれば良かったのだ。
なんて、後悔したところで今更遅い。
目の前で起きている光景に明るいオレンジ掛かった茶色系の猫耳にふわふわで無造作な同じ色の髪を持つ獣人の少年は暫し呆然となる。
『居たぞ!』
『この薄汚い泥棒猫がっ』
『ツグ!逃げろっ!』
目の前で同じくらいの年の猫の獣人の少年が男達に捕らえられる。
緑の猫目、青みがかった灰色の猫耳に、灰色と青色の縞々の髪を後ろで一つに結わえた少年が叫ぶ。
その声に弾かれるようにして茶色の猫は逃げ出した。
『待て、逃げるなっ!』
『おいっ追うんだ!一匹たりとも逃がすなよっ』
***
「なー夏木」
「何でしょう」
「猫が飼いたい」
「またそれですか……駄目だと言ったでしょう」
眼下に広がる海が見える高台にある大豪邸。
広々としたリビングでソファに寛ぎ、ウェーブがかったべージュ色の髪を掻き上げた彼──成海 麗央は不機嫌そうに眉を寄せる。
「どうして反対するんだ」
「貴方、猫アレルギーでしょう」
もう何千何万回も繰り返されたやりとりに、夏木は溜め息を吐き、麗央は悔しそうに歯軋りする。