暗い森
『シュネムバル王国の辺境の森にて』
邪教団の洞窟を抜けるとそこには鬱蒼とした森が広がっていた、木々が陽の光を覆い隠し昼間でも常に薄暗くじめじめとした陰気な森だ。
まあ邪教団の隠れ家があるようなところなんて大体が陰気な場所だと思うが。
「〜ーー〜〜ー〜ー〜ー」
訳「いや~ 現世は本当に清々しいな」
「清々しいですか?結構陰鬱としてると思いますけど」
「〜ーーー〜〜〜ー〜ーー〜ー」
訳「冥界に比べたらここは命と暖かさに溢れてるよ」
「へぇ~ そうなんですか」
「〜ーー〜ーーーーー〜〜〜ーー」
訳「冥界に溢れてるものといえば血と肉と骨あと淀んだ魂ぐらいさ」
「よくそんなところで暮らしてましたね」
「ー〜〜ーー〜〜ー〜ー」
訳「気づいたらそこにいたからね 仕方なくさ」
「〜ーーー〜ーーーー〜〜ー〜ー」
訳「それに住みやすくするためにいろいろと努力するのは楽しかった」
「楽しかったって今はもう楽しくないんですか?」
「〜〜ーー〜ー〜ー〜ーー〜ーー」
訳「もうやり尽くしたって感じかな」
「〜ーーーー〜〜〜ー〜ーー〜」
訳「血の海も作ったし肉の山や骨の宮殿も建てた」
物騒なDIYである
「へぇ~ すごいですね」
「〜ーー〜ーーー〜ー〜〜ー〜ー」
訳「あぁ あの頃はすごく生きがいを感じていたよ」
冥界の王が生きがいを感じるってすごく矛盾してる気がする
「〜ー〜〜〜ー〜ーー〜ー〜ーーー〜」
訳「まぁ それに飽きて今こうやってあてのない旅に出たわけだけど」
「そうですね〜 私も行くところがないですしこうやって同行させていただけて嬉しいです。」
「〜ーーー〜ーーーーー〜〜〜ーー」
訳「なに旅は道連れさ、一人旅もいいけどこうして話しながら行くのもいいものだよ」
「はい〜 そうですね〜」
呑気な一行である。そんな一行を木々の隙間から隠れて見つめるものが一匹
さて邪教団が隠れ家を作っていたこの森、正式にはサーカタール大森林と呼ばれているがこの森には3種の頂点捕食者がいる。
屈強な肉体と硬い装甲を持つクマ ハンマーベア、強力な猛毒と再生力を持つトカゲ マッドリザード、そして今一行に狙いを定めている、鋭い鎌と高度な擬態能力を持つカマキリ ハインドマンティスである。
「キシャー」
マンティスは完全に油断しているであろう一行に向かって鎌を振り下ろす。
次の瞬間には血飛沫とともに二人の頭部が宙を舞う、はずだった。
ガキィン
素早く振り下ろされた必殺の鎌はなんと片手で受け止められた。
「キシャ?」
初めての経験にマンティスは一瞬たじろぐ。
今までの虫生で一撃でしとめられなかったことはあれど自慢の鎌で傷一つつけられなかったことなどなかったのだ。
「うわーでっかいカマキリですね~全然気づきませんでした〜」
「ー〜ーー〜ーー〜ーー〜」
訳「ちょっと前からついてきていたのはこいつか」
「キシャ」
マンティスは再度鎌を振り下ろす。
それは虫ゆえの無謀だったのかそれともいままで敵を切り裂いてきた鎌への信頼だったのか。
【冥府の断頭台】
「キシ」
その鎌が届く前にマンティスはどこからともなく現れた無数のギロチンに音もなく全身を切り刻まれた。
「うわー バラバラですね」
「ー〜ー〜ーーー〜ーー」
訳「珍しい生き物なら標本にでも使用と思ったけどただのでっかい虫だったからね」
「そうですかね 結構高値で売れそうでしたけど」
「ー〜ー〜〜ーーーーー」
訳「うちの近所にはあれよりでっかくて火を吐いたり分身したりする虫がいるよ」
冥界の生物?と比べたらこの世の大体の生物はインパクトに欠ける
「へぇ~そんなのがいるんですか」
「〜ー〜〜ーー〜ーー〜」
訳「あぁ 結構頑張って創ったんだ」
そんな物騒なものを気軽に作るな
「ー〜ーー〜ーー〜ーー」
訳「今度見せて上げるよ」
「わぁ〜楽しみです」
そうして呑気な一行は行く先も定まらぬまま森を進んで行くのだった。




