表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

君を変える物語

空が茜色に輝く世界で。ー一生報われない主への恋心ー

作者: 浅葱之夜影

ふと、「青い空と白い雲と大切な君と。」を書いていたらパッと思いついた物語です。

読んで頂けたら嬉しいなぁ・・・。

茜空は夜の知らせ♪

夜の知らせを見たならば♪

さぁさぁ帰りましょ~♪

夜がやってくる前に♪

さぁさぁ帰りましょ~♪


愛らしい少女の歌声が聞こえる。

俺の前を横を通ったのは歌った本人であろう少女だった。

亜麻色に短い髪に、太陽の光のような金色の丸い猫目の瞳。

服は、この世界特有の動きやすい服。

(誰だろう?)

俺は知らぬ間に少女をずっと見つめていた。

ふと、少女と視線がバチッとぶつかる。

少女はパチクリと目を瞬かせて、俺の方へ歩み寄った。

「あなた、だぁれ?」

愛らしい紅を付けたかの様な真っ赤な唇から、柔らかい口調の言葉が漏れる。

少女は何度も「あなた、だぁれ?」と聞いて来た。

俺は少女の美しさに見惚れて、我を忘れていた。

「俺は・・・」

「あ、しゃべった。」

少女は鈴を転がす様に「フヘヘッ」と楽しそうに笑った。

(何が、そんなに面白いんだ・・・?)

俺は首を傾げて、ボサボサの長い前髪の隙間から少女を見つめた。

「どぉしたの?」

「・・・」

「あれぇ?どうしちゃったんだろう・・・。」

少女は心配そうに俺の頬に手を添えた。

少女と俺の顔は今とても近い。

だが、まだ俺は六歳で少女は四歳ぐらい。

照れると言う感情は、まだ備わっていないのだ。

ふと少女が「わぁ!」と感嘆の声を漏らし、丸い瞳を輝かせた。

「きれーな、みどりいろのひとみだねー!ゆーひにおにあいだね!!」

「・・・」

少女がニコッと微笑むと、ギュゥゥゥと俺を抱きしめた。

(????)

俺は混乱した。

けど、嬉しくて心が躍った。

(今の俺は変だ)

俺は、そう思った。

俺は少女を持ち上げて、自身から遠ざけた。

「近寄らない方が良いぜ。俺は汚いからな」

そう言うと少女は首を傾げながら、俺の頭から足の指先まで順番に視線を移していった。

「そーね、きたないねー」

「だろ?」

「なぁんで?」

「・・・」

質問が多い子供は、あまり俺は好きじゃ無かった。

理由は至って単純。

”鬱陶しい”から。

(まぁ、良い)

俺はボサボサの髪を搔き上げて、少女に言った。

「俺は攫い屋に捕まったんだよ。ほら、俺の足を見て御覧」

少女は俺の言葉に従って、俺の足に視線を向けた。

そこには「ジャラジャラ」と鳴る鎖の付いた足枷。

「いたくなーい?」

「慣れた」

「そう・・・」

少女は血の流れた足に優しく触れた。

ふと「あっ!」と少女は声を上げた。

「たいへん、もーすぐで、よるだ!」

少女は慌てた様子でピョンピョンと飛び跳ねている。

そして今度は怖がった様子でダンゴムシの様に丸まっている。

(夜が怖いのだろうか・・・?)

俺は、ずっと汚い泥の上に座って少女を見ていた。

すると、少女はとうとう涙を流してしまった。

「ゔぅ、ひっく・・うわ~ん!」

「ど、どうしたんだよ!?」

「よるになったら、こわーいまものがでるんだよ!いやー、まだしにたくないよぉー!」

「・・・」

少女は「わんわん」と泣き叫んだ。

俺はソッと慣れぬ手つきで少女の頭を撫でた。

「だ、大丈夫だ」

「?」

「俺が守ってやるから!」

「!」

少女は驚いていたが、すぐヘラっと笑った。

涙もいつの間にか少女の瞳からは消えていた。

「あなたはわたしの、きしだね!」

「騎士・・?」

「そう!」

すると少女は充電が切れたようにパタッと俺の方に倒れて来た。

一瞬、何かの病気かと思ったが、ただ「スゥスゥ」と眠っていて俺は安堵した。

こんな最悪な世界にも女神のような愛らしい子供が居るんだな、と俺は思った。

この世界”セレステア”は読者に取っては異世界だろう。

俺に取っては無慈悲な世界だった。

神も善人も居やしない、悲しい世界。

(愛らしい・・・)

この時僅かに俺は微笑んだ。

なんて久し振りに笑ったんだろうか・・・――


「んっ」

目を薄っすらと開くと、視界に飛び込んだのはあの少女だった。

「あ~、おきたぁ!」

「お前・・・」

「あ、なまえいってなかったねぇ。わたしはミオラナだよ」

「俺は・・・サジータ」

「へぇ、いいなまえだね!」

「・・・」

俺は何故か知らない部屋のベットに座っていた。

(ここは・・・?)

すると部屋のドアから一人の女性から現れた。

「あら、起きたのね」

「お前は・・・?」

「ミオラナのお母さんよ」

「・・・」

「現状が分って無いのね?」

「わたしがねー、あなたをかったのー」

「か、買った!?」

俺が寝てる間に一体・・・。

俺は目をパチクリと瞬かせるしかなかった。

もう、足枷が付いていない事に気づいた。

(解放された・・・?)

俺は心が温まるのを感じた。

ふと「あら」とミオラナの母が眉を寄せた。

「どうしたの?」

「え」

「泣いているわよ?」

「え」

俺は頬に触れると生暖かい涙が流れていた。

これは歓喜か?

分からない感情。

ふとミオラナが俺のベットによじ登り、ヨシヨシと俺の頭を撫でた。

「つらかったよねー、もうだいじょーぶだよー」

「っ!?」

少女に慰められるのは恥だが、とても嬉しかった。

「ありがとう・・・ございます・・・っ」

俺は泣きながら礼を言った。

何度も、何度も。

ミオラナは驚いて心配している。

「サジータ君。育てる条件として、この子を守ってくれるかしら?」

「・・っはい」

そんなのお安い御用だ。

前までなら嫌がっていただろう。

けど俺は、きっとあの子に恋をしてしまった。

大切で。

愛おしくて。

守りたくて。

しょうがない。

「勿論・・絶対守る」

俺はミオラナを抱きしめた。

強く、けど優しく。

「守ります、ずっと。ずっと」

ミオラナの母は優しく笑った。

ミオラナは俺に抱かれるのは嬉しそうだ。

その後知ることになる彼女は、この世界にある国の次期女王という事を。

勿論、命を狙われ、それを守る俺も危険だ。

だけど命を救われた身。

「絶対に守り切る・・・命に代えても・・・っ」

俺は今誓った、あの茜色の空に・・・――


しかし、無力な俺では彼女を助け切るのは難しかった。

俺が十歳になって、ミオラナが八歳のある日の事だった。

ミオラナが誘拐されたのだ。

今でも、あの時の恐怖と絶望を鮮明に覚えている。

あれは一緒に遊んでいたんだ。

一瞬、俺は目を離していた。

そしたら消えた。

「俺のせいだ・・・っ!」

俺は、あの時何度も自分自身を殴って責めた。

しかし、ミオラナの母は俺を責めなかった。

だけど、こうは言った。

「ミオラナを助けて頂戴」

なんで?なんで俺を責めない?

しかし悲しむ、自分の無力さに悔やむ時間なんて無い。

俺はコクリと頷いて、全力で走って探した。

当てのない探し物。

どんなに脚が痛くても。

どんなに肺が千切れるように痛くても。

俺は走って叫んで探した。

「ミオラナ。ミオラナ!ミオラナァァァァ!!」

何処へ行ってしまったんだ。

俺は涙を流した。

(ミオラナ・・・何処・・・?)

ふと、雨が降る。

ザァザァと段々激しくなっていく。

ミオラナは寒がっていないだろうか。

泣いてはいないだろうか。

心配で心配で仕方が無い。

遠のきそうな意識の中、一つの記憶が鮮やかにサジータの頭に蘇る。

『サジータァ!』

『どうしたというんです、ミオラナ』

『わたし、もしもゆーかいされたら「サジータァァ!!」ってさけぶわね』

『縁起でも無い事言わんでくださいよ』

その時、ミオラナは笑っていた。

俺は思わず笑ってしまった。

「ハハッ、本当に起きるなんて・・・。ミオラナは予言者なんでしょうか・・・?」

俺は涙を流しながら雨と涙で濡れた体を動かして、また探し始める。

そして探しながら多くの記憶とミオラナの笑顔が頭の中に蘇る。

『サジータ!』

『もう、サジータったら』

『サジータ、フヘヘ』

あぁ、ミオラナ・・・。

また、あの笑顔を見たい。

あの柔らかい唇で俺の名を呼んでほしい。

「ミオラナ・・・」

『「サジータァァァァ!!」』

「え?」

今のは幻聴か?

俺は焦ったが冷静に考えた。

「サジータァァァア!!」

「ミオラナ!?」

俺は急いで声のする方へ走っていった。

心の中で俺は何度も何度も彼女の名を呼んでいた。

愛おしい我が主の名を。

俺が向かった先は古びた倉庫の中だった。

そこには二人の野盗がミオラナを殴っていた。

そして、その周りではニヤニヤと笑っている野盗が何人も居た。

その光景を見て、俺は憤怒した。

野盗達はすぐ俺に気づき、ニヤリと笑った。

「おー、兄ちゃん。どうしたんだぁ?」

「黙れ」

「あ?」

「ミオラナを放せ」

「やー、英雄気取りかぁ!」

「ひゅー!」

野盗は俺を煽る。煽る。

(うるさい!)

俺はすぐ近くに居た野盗を力任せに殴った。

すぐ野盗は気絶した。

(なんて弱い・・・)

野盗達は驚いている。

「てんめー!」

「やっちまえ」

俺は襲ってくる野盗を殴り蹴って、痛めつけた。

いつの間にか野盗を全員倒していた。

(ミオラナ・・・っ)

俺はすぐミオラナに駆け寄った。

「ミオラナ・・・」

俺はグッタリとしたミオラナを抱き上げて、安否を確認する。

微かに息をしていて俺はホッと安堵した。

体中には傷や殴られた痕。

耐え抜いた証が痛々しく残っている。

「ミオラナァ・・っ」

俺は誓ったあの時の様にミオラナを抱きしめた。

強く、だけど優しく。

「目を・・覚まして・・・ミオラナ・・・っ!」

「んっ」

ふとミオラナが目を覚ました。

俺は、また涙を流した。

「良かった・・・っ!」

「ん、サジータ?」

「はい、そうです。サジータです!」

「!」

ミオラナは嬉しそうに笑った。

「フヘヘ」と声を漏らして笑った。

そして俺に抱き着いた。

痛いのか少し顔を歪めて笑っている。

俺も抱き返す。優しく、ふんわりと。

「・・・すみません、ミオラナ」

「きゅうに、どーしたの?」

「守り切れなくてゴメン。・・こんなに傷を負って。・・・俺が居ながら・・・」

「サジータ・・・?」

「一生懸けて償うから。一生守るから。もう一生、傷を負わせたりしないから。・・・本当にゴメン」

「サジータ・・・わたし、だいじょーぶだから」

「この命を懸けて一生ミオラナを守る。俺はミオラナの物だ」

俺はそう告げてミオラナに跪いた。

ミオラナは驚いていたけど、嬉しそうにしていた。

「ありがとう、サジータ!」

あぁ、その言葉だけで俺は救われる。

貴方に生かされた命、貴方の為に使います。

この命の灯が消えるまでずっと。

ミオラナの入学も卒業も成人式も結婚式も全部見届けるから。

貴方は笑っていてください。

それだけで俺は救われる。

貴方が幸せなら、俺の恋心は報われ無くて良い。

お願い、幸せになって。笑って。

「愛しています、ミオラナ」

大切で愛おしいミオラナ。

貴方の為なら修羅の道も歩いて見せよう。

「ずっと貴方が幸せに笑っていけるように守りますから」

この一方通行の片思い答えなくていいから。

「安心してください」

報われぬ恋心は捨ててしまおう。

ミオラナの幸せと笑顔を守ると、俺は誓った。

(そら)茜色(あかねいろ)(かがや)世界(せかい)で・・・――。

読んで頂けて感謝感激です。

また、自分の物語を読んで頂けたら良いな、と思います。

応援、感想・・・全部お待ちしております!

読んで頂き、ありがとうございました!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ