本命予想 (1)
『真犯人と名乗る人物』が、これを書くのではないか?
と、私は考えていた。
ジェラルミンケースを開けると、
中には、
小さな紙袋が、整然と並べられていた。
確認のため、その紙袋を開けてみると、
土が出て来た。
『真犯人と名乗る人物』を信じる御馬鹿さんは、
現実には、居ない。
彼が真犯人を名乗るためには、
二つの事を書く必要が有った。
1 真犯人しか知らない事実。
2 時効当時に名乗り出なかった理由。
『真犯人と名乗る人物』は、
1975年の時効狂騒曲を知らないので、
名乗り出なかった理由の重要性を認識していなかった様だ。
ちなみに、
私は、
彼に教えてあげるつもりだったのだけれど、
途中で、彼が感想欄を閉じたから、
伝えそびれた。
もし? 仮に?
『真犯人と名乗る人物』が本物だったとしたら、
今頃しゃしゃり出て来る様なアホな真似するわけないよな?
1975年十二月十一日の刑事時効のタイミングで名乗り出れば、
三億円以上儲けられたんだぜ!
あの時だったら、
テレビ・ラジオ・新聞・週刊誌等のマスメディアが放って置かないし、
映画・ドラマ・書籍・講演等で、
ウハウハ状態だっただろう。
もちろん、
民事時効が、
まだ残っていたけど。
果たして?
被害者側の銀行が、強気に攻めて来たか? どうか?
仮に、銀行に訴えられたとして、
実際に裁判が始まるまでには、
十分な時間が有るし、
その騒動をネタに、さらに荒稼ぎして、
いざ審理が開始されたら、
掌返しをしてしまえば。
つまり、
証言台で、
「実は私は真犯人ではないです」
これで、
全てがグチャグチャに。
銀行側も、
当然、この展開を読んでいるよな。
だって、
騒ぎが大きくなって、
世間の注目を集めれば集めるほど、
大きな金が動くんだぜ。
『お金が欲しくて、
現金輸送車を奪い、
しかも、それだけでは飽き足らず、
犯人だと名乗り出た』人物が、
このチャンスを見逃すわけ無いわな。
必ず、意図的に泥沼化させるに決まっている。
話題作りのために。
それに、
「私は真犯人ではないです」と否定されちゃうと、
民事訴訟だから、
裁判を続けるためには、
銀行側が、
「真犯人だと名乗り出た人物は、本物です」
と、
立証する必要が有る。
話はズレるが、
税務署に、
消費税課税事業者の申請に行ったら、
「貴方の配ったチラシに、
『以前、別の市で営業していた』と書いてあるから、
申請を却下します」
と、
言われたんだ。
『以前、別の市で営業していた』のは事実だったんだけど、
消費税課税事業者に成れれば、
百万円ほど戻って来るからね。
「ああ、あのチラシは、宣伝の為に、嘘を書きました」
税務署の担当者は、
自分が詰んだ事に気付いて、
青ざめて震えていたけど、
大人しく引き下がるしか、打つ手がないから、
申請を認めたんだ。
話を戻すと。
「実は、アレは嘘でした」と言われちゃうと、
ほとんどの場合、
言われた側は、詰んでしまう。
しかも、
銀行側は、
「犯罪者だ!」と主張しているのだから、
立証に失敗すれば、
当然、民事的・刑事的責任を追求される事に。
こうなっちゃうと、
民事不介入で傍観していた警察が銀行側に味方するのは、
ほぼ不可能に。
元々、
時効が成立していたのだから、
警察が口を挟めば、
世間様が黙っていなかったと思うけど。
三億円事件の犯人は、
そこまでの人気が有った。
「真犯人が名乗り出易くする為に、
銀行は民事請求権を放棄して!」
こんな声も有った。
この状況下で、
『保険で補填されて、ほとんど被害を出していない』銀行が、
果たして? 仕掛けるのだろうか?
実際に名乗り出た人は、
何人か? 居たらしいけど、
「銀行から請求が来た」という話は、
聞いた事が無い。