S少年の謎 (6)
S少年が所属する『立川グループ』は、
「自動車やバイクの窃盗を常習的に繰り返していた」という設定になっている。
まぁ、
三億円事件の真犯人は、
少なくとも数台の車やバイクを盗んで準備していたらしいからね。
この設定が、どうしても必要なんだろうけど。
仮に、この設定が正しいとして、
三億円事件が起きる前の『立川グループ』は、
車やバイクを大量に盗んで、
一体? 何に使っていたのだろうか?
1 売っていた。
ある程度の台数の車やバイクを売り捌くためには、
販売ルートを確立する必要が有る。
警察は、
これを徹底的に調べたんじゃないかな?
だって、別件で逮捕出来るから。
『立川グループ』関係者を、一人一人、取り調べ室に缶詰にして、
全員を絞め上げたかったハズだ。
でも、
実現しなかった。
2 ドリフトの練習に使って、終わったら、捨てていた。
話はズレるが、
四十年前に、
『何故? 日本政府のコロナ対応は杜撰なのか?』の第三話に書いた『歯医者』に、
山へ連れて行かれた。
その当時、
彼はT大生だった。
そのT大の合格発表の二日前、
彼に会ったら、限定解除の免許を持っていた。
彼は、
中古の軽自動車を四千円で買って来て、
ドリフトの練習をしていた。
その軽は、
排ガス規制よりも前の車だったのだけれども、
三億円事件が起きた1968年産よりかは、新しい。
限定解除とT大のW合格を達成した男だからね。
彼のテクニックなら、安心して助手席に座って居られた。
でも、
終わってボンネットを開けたら、オーバーヒートしていて。
空冷式だから。
昔の車はボロかったのよ。
1973年頃、
技術家庭の授業で、こう教わった。
「山道を登る時は、ギアをサードに入れる」
今の車とは性能が違い過ぎるだろ?
もちろん彼はメカにも詳しいので、
「最初から廃棄するつもりだったから、
四千円のを選んだ」
と、
語っていた。
ついでに、
角度をいじって、タイヤの接地面積を減らすと、
最大静止摩擦係数が下がって、滑り易くなる。
ドリフト用には、都合が良いんだけど、
普段の走行でもスリップするし、
タイヤの端だけを接地させているので、
極端に摩耗して、年がら年中、タイヤを交換しなければならなくなる。
話は、さらにズレるが、
『真犯人と名乗る人物』が、
前回の東京オリンピックの直前に、
S少年とバイクで勝負したらしい。
「人気の無い山道、深夜」に。
へっ?!
東京オリンピック前だったら、
山道は舗装されていないけど?
もし? 仮に? 舗装されていたとすれば、
それは有料道路だ。
有料道路とは?
高速道路と、ほぼ同じで、初期投資分を利用者から徴収していた。
最大の違いは、
「初期投資を回収したら、無料化する」
と言う約束が守られた点だ。
高速道路も、
当初の予定では、
とっくの昔に無料化されているハズなのだが、
日本人の敵達が利権欲しさに計画を変更してしまった。
高速道路を無料化してしまうと、
物流コストが下がり、
【日本人の貧困化】に悪影響を及ぼす。
山道なら、無料化しても、【格差の拡大】を阻害しないと判断したのだろう。
その有料道路の料金所は、
夕方七時くらいになると、無人化していた。
その頃は左翼が強かったからね。
労働者の権利が、ある程度、守られていた。
それに、
生活習慣という意味では、
人々の生活は江戸時代と大して違わない。
だから、
「人気の無い山道、深夜」で間違っているのは、
『深夜』だ。
夜の山でドライブしたのは、
料金所がフリーパスになっていたからで、
『深夜』まで待つ必要が無い。
話を戻すと。
たぶん、
S少年は、
『頭文字○』の藤原豆腐店の店主の様な人達と、
世代が合わない。
たった一〜ニ歳差だけれども。
でも、
高度経済成長期は、
一年違えば、
環境が全く違うんだよ。
だから、
高度経済成長期に育った人達は、
学年が一つ違えば、
感覚自体が全然違う。
その辺を次回に。