恋愛は恋した方が負けって言うよね?わかりみが深い
前回のあらすじ
異世界でハゲと変顔とヤ●男と友人になった。
あれからなんだかんだで私塾生の三人と友人になった。すごく盛り上がった。そのあと三人から名前を教えてもらったんだけど忘れた。だからここでは頭頂部が怪しい男をハゲ先輩、顔が怪しい男を後輩君、挙動がおかしい男をヤ●男と呼ぶことにする。
あの後二次会ということでセージュ区のバーに行くことにした。うん、バーに行きました。ただ、まあ、うん、女の子しかいないバーなんだけどね。
皇国の法律上、女の子が席について接待するようなクラブとかは衛兵事務所の風営許可が必要になる。また、深夜にお酒を提供する居酒屋とかは深酒届を衛兵の事務所に出す必要がある。そして、これは法律にはないが、風営許可と深酒届を両方出すことは衛兵に超嫌がられる。だから、女の子が接待してアルコールを出すクラブは、営業時間を深夜に入る前までにするか、深夜以降は女の子の接待をやめるように衛兵に指導される。
それで風営許可が必要かどうかの判断は女の子が「接待する」かどうかでわかれる。この「接待」って言葉がくせ者で、客の横に座って会話する時点で接待となり、客と歌ったり踊ったりするのも接待扱いとなる。あと客の手を握ったり太ももに手を置いたりと接触行為が多いのも接待になる。
じゃあ問題。深酒届を出していて、かつバーテンダー全員が女の子のバーで、カウンター越しに対面しながらお話しするのは接待でしょうか?それが深夜に営業していたらどうなるでしょう?その女の子が客の手を握ったりしていたらどうなるでしょう?
これ以上は怖いから答えません。答えません。
「先生、お久しぶりですぅ」
狐耳をはやした女の子、ミューちゃんがのんびりと答えた。目尻が下がっていて、身長が小さい。
左横のハゲ先輩を見る。ああ、駄目だ。こいつ、落ちたな。
右横のヤ●男を見る。お、大丈夫のようだ。こいつ、普段から遊んでるな。
後ろの後輩君を見る。ぽけーっとしている。こいつ、ホモだな。
「この三人は今日知り合ったばかりでね。いいかい?」
「もちろんですぅ」
あちゃー、ミューちゃんがハゲ先輩をロックオンしとるわ。線香あげとこ。
「二人につき一人がつくようにしたいんですが、先生それでも大丈夫ですかぁ?」
そう言った後、ミューちゃんはこちらの耳元に顔を近づけ、「あとでいい子当てますんで」と囁く。先生、察したわ。その後、私とヤ●男のペア、ハゲ先輩と後輩君のペアでわかれ、それぞれ席に着いた。
自分たちに当てられたのは、レイちゃんという牛の角をはやしたミノタウロス種の新人だ。がちがちに緊張している。・・・あたりかな。
隣のヤ●男と互いに顔を見合わせる。いや、お前そんな真剣な顔できたのかよ。さっきとキャラ違うだろ。
「お二人はお仕事は何をされているんですか?」
「自分は代筆士です」
「自分はフラン商店の商人です」
おまえ、超エリートやんけ。フラン商店というのは元の世界で言うところの大企業で、貴族向けの服や骨とう品などを取り扱っているところだ。ちなみに私塾生といっても普通に働くことはできる。
「へー!お二人ともすごいですね!代筆士さんには、この前故郷に手紙を出したときに・・・」
こんな感じに話が進んでいく。この子、たどたどしいけど会話頑張ってるなぁ。隣のヤ●男と互いに顔を見合わせる。ああ、おたくも同じ意見ですか。そうですか。
ちなみに隣のハゲ先輩と後輩君はミューちゃんに弄ばれていた。先輩、ミューちゃんのためにヤート酒を入れたみたいですが、それ普通のお水ですよ。あと、ミューちゃんを酔わせることはできませんよ。その子、ザルなんで。
「あと、フラン商店って、すごい!私、あそこで買い物するのが夢なんです!この前見たヴァレンセアガのコートとか・・・」
この子、引き出しが多いな。隣のヤ●男と互いに顔を見合わせる。お前、本当にへへって言わないな。
ちなみに隣のハゲ先輩はニギニギオプションをいつの間にか買っていて、ミューちゃんの手を握っていた。後輩君は生気が抜けた顔をしている。あいつ、もしかして・・・あっ。
「いやぁ、今日は楽しかったです!また来てくださいね!」
そう言って、レイちゃんはお店の玄関でお辞儀をする。私もヤ●男もご満悦だった。
「今日は本当に楽しかったですぅ。また来てくださいぃ」
そう言って、ミューちゃんはお店の玄関でお辞儀をする。尻尾がめっさブンブンしている。多分、今月のノルマクリアしたんだね。おめでとう。
ハゲ先輩はすんごいトロントロンの顔で軽く会釈した。後輩君は顔が死んでいた。ちなみにミューちゃん、喋りはこんな感じだが、結構ちゃっかりしている。ハゲ先輩と後輩君の退店時間が1分遅かったので、基本料金が一時間多くつけられていた。