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代筆士になるのも良いかもしれない

「無利子・無担保の融資ですか!?」


試験に合格したと思ったらとんでもないものを手に入れたでござる。

思わず口に出してしまったのも仕方ない。そんな自分に局長は快く詳細を教えてくれた。


「はい、上限100万イエンまでではございますが、郵便局から融資がおります。返済期限も通常の融資よりも融通いたします。それに国立図書館の利用権も付いてきます」


局長は<代筆士試験高得点合格者優待措置>と書かれた紙を渡してくる(「他にも様々な特典が付いてくるんですよ。これを渡すのは初めてですよ」と言いながら笑っていた)。


(・・・税金の当面免除や国立病院の診察料・薬代の減額・・・すごいな)


紙には様々な特典が列挙されていた(皇国ホテルの利用権に本の割引などなど)。この国が優秀な代筆士を求めていることがわかる。


「もちろん融資を受けるには条件が必要なのですが・・・」


局長は少し言いにくそうな顔をしている。やはりそこまで上手くはいかないか、と思い唇を噛む。続けてください、と局長に話を進めさせる。


「融資を受ける場合、その郵便局と1年間の委託契約を受けてもらう必要がございます。もちろん仕事をした分だけ報酬は用意いたしますが、ほぼ専属で仕事をお願いすることになります」


そこまで話を聞いて、上手くできてると思った。いかに優秀と言ってもスラムの人間でも受けることができる試験だ。試験の成績がいい人間が融資的にもいい人間というわけではない。債務者の所得を手元で把握しつつ、自分たちの仕事が上手くいくように使っていこうという魂胆なのだろう。


局長はとても気まずそうな顔をしているが、こちらとしては願ってもないものだった。1年間の専属契約となればある程度安定して仕事を受注することができるということだ。だが肝心なのは仕事内容だ。局長に詳細な内容を聞いてみる。


「主に来局されたお客様のために手紙を代筆してもらいます。専用の部屋を用意いたしますので、そちらでお待ちください。代筆ご希望のお客様を部屋まで私どもがご案内いたしますので、先生はお客様から口頭で聞いた言葉を手紙に代筆してください。一文字ごとの単価で報酬が確定していくシステムになっております」


そのように局長は説明する。気になるのは守秘義務と文字の計算方法だが、それについても局長は説明していく。


「もちろん守秘義務は発生いたします。まあこちらにいらっしゃるお客様は、手紙を読まれても特に問題ないお客様や専属の代筆士がいらっしゃらないお客様ばかりですので問題になることはあまり無いんですがね」

「文字の計算は、この台に手紙を置いて計算いたします。手紙を台に置いていただければ、魔法で文字を計算いたします。計算完了後はその手紙に刻印がされます。刻印済みの手紙は台に置いても計算いたしません。その手紙を封筒に入れてお客様にお渡しいただきます」


そう言って局長は黒い石でできた台を見せてくれる。「正式に契約を結んでいただけるのであれば、あとで詳しく説明いたします」と笑いながら言っていたが、少し真面目な顔で「いかがでしょう?」と聞いてきた。少し考えて、局長に気になる部分を聞いてみる。


「専属ということは他の仕事を受けることはできないのでしょうか?」

「あー、そういうわけでは無いんですよ。最低でも週3日で入って欲しいのですが、それ以外の日は別の仕事を受注してもらっても構いません」


そのように局長は説明する。なかなかの好条件につい頬を緩める。条件がクリアされ、自分の中で答えが出る。


「融資と委託契約をお願いできますでしょうか?」

「もちろんですよ!」


そう局長は喜びつつ、右手を差し出す。ここも前の世界と共通なのかな、と思いながら右手で握手した。自分の一生の仕事が決まった瞬間であった。


以上で序章終了です。次回から一話完結で話を進めていく予定です。

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