酒はのんでものまれるな
この日はとても酔っ払った。スチャラカ三人組と恐怖の夜を経験した後、その傷を癒やすためにしこたま飲んだわけだ。
「お客さん、お客さん」
「んあ?」
間抜けな声で呟いて周りを見る。巡回馬車の御者が声をかけてきたようだ。珍しいな、わざわざ声をかけてくるなんて。そう言われて大人しく馬車を降りると、馬車はそそくさと去っていった。
「ん?」
全然見慣れない光景で戸惑う。どこだよここ。駅の看板があったので見てみる。
「ブランボコシャってどこだよ」
いや、ホントにどこだよ。駅の近くを見ても家一軒ない。どうやら終点まで流されていたようだ。
「ブランボコシャってどこだよ!」
いや、ブランボコシャってウケるんだけど。
「「ブランボコシャってどこだよ!」」
・・・隣から叫びが聞こえる。横を見ると後輩君が立っていた。
「なんでお前いんの?」
「先生もなんでここに?」
同じタイミングで声が被る。・・・こいつも終点まで流されてきたな。
「お前、ブランボコシャって知ってる?」
「いいえ、都のどこかだとは思うんですが・・・」
都に長く住んでるやつでも聞いたことがないとか。そんなことあんのかよ。
「とりあえずここは協力していこう」
「そうですね・・・」
っといっても家一軒ないしな。なんか知らんけど森の方から獣の声が聞こえるし・・・
ひーーーーーーひっひっひひいっひひいいひいいひひいいーーーーーーーーー
「「ひいい!!」」
怖っ!ホントに都の中かよ!
「駄目だ!ここにいたら食われちまう!」
「っといっても家も何もないし・・・あれ、あそこ明かりが見えますよ」
そう言って後輩君が指さす。指さしたところにかすかに明かりがついてる場所を発見した。崖の上にあるようで、そこに行くまでに急な角度の階段が設けられている。階段横に『フラワー太郎 ブランボコシャ店』と書かれた看板がある。・・・こんなところになんで宿があるんだよ。
「・・・とりあえず行ってみません?」
後輩君がそう言う。確かにほかに行くところもないし、行ってみるか。そう言って二人で階段を上っていく。ってかこの階段、急すぎだし段差も高すぎだろ。デブからしたら設計ミスだぞ。
階段を上りきると、一軒の宿があった。前の世界のカプセルホテルのような宿だ。そこでチェックインしようとすると、店員から衝撃なことを言われる。
「ただいま、一部屋しか開いておりません」
「「ファ!?」」
私たちはフリーズする。そもそも、なんで一部屋だけなんだよ。ほかの客全員終点まで流されてきた客だろ。
「一応、カップルシートなので二人寝ることは可能ですが・・・」
店員が言いにくそうにしている。おいおい冗談はよしてくれ。この顔面ジェノサイド男と二人っきりで寝ろと?
「先生・・・」
お前もお前で誤解されるような言い方をするな。あと、潤んだ目でこっちを見るな。
「・・・二名一部屋でお願いします」
私はプライドを投げ捨てた。




