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都合のいい耳

本日はパブとガールズb・・・じゃなかった女の子がバーテンダーをやっている健全なお店で仲良くなった三人組が学んでる私塾にお邪魔しております。なんかお金が必要かなって思ってたんだけど、初回の受講だけなら無料らしい。予備校かな?


セージュ区の私塾にお邪魔すると、三人組が温かく迎えてくれた。


「やあ、先生久しぶりだね」


後輩君がにこやかに答えてくれた。やめろ、そっちの気はないぞ。


「いや、久しぶり?でいいのかな?記憶ないんだけどね、うん。二件目行ったんだって?うん、記憶ないんだけどね?なんかね?財布にお金がなくてね?いや、うっすらとんでもない美人と夢で逢ってた気がするんだけどね?うん、記憶ないんだけどね?」


記憶ないのはわかりましたよ、ハゲ先輩。でもあの後お店に入り浸ってるらしいですね。ミューちゃんが嬉しそうに言ってましたよ。


「へへっ」


うん・・・知ってた。お前、男の前だとまともに話す気ねえな。この前コルドー街(注・ナンパの聖地)で流暢に話してたのを見たぞ。


「今日は報告会だけですので、座って聞くだけで大丈夫ですよ」


そう言って、三人組と一緒に家に入る。お前ら呼び鈴鳴らさないんかい。ずけずけと入っていく。


応接室みたいな場所に入り、適当な席に座らされる。三人組も適当な席に座る。後輩君が「あっ、僕の席・・・」と言ってたが、知りません。しばらく待ってると、白髪のおじいちゃんが前傾姿勢でやってきた。


「お、今日は人が多いなあ」


一人増えただけだぞ。普段から出席している私塾生はこの三人のみと聞いてるので突っ込みたくなるが、一応あいさつする。


「本日はどうぞよろしくお願いいたします」

「・・・えっ?」


おじいちゃんが耳に手を当てながら聞いてくる。おっ・・・これは。


「本日はどうぞよろしくお願いいたします!」

「・・・えっ?」


・・・。


「本日はどうぞよろしくお願いいたします!!!!!!」

「そんな大声で言われんでもわかっとるわ」


・・・この爺。少しイラッときたが仏の心でこらえる。ヤ●男がにやにやしている。どうやらこの私塾の洗礼のようだ。


「今日は新人さんもいることだしなぁ」


おじいちゃんは天を仰ぐ。


「早めに切り上げるか」


おじいちゃんが何かいいだした。おいおいそれは三人から反対されるだろう。三人は金出して通ってるんだから。おじいちゃんの言葉に後輩君が返す。


「おじいちゃん、先週もそう言って15分早く切り上げたでしょ?」

「あれ、そうかなぁ?」

「だから今日は30分早く切り上げましょう」


なんでだよ。ほかの二人を見ているとそれでいいのかウンウン頷いている。それでいいいのね?


「じゃあ30分早く切り上げるとして、今日は誰が報告だい?」

「あっ、僕ですぅ」


そう言って後輩君が前に出た。それに対し、おじいちゃんはじっと後輩君を見つめている。後輩君は不安そうにおじいちゃんを見る。


「あの、どうしました?」

「君は誰だい?」


この私塾、大丈夫か?


気を取り直して、報告会がスタートする。あれ?思ったよりちゃんとしているなあ。後輩君もハゲ先輩も激しく討論している。おー、すごいな。こういうのを見ていると、本当に頭がいいんだなと実感する。


そう思いながらも横を見ると、ヤ●男が白目を剥いて座っていた。ああ。


ちゃんと話を聞かないとおじいちゃんに怒られるでしょ?そう思っておじいちゃんの方を見る。


おじいちゃんも白目を剥いて座っていた。


ヤ●男ならともかくおじいちゃんの白眼はまずいと思って声をかける。


「おじいちゃん!おじいちゃん!」


そう声をかけても起きる気配がない。まずいかもしれない。


「ねえ!おじいちゃんまずいかもしれない!」

「大丈夫大丈夫、いつものことだから」

「でも!」

「ただ耳が遠いだけだから大丈夫。・・・・これだから人が来ないんだよなぁ(ボソッ」

「だれだ、そんなことを言ったのは!!!!!」


おじいちゃんが般若の形相で飛び起きた。文句を言ったハゲ先輩はヤ●男を指さす。おじいちゃんは折檻棒を持ってヤ●男の顔面目掛けてフルスイングした。


ヤ●男はビクンビクンと痙攣しながら横たわる。おじいちゃんは満足したのか、折檻棒を元に戻し一息つく。


「ふー。・・・・君たちはだれかな?」


その後、なんだかんだで報告会は無事(?)終了した。月謝が安く暇つぶしにちょうど良かったので、お金を出す。私も正式に塾生となった。

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