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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

- ゲー廃ニートの清楚転生 ‐ 自宅の刀を鞘から抜いたら異世界にTS転生しました。

作者: 蒼魚二三

同じ設定でもう一つ投稿

……現状との繋がりは良く覚えてない。

今俺は、見知らぬ古風なヨーロッパの街の中で日本刀を手に持って突っ立っている。

フランスとか、イギリスとかドイツ辺りの観光街のような街並み。

道行く人も俺の事を特に気にせずに自分のやりたい事を優先している。


どう見てもここは外国のようで、顔立ちの良い人ばかりだ。

日本人のようななんか野暮ったい風貌と違い、メリハリが付いていてとても分かりやすくザ・外人。

ただ悲しいかな、その情報は俺の元居た場所ではないという事を教えてくれる。


俺の名前は大島佐柚木さゆぎ。年齢は46歳。ヒキニート。童貞

此処に来る前は、VRMMORPGである「レジェンド・ストーリー」で最強の称号を欲しいがままにする代償として実生活全てを捧げた馬鹿な男だったハズなんだ。


えぇと、まずここに来る前に何があったか思い出そう――――



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



今日は甥が遊びに来る日。

俺は親に迷惑を掛けない為、自室にて静かにベッドに寝転んでいる。

親には、決して甥の前に姿を見せるなと忠告された。一家の恥だからだそうだ。

リビングでは甥と親父の楽しく談笑する声が聞こえ、俺も戻れる物なら少年時代に戻りたいという気持ちを彷彿とさせる。


そろそろ喉が渇いて来た頃だ。俺は耳を澄ませ、早急に二人がリビングから立ち去るのを待つ。

親は兎も角、甥に出会えば何を言われるか分からない。

叔父さんニートなんだ、なんて言われた日にはもう二度と部屋から出たくなくなるだろう。


『じゃあケンジに良い物を見せよう――』


父がそう言って二人がリビングから出ていく音が聞こえる。チャンスだ。

俺はバレないようこっそりと行動し、キッチンでコップと冷えた麦茶を用意。

コップを使って多量の麦茶を飲む。酒が飲めれば毎日飲むだろうが、生憎と下呂なので飲めない。


必要最小限の行動を終え、俺は再び自室に戻る。

ゆっくりと扉を閉め、落ち着いたようにため息。心臓がバクバクだ。

ケンジ達はその後帰って来た。話はそこそこにして叔父の部屋でVRゲームをするらしい。

あの二人も俺と同じフルダイブ型MMORPG「レジェンド・ファンタジー」をしていると壁越しに聞こえた。


……俺もゲームして時間潰すか。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



暫く経ち、両親と甥が食事を終えて各自の部屋に戻った所でようやく俺の食事の番になる。

キッチンに行き、皿を包むラップを取り払って温めずそのまま食べる。

MMORPGゲームはとにかく時間が命。ポップ時間が決まっているモンスターが多いからだ。

食べられるなら多少冷えていても問題は無い。


食事を終え、皿をキッチンのシンクに置いた俺は自室に戻ってゲームを再開する。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



夜中の3時。ゴーグルから脳内に直接鳴り響くトイレ警告で俺は一旦ログアウトする。

エンドコンテンツである神々の黄昏ラグナロクのフェンリルポップ時間まであと30分もあるのだから余裕だ。

それにこの時間は誰も起きていない。つまり俺の時間でもある。


少し気分良く外に出て、キッチンに向かう。


途中、本殿に繋がる廊下のドアが大きく開いているのを見つける。

どうやら誰かが中に侵入したらしい。


泥棒か?と一瞬思う。

普段なら気にせずスルーするのだが、今日はどうしても見過ごせなかった。

深夜だから気が高ぶっていたというのもあるが、たまには正しい事をしたいと思っただけだ。


廊下を歩き、本殿で少年が祀っている御神体を触ろうとしている所を目撃する。

俺は本殿内に入り、少し掠れ気味の声で叫んで止める。


「おい……っ!それに、触っちゃ駄目だぞ……っ!」


突然の乱入者に驚く少年。慌てて刀を元の位置に戻し、何も言わずそそくさと叔父の部屋へと戻っていく。

途中軽く脚を蹴られた。なんてクソガキだ。

若者の常識の無さに呆れながらも俺も戻ろうとする。


すると、祀られている刀が光り輝き始める。

これは……何事だ?


佐柚木は誘われるままに刀を取る。

刀から封印の札が剥がれ、全体から強い輝きを放ち始める。眩しいが、何故か刀の形がよく見える。

黒い鞘には桜の花びらが散りばめられていて桜吹雪のよう。

柄は白く、鍔は透かし鍔。桜の花弁を催している。

長さは太刀か打刀ほど。俺が扱うには少し重い。これでも筋トレは欠かさないんだが……


俺は原因を確かめる為に刀を抜く。金属の擦れる音がその場に響く。

刀身は一文字で軽量化の為の溝があり、所々飛沫のような模様がある。


なんと美しい刀なんだろうか。俺はつい見とれてしまう。

刀身を上から、下から、様々な角度から眺める。


……そして突如、身体が自分の意思とは無関係に動き出す。

刀を両手で持ち、先端を首元に当てる。


「えっ?」


俺の手と腕はそのまま上に刀を押し上げる。

刀が喉から後頭部に掛けて貫通する。


「く゜ぇ゛……」


口から多量の血が漏れる。刺さった部分が焼けるように痛い。

俺は焦って刀を抜き、その衝撃で傷口が更に開いて噴き出す。


何で……こんな……


俺は首元から多量の血を出しながらその場に倒れ伏す。

刀が地面に落ち、強い金属音を響かせる。


動こうにも動けない。

次第に身体から血が抜け、身体に寒気が襲ってくる。


寒い。


死の恐怖が迫る。


怖い。

死にたくない。


佐柚木は助けを求めるように手を動かし、近くに落ちていた刀の刃を握る。


誰でも良い、助けて下さい。

今まで散々屑みたいな振る舞いをしてきましたが、心を入れ替えます。

真面目に働き、清く正しく生きます。そう誓います。

どんな事もします。だから、許してください。


このまま、地獄には行きたくない。

だから――


『……その願い、聞き届けた。』


声がする。古風な雰囲気のする女性の声だ。


『その代わり、お前には私の悲願を成就してもらう。取引だ。』


手に持つ刀が光る。

薄れゆく意識の中、佐柚木は藁にも縋る想いで声の主に答える。


何でもします。何をすればいいのですか。


『我が夫を見つけよ。お前がそれを達成できるよう力も授ける。』


夫の名前は。


『名を霧六と言う。曇鋼の刀だ。お前は、この世界とは別の世界に漂流した我が最愛の人を探し出すのだ。さすればもう一度願いを叶えてやる。』


分かりました。霧六ですね。


『では逝け、愚鈍な男よ。次の生では努力する事を努々忘れるべからず。』


ありがと……う、ござ…………


感謝の言葉を言い終わる前に佐柚木は事切れ、その身体と血は灰となって消滅する。

その様子を霊魂となった佐柚木は見届ける。

そして、霊魂の身でありながら桜花散る鞘と落ちた刀を拾って収納。


佐柚木もそれと同時に消滅し、刀には再び封印の札が張られて元の祭壇へと戻される。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




……という所までは覚えている。それ以降の記憶が無い。




中世ファンタジーチックな街の中、顎に指を当てながら薄目で思い出していた俺。

というかなんか、手の感触とか、身体の調子も色々と違う気がする。


俺はまず自分の服装を確認をする為に↓を見ると黒いセーラー服に包まれた大きな双丘が見え……は!?

驚いて手を見て、顔を触り、胸を揉み、最後に股間を触る。マイサンが無い!何でだ!?



何処かに自分の容姿を確認出来る物が無いか周囲を見ると、一軒の露店に大きな鏡が吊るされている。

俺は全速力でその露店に向かって走り、土ぼこりを上げながら停止。




「はい、いらっしゃい。」




店主が何か言ったがそんな事を耳に入れる余裕は無い。

俺は、吊るされたその鏡で自分の容姿を見て愕然とする。




「な、なんで……? お……俺……黒髪ロングの美少女になってる……」



アラフォーでブサイク、ゲー廃で引き籠りニートの四天王揃った男、……や、揃っていた男、佐柚木。

彼は何処とも知れない異国の地で、黒いセーラー服を着た黒髪の美少女となっていた。

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