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今日から学校と仕事、始まります。①莞

僕達が野菜を嫌った理由は……

作者: 孤独

「いただきます」


阿部のんちゃんは異世界人である。

とある事情で地球で過ごすことになっている。


パクッ


のんちゃんはどこにでもいそうな外見ではない。小学生の可愛さとしてはずば抜けており、その可愛さは誰もが触れたい、ストーカーしたい、独占したいほどのかわいい姿。将来は容姿端麗確定させた、プリティー小学生である。ゴスロリ姿最高である。



そんな可愛い少女だって。

小学校で給食を食べる。普通というか、地球の日常を送っている。今日はそんな時のお話である。


「ピーマン食べないの?」

「ピーマンの色とか、苦味が嫌なんだよねぇ」

「野菜炒めで綺麗にピーマンだけ抜くの、大変だと思うけど……」

「それでも嫌なの!」


隣の子がピーマンを残す。


「ピーマン無理ぃっ」

「あたしはにんじんもダメ」

「野菜は嫌だ」


それだけではない。野菜というのはどうしても、子供に好かれん食材である。健康や美容に良いだなんて、こんな10年ほどしか生きてない奴には分からんのですよ。

のんちゃんも小学生というわけだが、のんちゃんに食わず好き嫌いはない。確かに給食はあまり美味しいとは言えないけれど、こちとら異世界を滅ぼしたり、今日食べる物に四苦八苦していた頃もあった。

お金を差し出して、提供されているという有り難味。のんちゃんは良く分かってしまう。


子供にしてはかなりの経験をしてしまっている、のんちゃんである。



「食べないと大きくなれないよ」

「野菜だけ食べてもしょーがないし」


定番文句も、定番文句で返される。

時や状況を経験し、そんな好き嫌いは消えていくもの。少なくとも、その対応を人は生んでいく。大人の話はまた今度だ。

のんちゃんは思う。そして、胸張って伝える。


「よーし!だったら、のんちゃんが美味しい料理を作ってあげる!ピーマンを使った料理!食べてみて!!」



◇     ◇



のんちゃんは可愛いだけじゃなくて、家事だって一流なのよ。

こんな平和な日本という国にいても、料理と食事は毎日三食、ありがたやである。

友達連れて、家庭科室をちょっと占拠。


エプロン姿ののんちゃんも可愛いくて、男子生徒までホイホイである。まぁ、手伝いとして、



「買い物ありがとう」

「いえいえいえ!」

「のんちゃんの手料理を頂けるなら!」


食材を買って来てもらった。


「お手軽!のんちゃん手料理、その1」



ダダァンッ



「野菜たっぷり炒飯!!のんちゃん手料理、その2」



ダダァンッ



「野菜ミックスの卵焼き!!のんちゃん手料理、その3」



ダダァンッ



「冷たい氷入りの麦茶!!」



小ネタなノリをしながら、今日のレシピを伝えるのんちゃん。そんなレシピなんてもんはないんだが……。のんちゃんのアドバイスである。


「野菜が苦手なのは分かるよ。克服しろなんて言わない。だから、のんちゃんは野菜を刻みまくります。一口サイズではなく、細切れに!」



のんちゃん。包丁でたまねぎ、にんじん、ピーマン、ネギ、ベーコンをガンガン細切れにする。小さなホールにそれぞれ具材を分けておく。あと、炒飯用の卵と、卵焼き用の卵を2つ割っておく。

こんなところからであるが



「細切れってちょっと大変で地味だけど、食べやすくするにはこれが簡単なの!分かる?苦労するんだよ!」


作り手の苦労や手間を見せること、知らせることで、子供というのはようやっと知れる。


「噛まないで飲み込める工夫が、好き嫌いを克服する一歩近道かな。まず食べさせること」


食べろというより、食べやすいようにしてあげる。とても優しい母親のようである。

料理の姿勢はもうそれである。


「ご飯と一緒に混ぜて炒める。強火じゃなくて、中火。急いで作ろうとすると、味って悪くなるから。炒めて、塩胡椒、醤油。……苦手だったら、炒飯の元で良いんだよ」



今度は卵焼き。

卵は事前に溶いておき、フライパンに油をひいておき、中火から弱火。細切れにした野菜を卵に入れてから、フライパンに流し込む。フライパン全体に卵を流し渡らせてから、塩。あるいは醤油。



「のんちゃんは簡単な卵にしてるけど。好きな食べ物と一緒にすれば、なんでも美味しいよ。ハンバーグや天ぷら、サンドイッチとかね」


綺麗に卵を巻きながらフライパンから、まな板へ。包丁で切って皿に並べる。

炒飯も同様。氷入りの麦茶も忘れない。


「どう?簡単な料理だけど。まぁ、食べてみてよ!」


綺麗に主食、おかず、飲み物が並んでいる。給食よりも綺麗に並べられている事も含め、なんかありがたい。


「いただきます」

「い、いただきます」


そういえばのんちゃんは、ちゃんと『いただきます』を言う。なんで?って、食べられる感謝をするからである。

のんちゃんの手料理を食べてみれば、



「お、美味しい!」

「食べやすい薄味!」

「全然、ピーマンの味がしない!むしろ、良い食感がでていて、美味しい!!」



好評であり、



「えへへへ、そうでしょ?野菜だって美味しいんだから」


のんちゃんの笑顔と励ましも見れたら、サイコーだ。好き嫌いの意識は減っただろう。

そして、子供達は理解する。ちゃんと料理されたものはとっても美味しい。でも、野菜は苦手だ。つまりは……。


「全ては母ちゃんの料理がマズイから、野菜を苦手にしていたということ!」

「分かる分かる!ピーマン使った料理が大抵マズイのって、お母さんの腕が悪いからなんだ!」

「ピーマンって分かるほどの切り方!味付けだった!」


好き嫌いがあるのは、お母ちゃんの料理がマズイから!!


「それ。お母さんが泣いちゃう。慣れてみたり、いっそ自分で作るようにしたら?」


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