冒険の報酬
「……あっ!!お待ちしておりました!!」
夜、この時間、本来は開いていないはずの冒険者。その中には職員数名と、何か凄い偉そうな人がいる。
俺とフィーネ、アルネは中に入ると受付嬢のリルさんが急いで駆け寄って俺の手を握ってきた。
「ご無事でしたね…!もう!こんな遅かったからもしかしたらって思っちゃいましたよ」
し、心配してくれるのは嬉しいけど、やばい二人からの視線が痛い。
「むむむ、やり手ですねリルさん…!」
「……ビッチめ」
「今誰かビッチとか言いましたか?処しますよ?」
「言ってません雌豚。早く私のレイ兄から離れてくださいビッチ。」
「あぁ?」
「あ?」
おいおいおい、なんだこの状況!!冒険から帰ってきて何でこんな一触即発な感じになってんの!?これならまだ大蜘蛛と戦う方が全然マシだぞ!
フィーネはどうどうと妹のアルネを宥め、他職員の人もリルさんをよしよしと落ち着かせる。
落ち着いた二人を見やりはぁと溜息をつく1人の職員の女性。
「すまないねレイシャ君。こいつは気に入ったものにはとことん素直なんだ。許してやってくれ」
と、リルさんの頭をぽんぽんと撫でる女性。行動や口調的にこの人はリルさんの上司っぽい。
赤色ロングの髪を一纏めにしたシンプルな髪型に、面倒見の良い雰囲気を醸し出す。見ているだけで落ち着くようなお姉さん肌だ。
完璧な容姿にそのオーラを纏うと普通の男性ならイチコロだろう。一体どれだけの人がこの人に落とされたのか気になるところだ。
場所を移し冒険所の奥にある部屋へと案内される。俺達3人の他にリルさんと上司っぽい人に他職員数名に、何か凄い偉そうな人とそのお付きの様な人がいる。
「それでは本題に移ろうか。私の名前はミント・ハスティ。まず今回の例外にいち早く対応し、それを掃討してくれたこと本当に感謝する。報酬は出来るだけ君達の願いに添えるよう尽くすが何かあるかい?」
「特にないです。強いていえば寝心地の良い宿屋を紹介して欲しい?くらいです」
俺の回答を聞いた上司っぽい女性、ミントは一瞬ポカンとしたが直後、ドカっと笑いが爆発する。他の職員の人も笑いが堪えきれず腹を抑えていた。
「え?俺なんか変なこといいましたか?」
特に心当たりがない。フィーネやアルネを見ると「レイシャらしいね」「だねー」とのほほんと俺を見つめてた。
報酬がおかしかったのか?でも、初めての冒険がこんな壮大だったんだ。逆に俺から払ってもいいくらいなんだが。それにダンジョンとかって無料で入れるもんなのかな?そこの所は後で聞いてみるか。
「はははっ、いやごめんごめん。まさか例外モンスターの掃討報酬を寝心地の良い宿屋を紹介して欲しいなんて言われると思わなくってね…ククッ、面白いなぁ君は」
聞けばそんなことを言った奴は俺が初めてらしい。宿屋を紹介して欲しいの何が可笑しいんだろうか。
泊まるところは大切だ。寝心地、その部屋の雰囲気、空気、匂い。これらが高ければ高いほどぐっすりと眠れ、朝の調子が良くなる。親父も言ってたし。
それを言ったらまた笑われた。よくわからん。馬鹿にされているのか?フィーネ、アルネとしか殆ど喋んなかったからほかの人がどういう感情なのか分からない。難しいな。
「ふふっ、わかった。紹介するだけでは流石に君達を労うには不足すぎる。少し会話しただけだがよく分かったよ。レイシャと隣の魔族の少女3人には私がオススメする宿屋をいつでも無料で使えるよう手配する。あ、それと報奨金の話なんだけど…」
「それは私からしよう」
今までずっと沈黙していたスーツを着たお爺さん。如何にも特別感が出てて何か話しづらそう。
「レイシャ、と言ったね。今回の例外モンスターの掃討、本当に君達だけでやったのかい?」
「はい、そうですけど」
ふむ、と考え込むように顎髭を撫でるそのお爺さんはやがて後に控えていた職員を呼ぶとヒソヒソと話をし、その話を聞いた職員は慌てて部屋を飛び出した。
「今回の掃討モンスター、君たちが持ってきたアイテムの中にはとても稀少で、入手困難な物があってね。それを是非譲って欲しいんじゃが。金なら金貨500枚でどうだろうか。」
お爺さんが出したのは5階層で倒したなんか金属のスライム的な奴から落ちたやつだ。めっちゃ足早かったな。
え?これが稀少なの?手に取っても全然わからん。ってかこれが金貨500枚って、大袈裟過ぎない?フィーネもアルネも提示された大金にビックリしている。
「いや、欲しいなら別にタダで上げますけど…」
「な、なな、なに!?!お主何を言っておるんじゃ!?これは本当に稀少な物で、金貨500枚でも足りんくらいなんじゃぞ!?それをタダとは…!」
近い近い近い。興奮気味に近付いてくるお爺さんの顔を手で押し返す。
他の職員の人も驚愕している。しかし、そんなに金貨を貰っても使う物が無いしそれに、賊とかに襲われそうで嫌だ。安心して夜も眠れやしない。親父から貰った金貨だってフィーネやアルネの武器と旅の準備でほとんど使ったし。装備にも特に困ってない。
「あ、それならお爺さん。この街で買える美味しい食材を教えて!それでこの街に滞在している間そのお金で食べるものとか寝るところは確保しようよ、ねレイシャ?」
確かにそれがいいかも。お金は預けて欲しい時に貰いに来る。この街を出る時に余ったお金は寄付するとしよう。
話が纏まり、少し疲れが出てきた俺達はそれからのダンジョンでの調査やらは全て任せることにした。
ランクアップ、例外モンスターの討伐によって条件は満たされたらしく一気にBランクまで上がれる事になった。けれど俺は断った。
まだ冒険仕立てでクエストすらまともにやっていないのにたった1回だけでなるのはどうかと思ったから。確かに手っ取り早くランクアップする為にダンジョンに潜った訳だけど。
やっぱり自力で頑張ってこつこつとクエストとかをやって地道にランクアップしたいじゃん。それも冒険の醍醐味ってやつだと俺は思う。
宿の手配が終わり俺達はミントさんの紹介した宿屋に泊まることになった。泊まる一室は木造で落ち着く雰囲気の部屋になっていた。ベットもふかふか申し分ない。
フィーネとアルネは先にお風呂に入るとはしゃぎいだ。1週間くらいか?それくらい入ってなかったからな。女性にとってはさぞ心苦しかったろう。
「明日はのんびり過ごすか…」
今日の騒動、初冒険もあり疲れもあるだろう。明日はのんびりと3人でどこかへ出かけるとしよう。
ドサッとベットに横になると眠気がこんばんはという感じでやってきた。抗う気は無い、重い瞼を閉じ眠りにつく。
「レーイシャー!!一緒に入りましょー!!」
「うぉわ!?」
しかし突然俺にダイビング抱きつきをしてきたフィーネに現実へと引き戻される。しかも裸だった。
「おい!!何で裸なんだよ!」
「え?服着たままお風呂に入るんですかレイシャは?」
ごもっともですけど!?
「お姉ちゃん!レイ兄困ってるじゃん!あ、ちなみに僕はちゃんとバスタオル巻いてるよ♪」
それでも水を吸ったバスタオルはアルネの肌にピタリと吸い付き逆にそのエロさを感じさせる。
アルネはフィーネを引き剥がすとお風呂場へと消えていった。そしてぴょこんと頭だけだし
「レイ兄もおいでよ!すっごい広いんだよ!!」
無邪気な笑顔で、そう言ってきた。俺は手を振って分かったと、合図する。アルネはそれを見ると顔を輝かせお風呂場に戻って行った。
「親父、俺、これからもう1つの冒険に行ってくる。」
俺は意を決して風呂場へと赴く。
そして、フィーネ、アルネの裸体を見て鼻血を吹き出し倒れたのは秘密の話。