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初冒険はデンジャラス

「それでは大まかな説明をさせていただきます。まず登録したレイシャ様、フィーネ様、アルネ様のランクはGランクからです。ランクアップの条件はクエストをクリアする、ダンジョンの攻略、換金、依頼をこなすなどです。一番手っ取り早くランクアップする方法はダンジョン攻略ですね。」


ダンジョン、親父からは男の浪漫が詰まってるとしか聞いたことがない。


受付嬢によればダンジョンの到達階層で大体の実力は分かるらしい。1から5階層までがGランク、6から10階層がF〜D、11から20階層がCランク、21階層からがBランク、つまり上級冒険者となる。Bから上のランクアップはBB、BBBと増え、Aへとランクアップする。


「ダンジョンに潜りその階層にしかない、アイテムを持ってくればランクアップとなります。」

「ん?それってパーティーとか組んでもそうなるのか?」


至極最もな疑問。俺やフィーネはガバガバすぎるランクアップに疑問を抱かずにはいられなかった。パーティーでのランクアップが仮になしにしても、上級冒険者がその階層のアイテムを採って、他の冒険者に渡せば必然的にその冒険者はランクアップする事になる。


「はい、ランクアップはします。しかし、それは自分の首を絞めるのと同義、実力に見合わないランクのクエスト、ダンジョンに挑み死ぬだけです。」


営業スマイルを崩さなかった受付嬢の女性の目つきは俺達を射抜くような鋭い視線へと変わる。


よくわかった。この冒険者の世界は非常だ。多分この受付嬢は分かっている、俺達に警告している。決して過ちは犯すなと、死に急ぐなと。俺はその優しい受付嬢に笑って言葉をくべる。


「忠告ありがとうございます。ではダンジョンの場所を教えて頂けませんか?」


受付嬢は初めて驚愕の顔を見せる。


「……貴方は利口な方だと思っていましたが、勘違いだったのでしょうか?」

「大丈夫ですよ受付嬢さん、貴方の危惧している事にはなりません。必ず五体満足で受付嬢さんのもとに戻ってきますよ」


俺ははにかんで笑う。死ぬ訳がない。俺はまだ冒険(たび)のスタートラインに立ったばかりだ。親父を越す冒険者になるまでは絶対に


ー死なない。


「ふふっ、そうですか。では貴方達3人の無事を祈っています。頑張って冒険、してきてくださいね」


俺達に笑いかけてくれたこの笑みは彼女の本当の笑顔のように思える。だってフィーネやアルネのはしゃいでいる時の顔に似てたから。


「リル・アステラ。」

「ん?」

「私の名前です、リルとお呼びください。レイシャさん。それと、冒険所(アドバール)に来た時は是非私を呼んでくださいね♪」


最後の笑みはよく分からない。でも何となく分かる。多分気に入られた、周りの他の冒険者の反応が言ってる。


「お、おいアステラさんが、あの小僧の専属(ファード)になったぞ!」

「はぁ!?俺さっき断られたのに!!何でだよアステさーん!!」

「うぉー!!!俺のアステラさんがあぁぁ!!!」


次第に大きくなる男性陣の悲鳴。そして俺を刺す視線が殺気のこもったものになる。


専属(ファード)、冒険所に来た際にその受付の人が必ず受け持つことらしいが、それの何が良いのだろうか。


「特別な感じがするんじゃない?レイシャにアーンしてもらうのと一緒だよ」


なるほど。よくわからん。


「まぁ取り敢えずリルさんからダンジョンについての説明書貰ったし行ってみますか。俺達の初冒険に!!」

「「はーい!!」」


テルペントの中央に位置する場所には巨大なドームが存在している。そこはダンジョンの入り口。ドームには冒険に行く前の準備、回復薬(ポーション)やら、武器やら、防具やらを揃える場所もある。2階には巨大浴場も設置されており、冒険後の疲れを癒すにはうってつけだ。


「特に買うものはないし、一先ず潜ってみますか」


ダンジョンの入り口を進んだ先は大きな空間(エリア)に出た。静かな雰囲気が緊張を煽る。


直後


「フィーネ、アルネ構えろ!!」


前方に4匹の大蜘蛛(アラクネ)が現れる。俺は二人の前に立ち親父の冒険者時代の時に使っていた愛刀、帆楼丸を抜刀する。


「俺が前衛をやる!二人は後ろで魔法の援護を頼む!!」

「「りょーかい!!」」


説明書で見た1階層から5階層に出現するモンスターの中にはこんなのはいなかった。だとすれば例外(イレギュラー)


「いきなりか…!」


帆楼丸を握る手に力がこもる。俺の目の前には涎を垂らし、餌を狩らんとする大蜘蛛4匹、ジリジリとその距離を詰める。


「ギシャャアァ!!」


大蜘蛛の1匹が俺を無視してフィーネとアルネに向かう。俺はバックステップで大蜘蛛の背後に周る。


「やらすかよ!!」


背後を取られた大蜘蛛は為す術なく一刀両断。他の大蜘蛛はそれを見てか、少し後ずさる。


既にスピードは把握した。攻撃手段が何であれ俺が視ることの出来る範囲ならばもうやられない。


俺は残りの大蜘蛛を睨みつける。


「次はこっちが狩る番だ。」


そして大蜘蛛に跳躍する。大蜘蛛は身を翻すと尻をウネウネとさせ糸を噴き出す。


「”我が手に宿りその力を貸したもう。欲するは炎、業炎弾(バーニングショット)!!」


詠唱をしていたフィーネは大蜘蛛に向って魔法を放つ。火、風の魔法を得意とするフィーネの魔法の中では特に凄まじい威力を誇る。


直撃した2体の大蜘蛛は火ダルマになり焼け死んだ。俺は1体の大蜘蛛をターゲットしてその頭めがけて帆楼丸を投げつける。


「ギシャァァァ!!!」


見事に命中した、大蜘蛛は壁から剥がれ地面へと落下しジタバタとするがやがてピタリと止む。


残り一体。俺は後ろを向き残りの大蜘蛛へと目を向けるがその一体は無惨にも無数の剣に串刺しにされていた。


「むむむ、こんなに刺さなくても死んだっぽいなー。もう少し加減しないと。」


斬殺をした正体はアルネだった。なんか壁に紫色の血らしきものが飛び散ってるよ。もうちょっとやり方を考えようぜアルネ。ってかフィーネ笑ってるし。


「思った以上にやれましたね!こらなら私達もう少し行けるんじゃないですか?」


フィーネの言葉に賛同するアルネだったが俺は少しだけ不安だった。


一階層のダンジョンだ。1人くらい他の冒険者を見かけてもおかしくはない。しかし一人も見当たらないし、足音すら聞こえない。


「静かすぎる。例外(イレギュラー)といい何かありそうだ。フィーネ、アルネ、動き足りないだろうけど今日は一旦上へ戻ろう。この事は報告した方がいいと思う。」


俺はフィーネ、アルネにそう伝えると二人は「レイシャに任せます」「レイ兄に任せるよ!」と俺の案を受け入れてくれた。俺は大蜘蛛の一部分を切り取ると袋へと入れる。


ダンジョンから帰還した俺たちは真っ先に冒険所へと向かった。


「おや、お早いご帰還ですね。何か聞き忘れた事でもありましたか?」


俺は一階層で戦った大蜘蛛の足をリルへと見せる。すると目の色を変え焦燥を見せながら俺に問いかける。


「……これはどこで?」

「一階層。」


その言葉を聞き青ざめるリル。


「その反応じゃやっぱり一階層にこいつが出てくるのはおかしいんだ。4体もいたんだけど」


益々驚くリル。リルは一旦待っていてくれと俺達に言い残すと足早に他の職員のいる方へと消えていく。


そして数十分。血相を変えて戻ってきたリルは俺達に依頼を提示して来た。


「依頼内容は5階層までの状況調査プラス例外(イレギュラー)モンスターの討伐です。」


話によると大蜘蛛は本来15階層以降から出現するモンスターらしい。色に応じてより強力になっていく。俺達が討伐した大蜘蛛は一番弱い奴らしい。それでも15階層からの出現なのだ。


リルの依頼内容、それは危険の伴う、リスクの大きい内容だった。けど、親父なら…。


「分かった。報酬に関しては俺達の働き次第でいいから決めてくれ。」

「……!!ありがとうございます!それと、これは極秘に当たる依頼です。決して口外しないよう。」


俺達は冒険者を出るとふぅと溜息をついた。まさか初めての冒険がこんなデンジャラスなものとなるとは思ってもいなかったからな。


けど、何故か笑いが出てしまう。強い敵と戦える、心の中の俺の野性が唸っている。


ーもっと戦いたい。


それはフィーネ、アルネも同じらしく目は獲物を狩るハンターの眼だった。


「レイ兄、次は僕も前衛に出るね。定期的に剣を振らないと訛っちゃうから。」

「私も前で戦う!!死の感触をこの手に味合わせたい…!」


今の二人は完璧に敵を狩ることしか頭にない。命令すれば直るだろうけど、そんな無粋な真似はしない。許可は貰った。なら遠慮なんかしなくていい。そう全力で殺れる。


「んじゃあまぁ行きますか」

「「りょーかい!!」」


そうして俺達のデンジャラスな冒険が始まった。




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