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第8話 魔物出現

村を出て見晴らしの良い道を15分ほど歩いていると

森のような所へ入った。道はまっすぐ広めではあるが

両サイドに木が乱立しているため視界は良くない。


「ここからは魔物が出る、油断だけはするなよ?」


シルバーが注意を促すようにみんなへ向けて言った。


さっきまでは他愛のない話をしながら進んできたが、ここから先は

みんなの顔は真剣となり言葉も必要最低限のことしか発しなくなった。


陣形もジャックおじさんが前、シルバーが左後ろ、セリンヌ姉さんが右後ろと

俺達を守るように三角形になっていた。


5分ほど森を歩いたときにジャックおじさんが突然口を開いた


「12時の方向30m先にスライム2匹確認!まだこちらにきづいていない」


「よし、ジャック、セリンヌ気づかれる前にやれ!」


「「了解!」」


流れるかのようなスムーズな意思伝達

この間約5秒


ジャックおじさんがスライムに向かって剣を構えて距離を詰める

対してセリンヌ姉さんは矢を弓にセットし、弓を引く


何十年も魔物を狩り続けてきたんだなって一目でわかるような

何一つ無駄のない洗練された動作だ。


ジャックおじさんとスライムとの距離が2mまでに縮まったときに初めて

スライムがこちらの接近に気がついた。

しかし、それはあまりに遅すぎた。ジャックおじさんの勢いを殺さぬ細かいステップからの

長剣の一突きによって1匹のスライムの核を寸分違わず正確に捉えていた。


「スライム撃破!」


もう片方のスライムは30mも離れた位置からの弓による一矢で既に射貫かれており

2匹の魔物はあっさりと姿を消滅させた。


「こっちもスライムをやったわ」


魔物を撃破して、ほっ・・・と息をつこうとしたが

何かがおかしい。というのも魔物を倒したはずなのに

ジャック、セリンヌ、シルバーの三人とも緊張の面持ちで

まわりをきょろきょろしているからだ。


「ど、どうしたの?」


父シルバーにおそるおそる尋ねてみるがすぐには返答が無かった

数秒の間が開いた後


「魔物気配なし!」


「こっちもないわ!」


「俺の所もない!よし」


と三人が安全確認を終えることができたのか

あたりを纏っていた緊張が解けたのがわかった。


倒した後も数秒間安全確認を行うのは

どうやら、魔物の絶命後が一番危険だかららしい

というのも魔物は絶命する際、生命エネルギーであるマナを分散させるため

そのマナを食おうと魔物が襲いかかってくるらしいのだ。


しかもこの世界での死亡率はその魔物の死によるさらなる強襲がダントツらしい

そりゃ誰だって魔物を倒したら油断しちゃうよね、

しかも連戦なわけだからきついに決まってるよね


倒した後も油断するなよってことか。。。

この世界こわすぎじゃね?


ここで隣にいるリリィの手を握ってみるとヒヤリと冷たく

少しだけ震えているのがわかった。


楽しみにしていた村の外がまさかこんなに恐怖と緊張の塊だって知ったら

誰だって怖いよな。 


「リリィ大丈夫だよ、お姉ちゃんがついてるから」


「お姉様・・・!」


手をギュッて握り返してくれた


「お姉様、ありがとうございます。もう大丈夫ですわ」


「よし、リリィ良い子だ!」


まだ5歳だというのにうちの妹は立派すぎる!

感動のあまり、思わずなでなでしてあげると

「もうお姉様ってば・・・」といいながら喜んでいた。

よしよし


「どうだ?はじめての魔物討伐は。怖かったか?」


シルバーが嬉しそうな顔をしながら俺達に感想を求めてくる。


あ、これわかったぞ?


シルバーがどうして今回俺達を誘ったのか

普段仕事ばかりで俺達にかまってやれないから

少しでも父の仕事ぶりを目の当たりにさせて

「お父様かっこいい!」「お父様すてき!」って娘たちに思わせたいがために

企画したな!?これは!


あのシルバーの顔をみればわかるわ。

でもさ、父シルバーよ。

これを普通の5歳児がみたら間違いなく泣いてにげるからな?


たまたま俺達だからなんとか踏みとどまれてるだけだからな?


だから頼むからそんな嬉しそうな顔で感想をもとめないでくれ・・・!


「あのーえっと・・・り、リリィはどうだった?」

私は咄嗟にリリィに意見を求めた、決して丸投げではない、ないったらない


俺にはこの嬉しそうな父が悲しませることができない

妹よ正直に怖かったっていってやってくれ


「こ、こ、怖くありませんわ!た、楽しかったですわ!」


なんですと!?


「そうかそうかー!ユーリはどうだった?」


ちょっと待って、さっきまでリリィ怖がってたよね?

なんで強がってるの!?

たしかにお姉ちゃんがいるから大丈夫とはいったけどさーー

こんなんいわれたらお姉ちゃんである私が「怖かった」なんていえないやん!

ええい!適当に感想いっちゃえ!


「すごかった!ジャックおじさんとセリンヌ姉さんかっこよかった!」


よーーし


「そうかそうか!!で、俺はどうだった?かっこよかったか?」


おいおい待て待て、ジャックおじさんとセリンヌ姉さんはスライム倒してたけど

お前なんもしてないやん?どう評価しろと?


でもここであらゆる可能性を考えてみる。

ジャックおじさんとセリンヌ姉さんが前方のスライムを攻撃している際

シルバーはなにをしていたんだ?もしかして俺達の左右・背後からの敵襲に備えて

警戒してくれていたんじゃ無いのか?

あと、シルバーの役割はメンバーの指揮だ。指示をだすのも仕事の一環だったのだ。


まとめると


「常に周囲の警戒を行いながらも、現場の指揮、お見事でした!父さん!」


そう伝えるとシルバーは「ユーリ!リリィ!!」と泣き叫びながら

俺達をぎゅっと抱きしめてきた


これだから俺達の父シルバーは憎めないし幸せになってもらいたいんだよな

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